実家が空き家になった。
最初の1か月にやることの順番
最初の
実家が空き家になった最初の1か月は、家を閉じて書類を集める、相続財産を調べる、片づけと処分は相続の方針が決まるまで待つ、期限のある手続きを並べる、管理の担い手を決めるの順で進めると、後から取り返しがつかなくなる手順を避けやすくなります。相続人は、相続の開始を知った時から3か月以内に、承認か放棄かを選ぶ定めで(民法第915条第1項)、相続財産の全部又は一部を処分すると単純承認をしたものとみなされます(民法第921条)。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、空き家を相続で取得した世帯は57.9%で、そのうち相続前に対策を講じていなかった世帯は77.0%でした。順番と根拠の条文を整理し、それぞれの詳しい記事へつなぎました。
実家が空き家になる経緯
| 人が住まなくなった理由 | 総数 | 相続で取得した世帯 |
|---|---|---|
| 死亡 | 43.9% | 58.3% |
| 別の住宅に転居 | 39.0% | 26.9% |
| 老人ホームなどの施設に入居 | 10.0% | 11.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-19(上位3項目)
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 空き家の取得方法は「相続」が57.9%で最も多くなっています(図表3-13)。 以前は人が住んでいた空き家の、住まなくなった理由は「死亡」が43.9%、「別の住宅に転居」が39.0%、「老人ホームなどの施設に入居」が10.0%でした(図表3-19)。 相続で空き家を取得した世帯のうち、相続前に「特に対策は講じていない」世帯は77.0%です(図表3-15)。 多くの場合、実家が空き家になった時点では、家をどうするかが決まっていないと考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-13・3-15・3-19
親が施設に入って空き家になった場合は、親が存命で所有者のままのため、相続の手続きは始まりません。 その場合の手当ては親が施設に入った実家を、すぐ売らずに持ち続ける場合にやることにまとめています。 本記事は、親が亡くなって実家が空き家になった場合の順番を扱います。
最初の1週間。家を閉じて書類を集める
戸締まりと郵便物
最初にするのは、家を閉じることです。 窓と勝手口の施錠、雨戸の開け閉めの状態、郵便受けの確認をして、鍵を誰が持つかを相続人のあいだで決めます。 郵便物は、亡くなった方あての請求書や通知が、相続財産を調べる手がかりになります。 転送の手続きをするか、相続人の誰かが定期的に回収するかを決めておきます。 電気・水道・ガスは、換気や掃除で家に入る予定があるうちは、すぐに止めずに残しておく判断もあります。
書類の確保と相続財産の調査
民法第915条第2項
相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
出典:民法(明治29年法律第89号)第915条第2項
民法第915条第2項により、相続人は承認か放棄かを決める前に、相続財産を調べることができます。 権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、預金通帳、借入れの書類、保険の証券などを探して、1か所にまとめます。 固定資産税の納税通知書と課税明細書は、その市町村で課税されている土地・家屋を確かめる手がかりになり、実家以外の不動産に気づくきっかけにもなります。 借入れの書類が見つかった場合は、次の節の相続の方針に関わります。
片づけと処分は相続の方針のあと
3か月の期間と法定単純承認
民法第915条第1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
民法第921条
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
出典:民法第915条第1項・第921条
民法第915条第1項により、相続人は相続の開始を知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・放棄のいずれかを選びます。 民法第921条は、相続人が単純承認をしたものとみなす場合を並べており、上に引いたのはその第1号です。 相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。保存行為はこの限りでないと定められています。 期間内に限定承認も放棄もしなかったときも、単純承認をしたものとみなされます(民法第921条第2号)。
片づけを始める時期
家を取り壊すことは条文の「処分」にあたると考えられ、家財の売却や廃棄も、物の価値や行為の内容などの個別の事情によっては「処分」にあたりえます。 放棄を考える可能性が少しでもあるあいだは、片づけは戸締まりや傷みを防ぐ手当てにとどめ、家財の売却や廃棄は相続の方針が決まってから始める順番が、取り返しのつかない結果を避ける並べ方です。 相続の方針を決めるまでのあいだ、相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理する定めです(民法第918条)。
出典:民法第918条・第921条
やってはいけない手順は実家の相続で、後から取り返しがつかなくなる3つのことに、放棄したあとの管理は相続放棄しても、空き家の管理義務は残るのかに、片づけの進め方は実家の片付けを、どの順番で進めるかにまとめています。
期限のある手続きの一覧
| 手続き | 期限・基準日 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続の承認・放棄 | 相続の開始を知った時から3か月以内(家庭裁判所で伸長できる) | 民法第915条第1項 |
| 相続登記の申請 | 相続の開始を知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内 | 不動産登記法第76条の2第1項 |
| 相続人である旨の申出 | 相続登記の期間内に申し出れば、その期間内の申請義務を履行したものとみなされる。申出のあとの遺産の分割で取得した人は、分割の日から3年以内に登記を申請する | 不動産登記法第76条の3第2項・第4項 |
| 固定資産税の納税義務者 | 毎年1月1日(賦課期日)の登記簿上の所有者。登記名義人がその日より前に死亡している場合は、その日に現に所有している者 | 地方税法第343条第2項・第359条 |
| 現所有者の申告 | 市町村の条例で定めるところによる | 地方税法第384条の3 |
出典:民法第915条第1項、不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項・第76条の3第2項・第4項、地方税法(昭和25年法律第226号)第343条第2項・第359条・第384条の3
相続登記
不動産登記法第76条の2第1項
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
出典:不動産登記法第76条の2第1項
不動産登記法第76条の2第1項により、相続で所有権を取得した者は、3年以内に所有権の移転の登記を申請する定めです。 最初の1か月で登記を済ませる必要はありませんが、誰が実家を取得するかの話し合いと並べて、期限を相続人のあいだで共有しておきます。 分け方が決まらないまま期限が近づく場合は、不動産登記法第76条の3の相続人である旨の申出を使えます。申出をすれば期間内の申請義務は履行したものとみなされますが、その後の遺産の分割で所有権を取得した人は、分割の日から3年以内に登記を申請する定めです(不動産登記法第76条の3第2項・第4項)。 調査では、所有者が分かっている空き家のうち、登記と名義変更の「いずれも行っていない」世帯が14.1%でした(図表3-17、相続登記の義務化前の令和5年10月1日時点)。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-17
期限と手順は相続登記の義務化。3年以内に何をすればよいのかと相続人申告登記とは何か。相続登記との違いと使いどころに、自分で申請する場合の書類は実家の名義変更。必要な書類と、自分でやる場合の手順にまとめています。
固定資産税
地方税法第359条
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
出典:地方税法第359条
地方税法第359条により、固定資産税の賦課期日は1月1日です。 地方税法第343条第2項は、登記簿に所有者として登記されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、その日に土地又は家屋を現に所有している者を所有者とする定めです。 相続登記が済んでいなくても、1月1日に実家を現に所有している相続人が納税義務者になります。 地方税法第384条の3により、市町村は条例で定めるところにより、現所有者に住所・氏名などを申告させることができます。申告の方法と期限は、実家のある市町村の資産税の窓口で確かめられます。 税額の組み立ては空き家の固定資産税は、いくらかかるのかにまとめています。
管理の担い手と頻度
空家法第5条は、空き家の所有者又は管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めることを求めています。 相続の方針と登記の話し合いが続くあいだも、家は傷んでいきます。 最初の1か月のうちに、誰が鍵を持ち、どのくらいの頻度で見に行き、費用を誰が出すかを決めておくと、方針が決まるまでのあいだの傷みを抑えられます。 相続人が複数いる場合は、管理の担い手と費用の分け方も話し合いの対象になります。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
管理の頻度の考え方は空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係に、遠方で通えない場合の手段は遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。 売る・貸す・持ち続けるの判断は相続した実家を、売る・貸す・持ち続ける。何を基準に決めるかに、売る場合の税の特例は空き家の3000万円特別控除。使える条件を1つずつ確認するに整理しています。
調査結果のまとめ
- 空き家の取得方法は相続が57.9%で、相続で取得した世帯のうち相続前に対策を講じていなかった世帯は77.0%です(図表3-13・3-15)
- 住まなくなった理由は死亡が43.9%、別の住宅に転居が39.0%、施設に入居が10.0%でした(図表3-19)
- 相続人は相続の開始を知った時から3か月以内に承認か放棄かを選び(民法第915条第1項)、相続財産を処分すると単純承認をしたものとみなされます(民法第921条)
- 相続登記は所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する定めで(不動産登記法第76条の2第1項)、相続人である旨の申出をすれば期間内の義務は履行したものとみなされます。その後の遺産の分割で取得した人は、分割の日から3年以内に申請します(不動産登記法第76条の3第2項・第4項)
- 固定資産税は1月1日の登記簿上の所有者に課され、登記名義人がその日より前に亡くなっている場合は、1月1日に現に所有している者に課されます(地方税法第343条第2項・第359条)
実家が空き家になった最初の1か月は、家を閉じて書類を集め、相続財産を調べ、片づけと処分は相続の方針が決まるまで待ち、期限のある手続きを並べ、管理の担い手を決める順に進めるのが要点です。 本記事で扱う不動産と相続の手続きのうち、期限が最も早いのは3か月の相続の承認・放棄で、家財の処分はこの判断に関わるため、片づけより先に方針を決める並べ方になります。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表3-13・3-15・3-17・3-19
民法(明治29年法律第89号)第915条第1項・第2項・第918条・第921条
不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項・第76条の3第2項・第4項
地方税法(昭和25年法律第226号)第343条第2項・第359条・第384条の3
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、取得方法・相続前の対策状況・登記または名義変更の有無は空き家を所有する世帯、人が住まなくなった理由は以前は人が住んでいた空き家の戸数について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。