「特定空家等」とは何か。
当たる4つの状態と、そのあとに起きること
当たる
特定空家等は、空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項が定める4つの状態のいずれかにあると認められる空家等です。倒壊などの「おそれ」の段階で当たり、壊れてからの話ではありません。当たると、市町村長は助言または指導、勧告、命令、代執行の順に措置をとることができ、勧告を受けると、そのあとに迎える1月1日を賦課期日とする年度から、土地は固定資産税の住宅用地の特例から外れます。命令に違反すると50万円以下の過料の定めがあります。一つ手前の段階である管理不全空家等との違いを1枚の表にまとめ、条文にあたって整理しました。
特定空家等の定義
前提になる「空家等」
特定空家等は、まず「空家等」に当たることが前提です。 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「空家法」といいます)第2条第1項は、 空家等を居住その他の使用がなされていないことが常態であるものおよびその敷地と定め、 国または地方公共団体が所有し、または管理するものを除いています。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第1項
条文が挙げる4つの状態
特定空家等の定義は、空家法第2条第2項に置かれています。
空家法第2条第2項
この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
出典:空家法第2条第2項
条文の文言を、4つの状態に分けると次のとおりです。
| 条文の文言 | 読み方 | |
|---|---|---|
| 保安上 | そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 | 倒壊する前の「おそれ」の段階で当たります |
| 衛生上 | 著しく衛生上有害となるおそれのある状態 | こちらも「おそれ」の段階で当たります |
| 景観 | 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態 | 「損なっている」と、現に生じている状態を指します |
| 生活環境 | その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 | 上の3つに当たらない場合の受け皿です |
出典:空家法第2条第2項。「読み方」の列は条文の文言から当社が整理したものです。
いずれか1つに当たれば足ります。 どの程度の傷みでそれぞれの状態に当たるかの具体的な基準は、条文には書かれていません。 条文は、4つの状態に「あると認められる」空家等という形をとっており、認めるのは措置をとる市町村長です。 空家法第22条第16項は、国土交通大臣および総務大臣が、特定空家等に対する措置に関し、 その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができるとしています。 個別の家が当たるかどうかは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。
出典:空家法第22条第16項
管理不全空家等との違い
1枚の比較表
特定空家等の一つ手前にあたるのが、管理不全空家等です。 空家法第13条第1項は、適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば 特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空家等を、管理不全空家等としています。 2つの違いを、条文にある措置で並べると次のとおりです。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| 根拠の条文 | 空家法第13条 | 空家法第2条第2項・第22条 |
| 状態 | 放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれ | 4つの状態のいずれか |
| 最初の措置 | 指導 | 助言または指導 |
| 勧告 | あり(修繕、立木竹の伐採など) | あり(相当の猶予期限を付ける) |
| 命令 | 定めなし | あり |
| 代執行 | 定めなし | あり |
| 過料 | 定めなし | 命令違反は50万円以下 |
| 住宅用地の特例 | 勧告で外れる | 勧告で外れる |
出典:空家法第13条第1項・第2項、第22条第1項から第3項まで・第9項、第30条第1項、地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項
税への影響は、どちらも勧告の段階で同じです。 違いは勧告の先にあります。管理不全空家等には命令と代執行の定めがなく、 特定空家等には命令・代執行・過料までの定めがあります。
除却を求められる状態
特定空家等でも、4つの状態のすべてで取り壊しを求められるわけではありません。
空家法第22条第1項
市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
出典:空家法第22条第1項
括弧書きにより、保安上または衛生上の状態にない特定空家等については、建築物の除却は措置から除かれます。 景観や生活環境の状態だけで特定空家等とされた場合、求められるのは修繕や立木竹の伐採などです。 「次項において同じ」とあるため、勧告でも同じ扱いです。
措置の順番
助言または指導から勧告まで
措置は段階を踏みます。空家法第22条第1項の助言または指導をしても、なお状態が改善されないと認めるときに、 市町村長は同条第2項により、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他の必要な措置をとることを勧告することができます。
その前段として、市町村長は同法第9条第2項により、第22条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度で、 所有者等に報告させ、または職員などに空家等と認められる場所へ立ち入って調査をさせることができます。 立ち入らせようとするときは、原則としてその5日前までに所有者等に通知しなければなりません(同条第3項)。 報告をせず、または立入調査を拒むなどした者は、20万円以下の過料に処すると定められています(同法第30条第2項)。
出典:空家法第9条第2項・第3項、第22条第1項・第2項、第30条第2項
命令から代執行まで
勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合で、特に必要があると認めるときは、 市町村長は相当の猶予期限を付けて、その措置をとることを命ずることができます(空家法第22条第3項)。
- 意見を述べる機会。命じようとする前に、措置と事由、意見書の提出先と提出期限を記載した通知書が交付されます(同条第4項)。交付を受けた日から5日以内に、意見書に代えて公開による意見の聴取を請求することができます(同条第5項)
- 標識による公示。命令をした場合、市町村長は標識の設置などにより、その旨を公示しなければなりません。所有者等は標識の設置を拒み、または妨げてはならないとされています(同条第13項・第14項)
- 代執行。命ぜられた措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法の定めるところに従い、市町村長が自ら行い、または第三者にさせることができます(同条第9項)
- 過料。命令に違反した者は50万円以下の過料に処すると定められています(空家法第30条第1項)
出典:空家法第22条第3項から第5項まで・第9項・第13項・第14項、第30条第1項
過失がなくて命令の相手を確知することができないときは、あらかじめ公告したうえで、 その者の負担において市町村長が措置を行うことができる定めもあります(空家法第22条第10項)。 所有者が分からない家でも、措置が進む定めが置かれています。 相続の手続きが止まっている家の扱いは 実家が処分できない。詰まる原因と、順に外していく手順にまとめています。
出典:空家法第22条第10項
固定資産税への影響
勧告で住宅用地から除かれる
地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地の課税標準を価格の3分の1とし、 同条第2項は200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)を価格の6分の1としています。 そのうえで第1項の括弧書きは、空家法第22条第2項の規定により所有者等に対し 勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地を、住宅用地から除いています。 管理不全空家等についても、空家法第13条第2項の規定により勧告がされたものの敷地が同じく除かれています。
出典:地方税法第349条の3の2第1項・第2項
きっかけは勧告で、命令や代執行を待ちません。 200平方メートル以下の部分にかかっていた価格の6分の1の特例が外れます。 「6倍」と言われるのはこの率の比で、特例が外れたあとの課税標準額は市区町村が算定するため、払う額が6倍になるとは限りません。 どの年度から変わるかは、賦課期日である1月1日の状態で決まります(地方税法第359条)。 年度との関係は固定資産税が6倍になるのはいつからか。賦課期日の考え方、 取り壊した場合との比べ方は更地にすると固定資産税はいくら上がるのか。取り壊す前に確かめる数字にまとめています。
出典:地方税法第359条
調査に出ている認知状況
国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査結果」では、 空き家を所有する世帯のうち、特定空家等への措置を知っている世帯は24.0%、知らない世帯は32.3%でした。 一方、特定空家等の敷地に係る固定資産税等の軽減対象からの除外措置を知らない世帯は53.7%でした。
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-133
措置の存在よりも、税とのつながりのほうが知られていない、という差が出ています。 勧告の通知が届いてから税の話を知る、という順番になりやすいと考えられます。
調査結果のまとめ
- 特定空家等は、空家法第2条第2項が定める保安上・衛生上・景観・生活環境の4つの状態のいずれかにあると認められる空家等です。保安上と衛生上は「おそれ」の段階で当たります
- 4つの状態にあると認めるのは市町村長です。措置については、国土交通大臣および総務大臣が指針を定めることができるとされています(空家法第22条第16項)
- 管理不全空家等は、放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある空家等です(空家法第13条第1項)。措置は指導と勧告までで、命令・代執行・過料の定めはありません
- 特定空家等への措置は、助言または指導 → 勧告 → 命令 → 代執行の順です(空家法第22条第1項から第3項まで・第9項)。保安上・衛生上の状態にない場合、建築物の除却は措置から除かれます(同条第1項の括弧書き)
- 命令に違反すると50万円以下、報告の拒否や立入調査の妨害は20万円以下の過料の定めがあります(空家法第30条)
- 勧告がされた特定空家等と管理不全空家等の敷地は、住宅用地から除かれます(地方税法第349条の3の2第1項)。200平方メートル以下の部分では、価格の6分の1の特例が外れます
- 調査では、特定空家等の敷地に係る固定資産税等の軽減対象からの除外措置を知らない世帯が53.7%でした(図表4-133)
特定空家等に当たるかどうかは、家の状態で決まります。 管理不全空家等の段階に至る前に状態を保っておくことが、措置と税の両方を遠ざけることにつながります。 個別の家が当たるかどうかは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条・第9条・第13条・第22条・第30条
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2・第359条
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-133
条文は2026年9月25日に e-Gov 法令検索で確認しました。個別の家が特定空家等に当たるかどうかは、市町村長が判断します。