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管理・傷み

売れない・貸せない空き家をどうするか。
持ち続ける場合の最小限

売る・貸すの出口がすぐに開かない空き家は、珍しくありません。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯でも、募集の状況は「まだ何もしていない」が48.4%で、課題は「住宅の傷み」43.3%、「借り手・買い手の少なさ」40.3%が上位です。買い手・借り手が見つからない場合の対応として「賃貸・売却をあきらめる」を挙げた世帯は20.4%でした。出口が開くまでのあいだ、家は持ち続けることになります。その期間に条文が求めているのは適切な管理に努めること(空家法第5条)で、調査では管理者がいる空き家の約7割が月に1回以上管理され、年間の維持管理費用は5万円未満が約5割でした。持ち続ける場合に最小限何をするか、何にいくらかかっているかを、条文と調査で整理しました。

売れない・貸せない空き家の実態

募集の状況

買い手・借り手の募集状況割合
まだ何もしていない48.4%
募集中32.4%
募集の準備中15.2%
借り手・買い手が決定済み4.1%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-122。今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯について集計

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査で、世帯が所有する空き家だけが対象です。 売る・貸す意向がある世帯のうち、実際に募集しているのは32.4%で、半数近くはまだ動いていません。

課題と、見つからない場合の対応

賃貸・売却する上での課題(複数回答)割合
住宅の傷み43.3%
借り手・買い手の少なさ40.3%
家財などの処理37.4%
設備や建具の古さ34.0%
リフォーム費用21.4%
地域の高齢化や人口減少21.4%
どうすればよいか分からない21.4%
住宅の耐震性16.0%
公共交通の便の悪さ14.3%
住宅の断熱性10.5%
広さや部屋数9.7%
再建築不可(道路付けの悪さなど)7.6%
課題はない6.3%
バリアフリー化の状況(段差やエレベーターの有無等)5.0%
その他8.8%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-123

課題の上位は、家の側の事情(傷み・設備の古さ・家財)と、市場の側の事情(借り手・買い手の少なさ、地域の高齢化や人口減少)に分かれます。 大都市圏以外では「地域の高齢化や人口減少」が約23%で、大都市圏の約15%より高くなっています(図表4-124)。 買い手・借り手が見つからない場合の対応は、「家賃や価格を引き下げる」が45.5%、「自治体・専門家などに相談する」が42.6%、「賃貸・売却をあきらめる」が20.4%、「リフォームなどで住宅の魅力を高める」が6.4%でした(図表4-125)。 5世帯に1世帯は、見つからなければあきらめる、と答えています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-124・4-125

持ち続けている世帯の理由

今後5年間程度のうち空き家として所有しておく意向の世帯が挙げた理由は、「物置として必要」が55.8%、「解体費用をかけたくない」が47.3%、「住宅の古さ」が37.0%、「さら地にしても使い道がない」が34.8%、「取り壊すと固定資産税が高くなる」が28.2%でした(図表4-130)。 賃貸・売却しない理由としては、「住宅の古さ」のほかに「好きなときに利用や処分ができなくなる」が27.6%、「他人に貸すことに不安がある」が20.7%、「借り手・買い手の少なさ」が11.3%、「希望する価格で売れそうにない」が7.5%です。 共通の理由では「特に困っていない」が26.6%、「どうすればよいか分からない」が13.8%でした。 売れない・貸せないから持っている世帯と、持つことを選んでいる世帯の両方が、この数字の中にいます。 解体しない側の理由は空き家をなぜ解体しないのか。解体しない側の4つの理由にまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-130

持ち続ける場合に条文が求めること

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第5条は、所有者と管理者の責務を次のように定めています。

空家法第5条

空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条

求められているのは「適切な管理に努める」ことで、売ることや壊すことではありません。 回数や作業の中身は条文に書かれていません。 一方で、管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態(管理不全空家等)になると、市町村長は空家法第13条第1項により指導ができ、改善されず、おそれが大きいと認めるときは、空家法第13条第2項により修繕や立木竹の伐採などの具体的な措置を勧告できます。 勧告を受けた管理不全空家等の敷地は、地方税法第349条の3の2第1項により、固定資産税の住宅用地の課税標準の特例の対象から除かれます。 持ち続ける場合の線は、ここにあります。 指導や勧告の条件は管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかに、外れる特例の中身は「管理不全空家等」に指定されると、固定資産税はいくら上がるのかにまとめています。

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法第5条・第13条第1項・第2項/地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項

最小限の管理の中身と頻度

管理者が実際にしている作業

管理の内容(複数回答)割合
外回りの清掃、草取り、剪定など79.5%
戸締まりの確認74.9%
住宅の通風・換気66.9%
郵便物、チラシなどの整理・処分57.0%
住宅内の清掃55.4%
台風、地震などの後の見回り49.3%
傷み、雨漏りなどのチェック・修繕48.3%
水回りなどの点検・通水43.3%
除排雪16.6%
その他6.2%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65。管理者がいる空き家について集計

上位3つの「外回りの清掃、草取り、剪定など」「戸締まりの確認」「住宅の通風・換気」は、空家法第5条が挙げる「周辺の生活環境」に直接関わる作業と、家の中の湿気を抜く作業です。 この3つが、管理者がいる空き家の3分の2以上で行われている最小限の中身と読めます。 一方で、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」は48.3%、「水回りなどの点検・通水」は43.3%にとどまっています。 排水トラップの封水が切れると下水の臭いと虫の通り道になるため、通水は作業としては短くても、省くと家の中が変わります。 何が先に変わるかは空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかにまとめています。

頻度と、頻度別の傷み

管理の頻度割合構造上の不具合が生じていた
ほぼ毎日17.7%15.3%
週に1〜数回19.1%16.3%
月に1〜数回34.0%17.5%
年に1〜数回27.6%24.3%
数年に1回1.6%33.3%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-67・4-58。管理者がいる空き家について集計

調査報告は、月に1回以上を合わせると約7割とし、「構造上の不具合が生じていた」空き家の割合は月に1回以上では約15〜18%、「年に1〜数回」では約24%、「数年に1回」では約33%と大きく増加するとしています。 月に1回以上と年に数回のあいだに差があり、週に数回と月に数回のあいだにはほとんど差がありません。 これは相関で、調査は因果を示していません。 ただ、月に1回を目安にすれば、調査の多数派と同じ頻度になり、不具合の割合が増える手前に収まります。 管理面での心配事は「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%、「樹木・雑草の繁茂」が58.0%、「地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊」が56.9%、「不審者の侵入や放火」が51.7%で(図表4-61)、上位3つの作業はこの心配事に対応しています。 頻度の読み方は空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係にまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-58・4-61・4-67

かかっている費用

年間の維持管理に要する費用割合
費用はかかっていない12.1%
1万円未満10.6%
1〜3万円未満14.1%
3〜5万円未満11.0%
5〜10万円未満15.6%
10〜20万円未満16.7%
20〜30万円未満8.5%
30万円以上8.5%
不明2.9%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-74。調査の基準日は令和5年10月1日

調査報告は、5万円未満を合わせると約5割、「10〜20万円未満」が約17%で最も高いとしています。 「使用目的のない空き家」では5万円未満が6割弱です(図表4-75)。 何を費用に含めて答えたかの区分は示されていないため、固定資産税や光熱費を含むかどうかは回答者によって異なると考えられます。 管理をする上での課題では、「管理費用の負担が大きい」が22.5%、「遠方に住んでいるので往訪が困難」が21.6%、「管理を頼める人や業者がいない」が5.9%でした(図表4-79)。 自分で通えない場合の手段と費用の決まり方は遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。 業者に頼む場合の費用は、訪問の回数と作業の範囲で決まります。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-74・4-75・4-79

出口を閉じないためにできること

管理の頻度は、傷みだけでなく、その後に空き家でなくなったかどうかにも差として出ています。 令和6年12月1日時点で「現在空き家ではない」と回答した割合は、管理の頻度が「ほぼ毎日」の世帯で約26%、「数年に1回」で約11%でした(図表4-104)。 管理を続けることは、売る・貸す・住むのどれを選ぶ場合でも、その前提になる家の状態を保つことです。 賃貸・売却の課題の第1位が「住宅の傷み」43.3%であったことと合わせて読むと、出口が開かないあいだの管理は、出口を閉じないための作業でもあります。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-104・4-123

見つからない場合の対応で「自治体・専門家などに相談する」は42.6%でした(図表4-125)。 空き家の解消のために「空き家バンクに登録した」世帯は3.3%、「行政に相談した」は2.8%で(図表4-110)、使われている割合は小さいものの、費用をかけずに取れる手段です。 土地だけを国に引き取ってもらう制度は建物のある土地には使えないため、家を残したまま出口にはなりません。 詳しくは相続土地国庫帰属制度は、空き家のある土地に使えるのかにまとめています。 手放す道が詰まっている原因を順に外す手順は実家が処分できない。詰まる原因と、順に外していく手順にまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-110・4-125

調査結果のまとめ

売れない・貸せない家を持ち続ける場合の最小限は、月に1回を目安に、外回り・戸締まり・換気と通水を行い、台風や地震のあとに見回ることです。 条文が求めているのはそこまでで、調査の多数派も同じ範囲にいます。 自分で通えない場合は、親族・近所・業者のいずれかに同じ作業を頼む形になります。

誰も住まないご実家を、毎月みまもります

貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。

お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。

根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表4-58・4-61・4-65・4-67・4-74・4-75・4-79・4-104・4-110・4-122・4-123・4-124・4-125・4-130
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条第1項・第2項
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、募集の状況・課題・対応は今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯について、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。