実家の名義変更。
必要な書類と、自分でやる場合の手順
必要な
相続による名義変更は、取得した人が1人で申請できます。不動産登記法第63条第2項が、共同申請の原則の例外として定めています。手間の大半は書類集めで、なかでも亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が山になります。戸籍法第120条の2第1項により、条件を満たせば本籍地以外の窓口でも請求できます。条文にあたって、何を集め、どう出し、どこで止まるのかを順に並べました。
「名義変更」と呼んでいるものの正体
変えるのは所有権の登記名義人
実家の名義変更とは、法務局が備える登記簿の 所有権の登記名義人を、亡くなった人から取得した人に変える手続きを指します。 正式には所有権の移転の登記です。 市区町村への届出とは別のもので、固定資産税の納税義務者の変更とも別に必要になります。
不動産登記法第76条の2第1項により、相続の開始と所有権の取得を知った日から 3年以内の申請が義務になっています。 同法第164条第1項は、正当な理由がないのにこれを怠った場合に10万円以下の過料と定めています。
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項・第164条第1項
相続の場合は単独で申請できる
不動産登記法第60条は、権利に関する登記を 登記権利者と登記義務者が共同でしなければならないと定めています。 売買では、売主と買主がそろって申請する形になります。 相続はこの原則の例外です。
不動産登記法第63条第2項
相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第63条第2項
亡くなった人は申請できないため、条文は単独申請を認めています。 相手方の押印や協力を待つ必要がないという点で、 自分でやる余地が大きい手続きだと言えます。 なお、遺産分割で誰が取得するかを決める段階では、相続人の合意が別途必要になります。
集める書類と、その入手先
一覧
申請の中身によって増減しますが、相続による所有権の移転の登記では、おおむね次のものが要ります。
| 書類 | どこで手に入るか | 注意点 |
|---|---|---|
| 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍関係の証明書 | 本籍地の市区町村。戸籍法第120条の2第1項の条件を満たせば、本籍地以外の指定市町村長にも請求できる | 転籍や婚姻をしていると、さかのぼる通数が増える |
| 相続人の戸籍関係の証明書 | 同上 | 相続人であることと、いま生きていることを示すため |
| 亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票 | 市区町村の窓口 | 登記簿の住所と、亡くなった人が同一人であることをつなぐため |
| 不動産を取得する人の住民票 | 市区町村の窓口 | 新しい登記名義人の住所として登記される |
| 遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑登録証明書 | 協議書は相続人が作成。証明書は市区町村の窓口 | 法定相続分どおりに登記する場合は要らないことがある |
| 固定資産課税台帳の登録価格が分かる書類 | 市区町村の資産税担当 | 登録免許税の課税標準の基礎になる |
| 登記事項証明書(現在の登記内容の確認用) | 法務局。不動産登記法第119条第5項により、管轄外の登記所にも請求できる | 申請書に書く不動産の表示を、登記簿の記載と合わせるため |
必要書類は事案によって変わります。手数料の額と交付までの日数は、政令や自治体の条例、窓口の運用で決まるため、この記事では扱っていません。窓口または法務局にご確認ください。
亡くなった人の戸籍は、請求できる人が決まっている
戸籍法第10条第1項は、戸籍謄本等を請求できる人を その戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属、直系卑属としています。 親の戸籍を子が請求するのは直系卑属からの請求にあたります。 一方で、兄弟姉妹はこの範囲に入っていません。
範囲の外にいる人が請求する場合は、同法第10条の2に定めがあります。 自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合などに、 その理由を明らかにして請求する形になります。 また同法第10条第3項により、郵便その他の方法で送付を求めることもできます。
出典:戸籍法(昭和22年法律第224号)第10条第1項・第3項、第10条の2
本籍地以外の窓口でも請求できる場合がある
出生までさかのぼると、本籍が何度も移っていることがあります。 そのたびに遠方の市区町村へ請求するのは負担が大きいため、戸籍法に別の道が置かれています。
戸籍法第120条の2第1項
第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、 次の各号に掲げる請求は、当該各号に定める者に対してもすることができる。
出典:戸籍法(昭和22年法律第224号)第120条の2第1項
同項第1号は、第10条第1項の請求について 指定市町村長のうちいずれかの者に対してもできるとしています。 条文には戸籍が磁気ディスクをもって調製されているときという条件が付いており、 対象にならない戸籍もあります。 自分の場合に使えるかどうかは、市区町村の窓口にご確認ください。
申請の出し方
電子か書面か
不動産登記法第18条は、申請の方法を2つ定めています。 電子情報処理組織を使用する方法と、 申請情報を記載した書面を提出する方法です。 書面には、法務省令で定めるところにより申請情報を記録した磁気ディスクも含まれます。
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第18条
提出先は、不動産の所在地を管轄する登記所です。 同法第25条第1号は、所在地が管轄に属しないときを却下事由として挙げています。 実家が遠方にある場合でも、書面であれば郵送で出す方法があります。
登記原因証明情報を付ける
同法第61条は、権利に関する登記を申請する場合には 登記原因を証する情報を申請情報と併せて提供しなければならないと定めています。 相続であれば、亡くなったことと相続関係を示す戸籍関係の書類がこれにあたります。 遺産分割で決めた場合は、その協議の内容を示すものが加わります。
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第61条
戸籍を出生までさかのぼって集めるのは、この条文があるためです。 相続人がこの人たちで全部そろっているということを、 書類の連なりで示す必要があります。 途中の戸籍が1通抜けると、そこで連なりが切れます。
却下される場合と、直せる場合
補正できるものは、却下されない
不動産登記法第25条は、登記官が申請を却下しなければならない場合を13号にわたって列挙しています。 ただし柱書にただし書が付いており、 申請の不備が補正することができるものである場合において、 登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは却下されません。
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第25条
書き損じや添付の漏れは、その場で終わりになるとはかぎりません。 直せるものは直す機会が与えられるという建て付けになっています。
自分でやるときに当たりやすい号
列挙されている却下事由のうち、自分で申請する場合に関わりやすいのは次のものです。
| 号 | 却下される場合 |
|---|---|
| 第1号 | 不動産の所在地が、申請を受けた登記所の管轄に属しないとき |
| 第6号 | 申請情報の内容である不動産または権利が、登記記録と合致しないとき |
| 第8号 | 申請情報の内容が、登記原因を証する情報の内容と合致しないとき |
| 第9号 | 併せて提供しなければならない情報が提供されないとき |
| 第12号 | 登録免許税を納付しないとき |
出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第25条第1号・第6号・第8号・第9号・第12号(条文の文言を要約したもの)
多いのは登記簿の記載と申請書の記載が合っていないという型です。 先に登記事項証明書を取り、そこに書かれた表示のとおりに申請書を作るのが確実な進め方です。
自分でやるか、頼むか
自分でやりやすい場合
次の条件がそろっているほど、自分で進めやすくなると考えられます。
- 相続人が少なく、全員と連絡が取れている
- 亡くなった人の本籍の移動が少ない
- 対象の不動産が1か所で、管轄の登記所が1つ
- 遺産分割の内容が決まっている
相続による登記は単独で申請できるため、 書類さえそろえば、手続きそのものは1人で完結します。
頼んだほうがよい場合
逆に、次のような事情があるときは司法書士への依頼を検討する価値があります。
- 相続がすでに二度以上続いていて、相続人の人数が多い
- 連絡が取れない相続人がいる
- 不動産が複数の市区町村にまたがっている
- 登記簿上の住所と、亡くなった人の最後の住所がつながらない
判断の分かれ目は、書類の量ではなく連なりを作れるかどうかです。 戸籍がつながらない、住所がつながらないという段階に入ると、 その解き方は事案ごとに変わります。
実際にどれくらいの人が名義を変えているか
名義変更を行った世帯は64.2%
国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によると、所有者が分かっている空き家について、 「名義変更を行った」が64.2%、「新たに不動産登記を行った」が16.8%、 「わからない(覚えていない)」が4.9%、登記と名義変更の「いずれも行っていない」が14.1%でした。
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-33。この設問は相続登記が義務化された令和6年4月1日より前の、令和5年10月1日時点の状況を尋ねたものです。
止まりやすいのは共有の家
所有者の数別にみると、2人以上(共有)の空き家では 「いずれも行っていない」が23.8%で、1人(単独所有)の12.5%を上回りました。
出典:同調査 図表4-38
名義変更そのものは、多くの世帯が済ませています。 止まっているのは誰の名義にするかが決まっていない家だと考えられます。 書類の集め方より先に、取得する人を決めることが手続きの本体だと言えます。
調査結果のまとめ
- 名義変更とは登記簿の所有権の登記名義人を変える手続きで、正式には所有権の移転の登記です
- 相続による登記は、取得した人が単独で申請できます(不動産登記法第63条第2項)。売買と違い、相手方の協力は要りません
- 申請の方法は電子情報処理組織を使用する方法と、書面を提出する方法の2つです(同法第18条)
- 登記原因を証する情報を併せて提供する必要があります(同法第61条)。戸籍を出生までさかのぼるのはこのためです
- 補正できる不備は、期間内に直せば却下されません(同法第25条ただし書)。当たりやすいのは登記記録との不一致と、登録免許税の不納付です
- 戸籍謄本等を請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属です(戸籍法第10条第1項)。兄弟姉妹はこの範囲に入らず、同法第10条の2による請求になります
- 戸籍が磁気ディスクで調製されていれば、本籍地以外の指定市町村長にも請求できます(同法第120条の2第1項)
- 調査では名義変更を行った世帯が64.2%、「いずれも行っていない」が14.1%。共有では23.8%まで上がりました
手続きの重さは、相続人の人数と本籍の移動の回数でほぼ決まります。 まず登記事項証明書を取り、いまの登記名義人と不動産の表示を確かめるところから始めると、 集める書類の見当が付きます。 手数料と所要日数は窓口ごとに異なるため、進める前に法務局と市区町村の窓口にご確認ください。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
不動産登記法(平成16年法律第123号)第18条・第25条・第60条・第61条・第63条・第76条の2・第119条・第164条
戸籍法(昭和22年法律第224号)第10条・第10条の2・第120条の2
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-33・図表4-38
条文は2026年9月11日に e-Gov 法令検索で確認しました。必要書類は事案によって変わります。証明書の手数料の額と交付までの日数は、政令や自治体の条例、窓口の運用で決まるため、この記事では扱っていません。実際の手続きは、不動産の所在地を管轄する法務局、または司法書士にご確認ください。