空き家を放置すると罰則はあるのか。
過料と行政代執行
過料と
空家等対策の推進に関する特別措置法で過料が定められているのは第30条に書かれた2つの場合だけです。50万円以下の過料は、第22条第3項の市町村長の命令に違反した場合で、空き家を放置していること自体に過料を科す条文は、この法律にはありません。命令に従わないときは、市町村長が行政代執行法の定めるところに従って自ら措置をとることができます。所有者を確知できない場合と緊急の場合は、条文に「命令対象者の負担において」と書かれています。過料と代執行を、条文にあたって整理しました。
過料の定め
空家法第30条が定める2つの過料
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「空家法」といいます)で過料を定めているのは第30条です。 第1項と第2項の条文は次のとおりです。
空家法第30条第1項
第二十二条第三項の規定による市町村長の命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。
空家法第30条第2項
第九条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、二十万円以下の過料に処する。
出典:空家法第30条第1項・第2項
条文の内容を表にすると次のとおりです。
| 違反の内容 | 条文 | 過料の上限 |
|---|---|---|
| 市町村長の命令に違反した | 空家法第30条第1項(命令は空家法第22条第3項) | 50万円以下 |
| 報告をしない、虚偽の報告をする、立入調査を拒み、妨げ、または忌避した | 空家法第30条第2項(報告と立入調査は空家法第9条第2項) | 20万円以下 |
出典:空家法第9条第2項、第22条第3項、第30条第1項・第2項
金額は「以下」と書かれた上限で、実際にいくらになるかは条文から分かりません。 条文の語は「過料」で、懲役や罰金の語は空家法にありません。
過料の定めがない行為
空家法で過料の対象とされているのは、命令への違反と、報告・立入調査に関する違反の2つです。 空き家であること、管理が行き届いていないことだけでは、空家法第30条の対象になりません。
- 所有者等の責務を定めた空家法第5条は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めなければならないとしています。過料の定めは置かれていません
- 管理不全空家等への指導と勧告(空家法第13条第1項・第2項)に従わなかったことを理由とする過料は、空家法第30条にありません
- 特定空家等への助言・指導と勧告(空家法第22条第1項・第2項)に従わなかったことを理由とする過料も、空家法第30条にありません。過料に進むのは、その次の段階の命令に違反した場合です
出典:空家法第5条、第13条第1項・第2項、第22条第1項・第2項、第30条
命令に至るまでの順番
助言または指導から勧告まで
過料の対象になる命令は、特定空家等に対してだけ出されます。 市町村長は、特定空家等の所有者等に、除却、修繕、立木竹の伐採その他の措置をとるよう助言または指導をすることができます(空家法第22条第1項)。 それでもなお状態が改善されないと認めるときは、相当の猶予期限を付けて、必要な措置をとることを勧告することができます(同条第2項)。 管理不全空家等は、指導と勧告までで、命令の定めはありません(空家法第13条)。
出典:空家法第13条、第22条第1項・第2項
勧告から命令まで
命令の条文は、空家法第22条第3項です。
空家法第22条第3項
市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
出典:空家法第22条第3項
命令には、勧告を受けた者が正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかったことと、特に必要があると認めることが要件になっています。 命令の前には、次の手続きが置かれています。
- 通知書の交付。命じようとする措置と事由、意見書の提出先と提出期限を記載した通知書が交付され、意見書と自己に有利な証拠を提出する機会が与えられます(空家法第22条第4項)
- 公開の意見聴取の請求。通知書の交付を受けた日から5日以内に、意見書の提出に代えて、公開による意見の聴取を請求することができます(同条第5項)
- 標識による公示。命令をした場合、市町村長は標識の設置などにより、その旨を公示しなければなりません(同条第13項)
出典:空家法第22条第3項から第5項まで・第13項
措置の順番と、特定空家等に当たる状態の4つは、 「特定空家等」とは何か。当たる4つの状態と、そのあとに起きることにまとめています。 指導や勧告の通知が届いた場合の動き方は、 管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかにまとめています。
行政代執行
代執行ができる場合
命令に従わない場合の手続きは、空家法第22条第9項に置かれています。
空家法第22条第9項
市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
出典:空家法第22条第9項
代執行ができるのは、命じられた措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、履行しても期限までに完了する見込みがないときの3つです。 市町村長が自ら行うほか、第三者にさせることもできます。 代執行の手続きは、空家法ではなく行政代執行法の定めるところに従うとされています。
費用の負担
費用の負担について、空家法が条文で書いているのは次の場合です。
| 場合 | 条文 | 費用についての書き方 |
|---|---|---|
| 命じられた措置を履行しない | 空家法第22条第9項 | 費用の負担者の語はなく、行政代執行法の定めに従う |
| 過失がなくて命令の相手を確知できない | 空家法第22条第10項 | 「当該命令対象者の負担において」市町村長が措置を行う |
| 災害その他非常の場合で、命令のいとまがない | 空家法第22条第11項 | 「命令対象者の負担において」市町村長が措置を行う |
出典:空家法第22条第9項から第11項まで
第10項は、あらかじめ公告する内容として、期限までに措置を行わないときは市町村長または措置実施者が措置を行い、 当該措置に要した費用を徴収する旨を挙げています。 第12項は、第10項と第11項の規定により負担させる費用の徴収について、行政代執行法の費用の徴収に関する規定を準用すると定めています。 負担するのは命令対象者、つまり措置を命じられるべき者です。
出典:空家法第22条第10項から第12項まで
第9項の代執行について、費用を誰がどのように負担するかは、同項が従うとしている行政代執行法の定めによります。 費用の額は条文に書かれていません。見積りの方法や請求の手続きは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。
調査結果のまとめ
- 空家法で過料が定められているのは第30条にある2種類だけです。命令違反は50万円以下(第1項)、報告・立入調査に関する違反は20万円以下(第2項)です
- 過料の金額は上限です。条文の語は過料で、空き家を放置していること自体に過料を科す条文は空家法にありません
- 過料に進むのは、特定空家等への助言・指導、勧告の次にある命令(空家法第22条第3項)に違反した場合です。管理不全空家等には命令の定めがありません
- 命令の前には、通知書の交付と意見を述べる機会があります。通知書の交付を受けた日から5日以内に公開の意見聴取を請求できます(同条第4項・第5項)
- 命令に従わないときは、市町村長が行政代執行法の定めるところに従い自ら措置をとり、または第三者にさせることができます(同条第9項)
- 代執行の費用は、所有者を確知できない場合と緊急の場合について、条文に「命令対象者の負担において」と書かれています(同条第10項・第11項)
過料と代執行は、どちらも命令を受けたあとの段階です。 助言・指導と勧告の段階で状態を改善することが、命令と費用の負担の双方を遠ざけることにつながります。 個別の家が特定空家等に当たるかどうか、代執行の費用の扱いは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。
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根拠にした資料
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第9条・第13条・第22条・第30条
条文は2026年9月10日に取得した e-Gov 法令検索の内容にもとづきます。個別の家が特定空家等に当たるかどうかは、市町村長が判断します。