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管理・傷み

台風の前に、
空き家でやっておくこと

台風の前に空き家でやっておくことは、飛びそうな物を片付ける、戸締まりをして雨戸を閉める、雨樋と排水口の詰まりを取る、屋根・塀・樹木の傷みを外から確かめるの4つです。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)では、「地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊」を管理面の心配事に挙げた世帯が56.9%ありました。一方、管理者がいる空き家で「台風、地震などの後の見回り」をしている世帯は49.3%です。瓦や塀など建物と一体の物が壊れて他人に損害を与えた場合、民法第717条第1項は工作物の占有者に、占有者が必要な注意をしていたときは所有者に、賠償の責任を定めています。台風の前とあとにやることを、条文と調査で整理しました。

空き家の所有者が心配していること

管理面での心配事(複数回答)割合
住宅の腐朽・破損の進行75.7%
樹木・雑草の繁茂58.0%
地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊56.9%
不審者の侵入や放火51.7%
心配事はない37.0%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61(上位5項目)

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 管理面での心配事では、地震・台風・豪雪による損壊・倒壊の心配が56.9%で、腐朽・破損の進行(75.7%)、樹木・雑草の繁茂(58.0%)に次ぐ3番目でした。 台風で起きる被害は、ふだんの傷みの延長にあります。ずれかけた瓦、外れかけた雨樋、伸びた枝は、強い風を受けたときに飛ぶ・折れる物になります。

台風の前にやる4つのこと

飛びそうな物を片付ける

庭や玄関先にある植木鉢、物干し竿、ごみ箱、バケツ、立てかけた板やトタンは、屋内か物置に入れます。 物置やカーポートは、固定の金具が緩んでいないか、扉が閉まるかを確かめます。 空き家では、住んでいたときの物が外に残ったままになっている場合があり、ふだん見慣れている物ほど見落としやすいと考えられます。

戸締まりをして雨戸を閉める

窓と勝手口の施錠を確かめ、雨戸やシャッターがある窓は閉めます。 雨戸が無い窓は、窓際の物を室内の奥に移しておくと、ガラスが割れた場合の被害が小さくなります。 換気のために開けている小窓や換気口のふたも、閉めて帰ります。

雨樋と排水口の詰まりを取る

雨樋、ベランダの排水口、敷地の側溝に落ち葉や土がたまっていると、大雨のときに水があふれ、外壁や基礎のまわりに水が回ります。 手の届く範囲で詰まりを取り、届かない場所は無理をせず、業者に頼む候補に入れておきます。

屋根・塀・樹木を外から確かめる

屋根の瓦のずれ、棟の板金の浮き、テレビアンテナの傾き、ブロック塀のひびや傾き、隣地や道路に張り出した枝を、地上から見て確かめます。 屋根に上がって確かめることは、転落の危険があるため避け、気になる箇所は写真に撮って業者に見てもらいます。 台風が近づいてから家に向かうことも、移動中の危険があるため避け、前日までに作業を終える段取りにします。

調査では、管理者がいる空き家の管理の内容は「外回りの清掃、草取り、剪定など」79.5%、「戸締まりの確認」74.9%が上位でした(図表4-65、複数回答)。 台風の前の4つの作業は、多くの管理者がふだんしている外回りと戸締まりの確認を、風に備えて念入りにする作業です。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65

飛んだ物で他人に損害が出たときの責任

民法第717条第1項

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

民法第717条第2項

前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

出典:民法(明治29年法律第89号)第717条第1項・第2項

条文が定める責任の順番

瓦や塀、物置などの「土地の工作物」に設置又は保存の瑕疵があり、それによって他人に損害が生じたとき、民法第717条第1項は最初に占有者が賠償の責任を負うと定めています。 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは、所有者が賠償しなければなりません。 所有者の側には、注意をしたことで責任を免れるただし書きが、この条文には置かれていません。 民法第717条第2項により、庭木の植え方や支え方に瑕疵がある場合も同じ扱いになります。

台風のときに問われること

条文の要件は、工作物の設置又は保存に瑕疵があったかどうかです。 台風で瓦が飛んだ場合に瑕疵があったといえるかは、飛ぶ前の屋根の状態、風の強さ、周りの建物の被害などの個別の事情で判断されます。 瑕疵の有無は、所有者が傷みを知っていたかどうかではなく、建物の状態で判断されると考えられます。ずれていた瓦や傷んでいた塀に気づいていたのであれば、台風の前に直す機会があったことになります。 住む人も借りる人もいない空き家では、所有者が占有者を兼ねていることが多いと考えられ、その場合は所有者が最初から責任を問われる立場にあります。

植木鉢やバケツ、物干し竿のように土地に固定されていない物は「土地の工作物」に当たらないと考えられます。 これらが飛んで他人に損害を与えた場合は、故意又は過失によって他人の権利を侵害した者の賠償責任を定めた民法第709条の問題になると考えられます。 固定していない物置が当たるかどうかは、置き方などの個別の事情で判断されます。 どちらの条文によるとしても、台風の前に片付けておけば、飛ぶ物そのものが無くなります。

空家法第5条は、空き家の所有者又は管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めることを求めています。 台風の前の見回りは、この責務を果たす作業でもあります。 傷みの続いた空き家が市町村の指導の対象になる流れは「特定空家等」とは何か。当たる4つの状態と、そのあとに起きることに、近所から苦情が来た場合の対応は空き家のことで近所から苦情が来た。まず何をするかにまとめています。

出典:民法第709条・第717条第1項・第2項、空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条

台風のあとにやること

見回りで確かめる箇所

台風が過ぎたら、前に確かめた箇所を同じ順番で見ます。 屋根の瓦・板金・アンテナ、雨樋、外壁、窓ガラスと雨戸、塀、庭木の折れた枝、敷地に飛び込んできた物、室内の天井や壁の雨じみです。 被害があった箇所は、修理の前に写真を撮っておくと、業者への相談や近所への説明に使えます。 隣家や道路に物が飛んでいた場合は、まず周りの人に知らせ、片付けの段取りを決めます。 垂れ下がった電線や崩れかけた塀・外壁には近づかず、電線は電力会社に、塀や外壁は業者に連絡します。

遠くて見に行けない場合

調査では、管理者がいる空き家のうち「台風、地震などの後の見回り」をしている世帯は49.3%でした(図表4-65、複数回答)。 所有世帯の居住地から車・電車などで3時間超の空き家では、管理の頻度が「年に1〜数回」の割合が53.9%です(図表4-73)。 遠方の所有者が、台風が過ぎた直後に見に行くことは難しいと考えられます。 親族、近所の人、管理業者のいずれかに見回りを頼む手段と、頼むときに民法が定めていることは遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65・4-73

調査結果のまとめ

台風の前にやることは、飛びそうな物を片付ける、戸締まりと雨戸、雨樋と排水口の詰まりを取る、屋根・塀・樹木を外から確かめるの4つです。 いずれも、ふだんの外回りと戸締まりの確認を、風に備えて念入りにする作業です。 台風のあとは同じ箇所を見回り、被害があれば写真に残して周りに知らせます。自分で行けない場合は、見回りを誰に頼むかを台風の前に決めておきます。

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根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表4-61・4-65・4-73
民法(明治29年法律第89号)第709条・第717条第1項・第2項
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、心配事は空き家を所有する世帯、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。