遠方で空き家の管理ができない。
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国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」では、空き家の管理の課題として「遠方に住んでいるので往訪が困難」を挙げた世帯が21.6%ありました。所有世帯の居住地から車・電車などで3時間超の空き家では、年に1〜数回の管理が53.9%を占めます。選べる手段は、自分で通う回数を組み直す・親族に頼む・近所の人に頼む・業者に頼む・空き家の状態を終わらせるの5つです。誰かに頼む場合は、民法の委任・準委任の定めが関わり、報酬は特約がなければ請求できないとされています(民法第648条第1項)。調査の図表と条文で、手段ごとに決めておくことを整理しました。
遠方の所有者の割合
居住地からの所要時間
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)は、令和5年住宅・土地統計調査で空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 所有世帯の居住地から空き家までの所要時間は次のとおりです。
| 所有世帯の居住地からの所要時間 | 割合 |
|---|---|
| 徒歩圏内 | 35.8% |
| 車・電車などで1時間以内 | 40.8% |
| 車・電車などで1時間超〜3時間以内 | 13.0% |
| 車・電車などで3時間超 | 10.4% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表3-9
調査報告は、1時間以内を合わせると約8割になるとしています。 「売却用の空き家」と「二次的住宅・別荘用の空き家」は、1時間以内の割合がそれぞれ約7割と約6割で、他の種類より低くなっています。
管理の課題
管理をする上での課題(複数回答)では、「遠方に住んでいるので往訪が困難」は5番目でした。
| 管理をする上での課題 | 割合 |
|---|---|
| 管理の作業が大変 | 31.7% |
| 課題はない | 30.5% |
| 住宅を利用する予定がないので管理しても無駄になる | 27.1% |
| 管理費用の負担が大きい | 22.5% |
| 遠方に住んでいるので往訪が困難 | 21.6% |
| 管理を頼める人や業者がいない | 5.9% |
| その他 | 8.8% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-29(複数回答)
空き家の種類別では、「売却用の空き家」の30.5%、「二次的住宅・別荘用の空き家」の27.4%が「遠方に住んでいるので往訪が困難」を挙げています(図表3-30)。 「管理を頼める人や業者がいない」は5.9%で、頼む先が見つからないことよりも、通うことそのものが課題になっている世帯が多いと考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-30
距離と管理の頻度
主な管理者がいる世帯について、居住地からの所要時間別に管理の頻度を見ると、遠いほど回数が減っています。
| 管理の頻度 | 徒歩圏内 | 1時間以内 | 1時間超〜3時間以内 | 3時間超 |
|---|---|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 31.6% | 12.7% | 3.8% | 6.1% |
| 週に1〜数回 | 22.1% | 22.1% | 10.1% | 7.8% |
| 月に1〜数回 | 27.7% | 38.4% | 40.3% | 28.7% |
| 年に1〜数回 | 17.4% | 25.1% | 44.7% | 53.9% |
| 数年に1回 | 1.2% | 1.6% | 1.3% | 3.5% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-73。所要時間はいずれも所有世帯の居住地から(車・電車など)。主な管理者がいる世帯のみの集計
調査報告は、月に1回以上管理している割合を「徒歩圏内」で約8割、「車・電車などで3時間超」で約4割としています。 3時間超では、年に1〜数回が半数を超えます。 管理の回数と傷みの関係は相関で、回数だけで傷みが決まるわけではないことを空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係で整理しています。
いま誰が管理しているか
主な管理者の内訳は次のとおりです。
| 主な管理者 | 割合 |
|---|---|
| 所有者または所有者と同居している親族 | 76.8% |
| 所有者と同居していない親族 | 13.5% |
| 不動産業者、建設会社、管理専門業者など | 3.8% |
| 自治会・近所の人 | 0.9% |
| その他の人 | 1.3% |
| 誰も管理していない | 3.8% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-27(総数)
調査報告は、所有者または親族が管理している空き家が約9割としています。 業者が管理している割合は全体で3.8%ですが、「貸家用の空き家」では約14%、「売却用の空き家」では約8%で、他の種類より高くなっています。 親族以外に頼んでいる例は、現状では少数です。
人に頼むときの法律上の形
準委任と注意義務
見回りや換気、草取りを人に頼むのは、法律行為ではない事務を任せることにあたり、民法の委任の規定が準用されます。
民法第656条
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
民法第644条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
出典:民法(明治29年法律第89号)第644条・第656条
頼まれた側は「善良な管理者の注意」をもって事務を処理する義務を負います。 どこまでが頼んだ事務なのかが決まっていないと、この義務の範囲もはっきりしません。 民法第645条は、受任者は委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告しなければならないと定めています。
出典:民法第645条
報酬の定め
民法第648条第1項
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
出典:民法第648条第1項
親族や近所の人に頼む場合、お礼を払うつもりでも、取り決めが無ければ条文上は報酬の請求権が生じません。 謝礼の額と払う時期を先に決めておくと、あとで行き違いになりにくいと考えられます。
選べる手段の比較
調査の区分と条文をもとに、遠方の所有者が選べる手段を並べました。
| 手段 | 調査での位置づけ | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 自分で通う回数を組み直す | 3時間超の管理は年に1〜数回が53.9%(図表4-73) | 台風や地震のあとの見回りなど、出来事の後に行く作業を分けておく |
| 同居していない親族に頼む | 主な管理者の13.5%(図表3-27) | 頼む作業の範囲・報告の方法・謝礼の有無(民法第645条・第648条第1項) |
| 近所の人・自治会に頼む | 主な管理者の0.9%(図表3-27) | 親族と同じ3点に加え、鍵の預け方と緊急時の連絡先 |
| 業者に頼む | 主な管理者の3.8%(図表3-27) | 契約書の作業内容・回数・報告の形式・料金 |
| 空き家の状態を終わらせる | 令和6年12月1日までに空き家でなくなった18.1%のうち、売却した約22%・貸した約20%(図表3-34・3-38) | 相続人の間の合意と、売る・貸すの比較 |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-27・3-34・3-38・4-73、民法第645条・第648条第1項
頼む先を選ぶときに見るのは、頼みたい作業が何かです。 調査で管理の内容として多いのは、外回りの清掃・草取り・剪定(79.5%)、戸締まりの確認(74.9%)、住宅の通風・換気(66.9%)でした(図表4-65、複数回答)。 換気や室内の確認は家の中に入る作業なので、鍵を預けられる相手かどうかが選択を分けると考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65
持ち続けるか手放すかの判断は相続した実家を、売る・貸す・持ち続ける。何を基準に決めるかに、 管理と賃貸を比べた例は海外赴任のあいだ、家をどうするか。空き家管理と賃貸の比較にまとめています。
調査結果のまとめ
- 管理の課題に「遠方に住んでいるので往訪が困難」を挙げた世帯は21.6%でした(図表3-29、複数回答)
- 所有世帯の居住地から3時間超の空き家は10.4%で、そこでは年に1〜数回の管理が53.9%です(図表3-9・4-73)
- 主な管理者は所有者または同居親族が76.8%、同居していない親族が13.5%で、業者は3.8%、自治会・近所の人は0.9%でした(図表3-27)
- 人に管理を頼むのは準委任にあたり、受任者は善良な管理者の注意義務を負います(民法第644条・第656条)。報酬は特約がなければ請求できません(民法第648条第1項)
- 選べる手段は、通う回数の組み直し・親族・近所・業者・空き家の状態を終わらせる、の5つです
どの手段でも、頼む作業の範囲と報告の方法を先に決めることが共通しています。 遠方の空き家は、管理者に任せたあとの様子を自分の目で確かめにくいため、報告の形を決めておくことが、管理が続いているかを知る手段になります。
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根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表3-9・3-27・3-29・3-30・3-34・3-38・4-65・4-73
民法(明治29年法律第89号)第644条・第645条・第648条・第656条
条文は e-Gov 法令検索の民法で確認しました。調査の基準日は令和5年10月1日(一部の調査事項は令和6年12月1日)で、割合は不詳を除いて集計された値です。業者の料金は契約ごとに決まるため、見積書で確かめられます。