空き家の解体に補助金は出るのか。
制度の探し方
制度の
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の条文で「補助」が置かれているのは第29条第1項で、そこで補助を受けるのは市町村です。所有者が解体の費用に使える補助は、市区町村がそれぞれ定めます。だから探す先は国の窓口ではなく、家のある市区町村になります。国土交通省の調査では、取り壊す意向の世帯のうち除却費用を「補助金を利用して」用意するとした割合は24.1%、「未定」が38.3%でした。条文と調査から、どこを見れば自分の家の場合が分かるのかを整理しました。
条文が定めている範囲
条文の中の「補助」
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「空家法」)の条文で、 「補助」という語が置かれているのは空家法第29条第1項です。
空家法第29条第1項
国及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第29条第1項
補助の相手は市町村で、空き家の所有者ではありません。 空家法第29条第2項は、国及び地方公共団体が、これとは別に必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとすると定めています。 「国の補助金」と「自分が申請する補助金」は、条文の上では別の層にあります。
市町村が対策を行う根拠
所有者に対する制度を作るのは市町村の側です。空家法第4条第1項は、市町村の責務を次のように定めています。
空家法第4条第1項
市町村は、第七条第一項に規定する空家等対策計画の作成及びこれに基づく空家等に関する対策の実施その他の空家等に関して必要な措置を適切に講ずるよう努めなければならない。
出典:空家法第4条第1項
その空家等対策計画について、空家法第7条第1項は「定めることができる」と書いています。 計画を作るかどうかも、市町村の判断です。 同じ都県の中でも、制度の有無と中身が市区町村ごとに違うのは、この組み立てから来ています。
市区町村の制度が現れる場所
空家等対策計画に定める事項
空家法第7条第2項は、空家等対策計画に定める事項を第1号から第9号まで並べています。解体に近いのは第4号と第5号です。
空家法第7条第2項
四所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項五空家等及び除却した空家等に係る跡地(以下「空家等の跡地」という。)の活用の促進に関する事項
出典:空家法第7条第2項第4号・第5号
条文に出てくるのは「除却」で、解体という語ではありません。 市区町村の資料を探すときも、「除却」「老朽危険空家」「不良住宅」といった語のほうが当たります。
管理と活用についての援助
援助そのものの根拠は、空家法第12条と第15条に置かれています。
空家法第12条
市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
空家法第15条第1項
市町村は、空家等及び空家等の跡地(土地を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理するものを除く。)に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。
出典:空家法第12条・第15条第1項
どちらも「努めるものとする」という書き方で、補助の額や対象を定めたものではありません。 補助の対象・要件・上限・申請の時期は、市区町村が定める要綱で決まります。 自分の家が当てはまるかどうかは、家のある市区町村の窓口で確かめられます。
相談できる先
市区町村の窓口
空家法第7条第2項は、計画に定める事項として相談と体制も挙げています。
空家法第7条第2項
七住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項八空家等に関する対策の実施体制に関する事項
出典:空家法第7条第2項第7号・第8号
窓口の名前は市区町村ごとに違います。空き家の担当課が建築・住宅の部署に置かれている場合と、 環境や防災の部署に置かれている場合があります。計画を公表している市区町村では、その計画に体制が書かれています。 空家法第11条は、市町村が空家等に関するデータベースの整備その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすると定めています。
空家等管理活用支援法人
空家法第23条第1項は、市町村長が、特定非営利活動法人・一般社団法人・一般財団法人その他の営利を目的としない法人や、 空家等の管理または活用を図る活動を行うことを目的とする会社を、申請により空家等管理活用支援法人として指定することができると定めています。 指定された法人の業務は空家法第24条にあります。
空家法第24条
支援法人は、次に掲げる業務を行うものとする。一空家等の所有者等その他空家等の管理又は活用を行おうとする者に対し、当該空家等の管理又は活用の方法に関する情報の提供又は相談その他の当該空家等の適切な管理又はその活用を図るために必要な援助を行うこと。二委託に基づき、定期的な空家等の状態の確認、空家等の活用のために行う改修その他の空家等の管理又は活用のため必要な事業又は事務を行うこと。三委託に基づき、空家等の所有者等の探索を行うこと。四空家等の管理又は活用に関する調査研究を行うこと。五空家等の管理又は活用に関する普及啓発を行うこと。六前各号に掲げるもののほか、空家等の管理又は活用を図るために必要な事業又は事務を行うこと。
出典:空家法第24条
第1号に情報の提供又は相談が挙がっています。指定を受けた法人がある市区町村では、相談先が窓口のほかにもう1つあることになります。 指定の有無は市区町村が公表しています。
除却費用の用意のされ方
補助金をあてにしている割合
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)は、 今後5年間程度のうちに取り壊してさら地にする意向の世帯に、除却費用の用意のしかたを聞いています(複数回答)。
| 除却費用の用意 | 割合 |
|---|---|
| 貯蓄から | 56.0% |
| 未定 | 38.3% |
| 補助金を利用して | 24.1% |
| 融資を受けて | 3.5% |
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-126。複数回答。
補助金を用意のしかたに挙げた世帯は24.1%で、「未定」の38.3%より少ない結果でした。 取り壊す意向があっても、費用の見通しが立っていない状態が上位に来ています。
取り壊さずに持ち続ける理由
同じ調査は、空き家として所有しておく意向の世帯に、その理由も聞いています(複数回答)。 「物置として必要」が55.8%で最も多く、次が「解体費用をかけたくない」で47.3%、 「取り壊すと固定資産税が高くなる」が28.2%でした。
出典:同調査 図表4-130。複数回答。
上位に並ぶのは解体の費用と、解体したあとの税です。補助の有無を調べる前に、この2つの額を出しておくと比べられます。
解体の前に確かめる数字
取り壊したあとの土地の税
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2は、住宅用地の固定資産税の課税標準を、 小規模住宅用地(面積200平方メートル以下の部分)で価格の6分の1、 それを超える住宅用地の部分で3分の1と定めています。 家屋を取り壊すと、この特例の対象から外れます。
出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項
外れるのは率の話で、払う額がそのまま6倍になるとは限りません。家屋にかかっていた分は無くなります。 増える額の見込みは 更地にすると固定資産税はいくら上がるのかと 固定資産税が6倍になるのはいつからかで確かめられます。
確かめる順番
補助の有無を調べるとき、次の順に見ると空振りが減ります。
- 家のある市区町村の空家等対策計画の有無と中身。除却に関する記述があるか
- 除却に関する補助の要綱。対象になる建物の条件、申請できる人、補助の割合と上限、受付の期間
- 申請の時期。着工より前の申請を求める要綱があるため、解体業者と契約する前に確認する
- 取り壊したあとの土地の固定資産税。資産税の担当窓口で翌年度の見込みを聞く
- 指定された空家等管理活用支援法人の有無。相談先として使えるか
補助の割合と上限は市区町村の要綱で決まるため、隣の市と条件が違うことがあります。 同じ都県だから同じ、とは限りません。家の所在地の市区町村で確かめることになります。
調査結果のまとめ
- 空家法の条文で「補助」が置かれているのは第29条第1項で、補助を受けるのは市町村です。所有者への補助を定めた条文ではありません
- 空家等対策計画は、空家法第7条第1項が「定めることができる」と書いています。計画の有無も中身も市町村の判断で、制度が市区町村ごとに違うのはこの組み立てによります
- 計画に定める事項には、所有者等による適切な管理の促進と除却した空家等に係る跡地の活用の促進が挙がっています(第7条第2項第4号・第5号)。条文の語は「解体」ではなく「除却」です
- 援助の根拠は空家法第12条・第15条第1項で、どちらも「努めるものとする」という定め方です。補助の対象・要件・上限・申請の時期は市区町村の要綱で決まります
- 相談先は市区町村の窓口のほか、市町村長が指定する空家等管理活用支援法人があります。業務の第1号に情報の提供と相談が挙がっています(第23条第1項・第24条)
- 取り壊す意向の世帯の除却費用の用意は、貯蓄から56.0%、未定38.3%、補助金を利用して24.1%、融資を受けて3.5%でした(図表4-126・複数回答)
- 空き家として所有しておく理由の上位には、解体費用をかけたくない47.3%、取り壊すと固定資産税が高くなる28.2%が並んでいます(図表4-130・複数回答)
- 取り壊すと住宅用地の特例から外れます。小規模住宅用地は価格の6分の1、それを超える部分は3分の1です(地方税法第349条の3の2第1項・第2項)
本記事は空家法と地方税法の条文、および国の調査を整理したものです。 補助の額と条件は市区町村の要綱で決まるため、家のある市区町村の窓口で確かめることになります。
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根拠にした資料
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第4条・第7条・第11条・第12条・第15条・第23条・第24条・第29条
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-126・図表4-130
条文は2026年9月29日に e-Gov 法令検索で確認しました。補助の対象・割合・上限・受付の期間は市区町村の要綱で決まるため、家のある市区町村の窓口で確かめられます。