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ホームお役立ちコラム親が施設に入った実家を、すぐ売らずに持ち続ける場合にやること
相続・片づけ

親が施設に入った実家を、
すぐ売らずに持ち続ける場合にやること

親が生きている間、その家は親の財産です。相続は始まっていないので、子の判断だけで売ることはできません。判断能力が下がったあとは、成年後見人がついても居住用の建物と敷地の処分には家庭裁判所の許可が要ります(民法第859条の3)。国土交通省の調査では、人が住まなくなった理由の10.0%が「老人ホームなどの施設に入居」でした。売るかどうかを決める前に何をしておくかを、条文と統計にあたって整理しました。

まず、家が誰のものかを確かめる

施設に入っても、名義は動かない

施設への入居は、住む場所が変わることであって、所有権が移ることではありません。 登記の名義人は親のままです。子は所有者ではないため、売る・貸す・取り壊すという処分を自分の判断で行うことはできません。

国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査結果」によると、人が住まなくなった理由は 死亡が43.9%、別の住宅への転居が39.0%、老人ホームなどの施設に入居が10.0%でした。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-43

施設に入ったことで空き家になった家は、持ち主が生きている空き家です。 相続で引き継いだ家とは、決められる人が違います。

判断能力があるうちは、本人が決められる

親の判断能力が保たれている間は、親自身が売主になれます。子は委任を受けて動く立場です。 この段階でできることは多く、選べる幅がいちばん広いのはこの時期です。

同じ調査は「相続前の対策」を、被相続人との話し合い・遺言の作成支援・後見制度や家族信託の活用・その他の対策のいずれかを行うこと、と定義しています。

出典:同調査 図表1-4(原典の表題は「取得方法の区分と内容」ですが、表の中身は相続前の対策の定義です)

相続で空き家を取得した世帯のうち、何らかの対策を講じていたのは23.0%、講じていなかったのは77.0%でした。

出典:同調査 図表3-15(相続前の対策状況)

講じた内容は被相続人との話し合いが16.7%で、後見制度や家族信託の活用は1.3%にとどまります。

出典:同調査 図表3-16(相続前の対策状況・複数回答)

判断能力が下がったあとにできること

成年被後見人がした法律行為は、取り消せる

判断能力が失われた状態で結んだ契約は、あとから取り消される可能性があります。

民法第9条

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

出典:民法(明治29年法律第89号)第9条

後見開始の審判は、本人・配偶者・四親等内の親族などの請求により家庭裁判所が行います(民法第7条)。 申立てから後見人が決まるまでには時間がかかります。 売却を急ぐ事情があるときほど、この手順が先に立ちふさがると考えられます。

居住用不動産の処分には、家庭裁判所の許可が要る

後見人がついたあとも、実家の売却は後見人の一存では進みません。

民法第859条の3

成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

出典:民法(明治29年法律第89号)第859条の3

条文は売却だけでなく、賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定も許可の対象にしています。 「売らずに貸しておく」も、この条の範囲に入ります。

施設に入って現に住んでいない家が「その居住の用に供する建物」にあたるかどうかは、 住民票の所在や帰る見込みなどの事情によって判断が分かれます。 本記事は条文の説明であり、個別の事案についての判断ではありません。 該当するかどうか、許可が下りるかどうかは、家庭裁判所または弁護士・司法書士にご確認ください。

持ち続ける間に、家の側でやること

傷みは、手を入れているかどうかで差が出る

同じ調査では、空き家の19.6%に構造上の不具合が、43.2%に外観または室内の部分的な腐朽・破損がありました。

出典:同調査 図表4-53

管理の頻度は、月に1〜数回が34.0%で最も多く、月に1回以上を合わせると約7割です。 腐朽・破損の程度が大きい空き家ほど管理の頻度が低い、という関係も出ています。 これは相関であって因果ではありませんが、手を入れていない家ほど傷んでいるという結果は動きません。

出典:同調査 図表3-28

管理をする上での課題は、管理の作業が大変が31.7%、遠方に住んでいるので往訪が困難が21.6%でした。

出典:同調査 図表3-29(複数回答)

面会や手続きで手一杯の時期に、家の見回りまで抱えるのは現実的ではない場合があります。 売る・売らないを決める前に、傷ませない状態だけは保っておくという考え方ができます。

家の中の物も、親の財産

家財・通帳・保険証券は、家と同じく親のものです。 親が生きている間は、子が自分の判断で処分することはできません。 片付けを進めたい場合でも、本人の意思によるのか、後見人の権限の範囲なのかで扱いが変わります。

一方、名義や連絡先の確認は、処分にあたらない範囲で先に進められます。確かめておくとよいものを挙げます。

  1. 登記事項証明書。所有者が誰か、担保が付いていないかを確かめる
  2. 固定資産税の納税通知書。宛先が施設に届くようにしておく
  3. 火災保険。人が住まなくなると契約の区分が変わることがある
  4. 電気・水道。止めると通水や換気ができなくなる
  5. 郵便物。たまり続けると、留守であることが外から分かる

税の特例は、この段階では決まらない

相続のときの控除には、住めなくなった場合の定めがある

相続した家を売るときに譲渡所得から3000万円を差し引ける制度が、租税特別措置法第35条第3項にあります。 対象は被相続人居住用家屋で、原則は相続の開始の直前に被相続人が住んでいた家屋です。

この制度には期限と上限があります。同項は、譲渡を 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにしたものに限り、 譲渡の対価の額が1億円を超えるものを除くと定めています。制度そのものにも 令和9年12月31日までという期限が置かれています。 さらに同条第4項により、その家屋と敷地を取得した相続人が3人以上のときは、3000万円が2000万円に読み替えられます

持ち続けるか売るかを決めていない段階でも、この3年の期限だけは先に数えておくほうが安全です。 期限を過ぎてから売ると、同じ家でもこの控除は使えません。

同条第5項は、その定義の中に「居住の用に供することができない事由」(特定事由)で住めなくなっていた場合を含める形をとっています。

租税特別措置法第35条第5項

前二項及び次項に規定する被相続人居住用家屋とは、当該相続の開始の直前において当該相続又は遺贈に係る被相続人(包括遺贈者を含む。以下この項及び次項において同じ。)の居住の用(居住の用に供することができない事由として政令で定める事由(以下この項及び次項において「特定事由」という。)により当該相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合(政令で定める要件を満たす場合に限る。)における当該特定事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用(第三号において「対象従前居住の用」という。)を含む。)に供されていた家屋(次に掲げる要件を満たすものに限る。)で政令で定めるものをいい

出典:租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第5項

中身は政令にあり、ここでは判定できない

条文が定めているのは枠組みまでで、特定事由が何を指すのか、満たすべき要件が何かは政令に委ねられています。 当社はその政令を原典として持っていないため、この記事では当てはまるかどうかを判定していません。

家屋の側の要件は同項各号にあり、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、建物の区分所有等に関する法律第1条に該当する建物でないこと、 相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた者がいなかったことの3つです。

税額はここでは示しません。適用できるかどうかは要件の当てはめで決まります。 売却を考える段階で、税務署または税理士にご確認ください。

調査結果のまとめ

売る判断そのものを急がなくても困らない場面は多くあります。ただし相続が始まったあとは別で、 3000万円の控除には相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限があります。 急いで困るのは、決められる人がいなくなったあとです。 親の判断能力が保たれているうちに、誰が何を決められるのかを家族で確かめておくことが、 選択肢を残す方法だと考えられます。

誰も住まないご実家を、毎月みまもります

貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。

お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。

根拠にした資料
民法(明治29年法律第89号)第7条・第9条・第859条の3
租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第3項・第4項・第5項
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表1-4・図表3-15・図表3-16・図表3-28・図表3-29・図表4-43・図表4-53
条文は2026年9月15日に e-Gov 法令検索で確認しました。成年後見の申立てにかかる期間、後見人の報酬、施設の費用は、原典で裏を取れなかったためこの記事では扱っていません。居住用不動産にあたるかどうかの判断と、税の特例が使えるかどうかの判定は、家庭裁判所・税務署、または弁護士・司法書士・税理士にご確認ください。