空き家を自分で管理する。
1回の訪問でやることの手順
1回の
空き家を自分で管理する場合、1回の訪問でやることは、外回りの確認、郵便物の回収、換気、通水、室内の点検、戸締まりと記録の順です。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、空き家の主な管理者は所有者または所有者と同居している親族が76.8%で、管理者がしている作業は外回りの清掃・草取り・剪定が79.5%、戸締まりの確認が74.9%、住宅の通風・換気が66.9%でした。一方で、水回りなどの点検・通水は43.3%、傷み・雨漏りなどのチェック・修繕は48.3%と半数に届きません。管理をする上での課題は「管理の作業が大変」が31.7%で最も多い回答でした。自分で続けるには、持ち物と順番を先に決めて、毎回同じ手順で見ることが要点です。持ち物・手順・訪問の時期を、調査と条文で整理しました。
自分で管理している所有者の割合と課題
主な管理者
| 主な管理者 | 割合 |
|---|---|
| 所有者または所有者と同居している親族 | 76.8% |
| 所有者と同居していない親族 | 13.5% |
| 不動産業者、建築会社、管理専門業者など | 3.8% |
| 自治会・近所の人 | 0.9% |
| その他の人 | 1.3% |
| 誰も管理していない | 3.8% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-63(総数)
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 空き家の主な管理者は、所有者または所有者と同居している親族が76.8%、同居していない親族が13.5%で、業者は3.8%でした(図表4-63)。 空き家の管理は、およそ9割が所有者とその親族の手で行われています。 自分で管理することは、特別な選択ではなく、調査では多数派の形です。
居住地からの所要時間
| 所有世帯の居住地からの所要時間(片道) | 割合 |
|---|---|
| 徒歩圏内 | 35.8% |
| 車・電車などで1時間以内 | 40.8% |
| 車・電車などで1時間超~3時間以内 | 13.0% |
| 車・電車などで3時間超 | 10.4% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-142(総数)
所有世帯の居住地から空き家までの所要時間は、徒歩圏内が35.8%、車・電車などで1時間以内が40.8%で、合わせて1時間以内が8割弱でした(図表4-142)。 所要時間が1時間以内であれば、日帰りで1回の訪問を組めると考えられます。 3時間超の空き家は10.4%で、この場合は帰省などの用事に合わせて訪問を組む形になります。
管理をする上での課題
| 管理をする上での課題 | 割合 |
|---|---|
| 管理の作業が大変 | 31.7% |
| 課題はない | 30.5% |
| 住宅を利用する予定がないので管理しても無駄になる | 27.1% |
| 管理費用の負担が大きい | 22.5% |
| 遠方に住んでいるので往訪が困難 | 21.6% |
| 管理を頼める人や業者がいない | 5.9% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-79(複数回答)
管理をする上での課題は、「管理の作業が大変」が31.7%で最も多く、「遠方に住んでいるので往訪が困難」が21.6%でした(図表4-79、複数回答)。 作業が大変だと感じる理由の一つは、行くたびに何をするかを考え直していることにあると考えられます。 やることを手順として固定しておくと、訪問のたびに判断する量が減り、見落としも減ります。
空家法第5条
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
空家法第5条は、所有者又は管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めることを求めています。 条文に、管理の回数や作業の内容の定めはありません。 何をもって適切な管理とするかは所有者が決めることになるため、本記事では、調査で多くの管理者が行っている作業を、1回の訪問の手順に組み直しました。
訪問の前に用意するもの
| 持ち物 | 用途 |
|---|---|
| 鍵 | 玄関のほか、勝手口・物置・雨戸の鍵も合わせて持つ。合鍵の場所を家族と共有しておく |
| 懐中電灯 | 電気を止めている家では、昼間でも押し入れ・天井裏・床下の点検口が暗い |
| 軍手・ゴム手袋・マスク | ほこり・カビ・虫の死骸に触れる作業に使う |
| ごみ袋 | 郵便物・チラシ、落ち葉、敷地内に捨てられたごみを持ち帰る |
| ほうき・ちりとり・雑巾・バケツ | 外回りと室内の簡単な清掃。家に置いておく場合は、湿らないよう乾かしてしまう |
| 剪定ばさみ・鎌 | 道路や隣地に出た枝と草を切る。高い枝は無理に切らず、次回の作業に回す |
| 飲料水と持参する水 | 水道を止めている家では、排水口に注ぐ水を持参する。夏は飲料水を忘れない |
| スマートフォン | 前回と同じ位置から写真を撮る。異変があれば日付入りで残す |
| 点検表 | やることを順に並べた紙。前回の記入を見ながら、同じ順で確認する |
| 前回の写真 | 外壁のひび、天井のしみなど、前回との違いを比べるために使う |
訪問は日中に組みます。明るいうちの方が傷みを見つけやすく、近所の人から見ても誰が来ているか分かるためです。 一人で行く場合は、行き先と戻る時刻を家族に伝えておきます。 屋根には上りません。屋根と2階の外壁は、地上からスマートフォンのズームで撮り、前回の写真と比べます。 台風・大雪のあとに行く場合は、落ちた瓦やガラスを踏まないよう、底の厚い靴を履きます。
1回の訪問でやることの手順
手順は、家に入る前(外回り)、家の中、帰る前の3つに分けます。 最初に窓を開けて最後に閉める順にすると、家の中の作業をしている間がそのまま換気の時間になります。 調査で管理者が行っている作業の割合(図表4-65、複数回答)を、各手順に添えました。
家に入る前(外回り)
- 道路側から建物の全体を見る。屋根の瓦のずれ、外壁のひびやはがれ、雨樋の外れと詰まり、塀や門扉の傾きを、前回の写真と同じ位置から撮って比べます。
- 郵便受けを空にする。郵便物とチラシを回収し、自治体や税の通知は持ち帰って開封します。郵便受けがあふれた状態は、人がいないことを外に示すことになります。
- 敷地を一周する。草の伸び、落ち葉、敷地内に捨てられたごみ、動物の侵入の跡を見ます。道路や隣地に出た枝と草は切ります。隣地から伸びてきた枝の扱いは隣の家から伸びてきた枝は切ってよいのか。民法第233条の定めにまとめています。
- 雨樋の受け口と排水ますの落ち葉を取る。詰まると雨水が外壁を伝い、傷みの原因になります。
家の中
- 玄関を開けたら、先に各部屋の窓を開ける。向かい合う窓を開けると風が通ります。雨戸があれば開けて、ガラスの割れと鍵のかかり具合を見ます。
- 各蛇口で水を流す。台所・洗面・浴室・トイレの順に水を流し、最後に排水口にも水を流します。排水口の下には水をためて下水の臭いと虫を止める部分があり、使わないと減っていくためです。水道を止めている家では、持参した水を各排水口に注ぎます。蛇口を閉めた状態で水道メーターが回っていれば、どこかで漏れていると考えられます。水回りの変化の順番は空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかにまとめています。
- 天井・壁・床を順に見る。天井のしみ(雨漏りの跡)、壁と押し入れのカビ、畳の湿り、床のきしみ、動物のふんや足跡を見ます。前回なかったしみが出ていれば、その上の屋根か外壁に原因があると考えられます。
- 設備を確かめる。電気を通している家ではブレーカーと分電盤の焦げ跡、ガスは元栓が閉まっていることを見ます。寒い地域では、給湯器と配管の水抜きが要る場合があるため、機器の取扱説明書に従います。
- 簡単な清掃をする。ほこりと虫の死骸を取り、ごみは持ち帰ります。清掃は傷みを見つける作業を兼ねるため、床と窓際を中心にします。
帰る前
- 開けた順の逆に窓と雨戸を閉める。玄関に戻るまでに、各部屋の鍵がかかっているかを一つずつ見ます。
- 点検表に記入する。各手順に、異変の有無と、あれば場所を書きます。写真は前回と同じ位置のものを残します。
- 近所にあいさつをする。顔を合わせられたときは、次に来る予定と連絡先を伝えておきます。頼み方の詳細は近所の人に空き家を見てもらうときの頼み方と限界にまとめています。
| 手順 | 対応する調査の作業 | 行っている世帯の割合 |
|---|---|---|
| 敷地を一周する・枝と草を切る | 外回りの清掃、草取り、剪定など | 79.5% |
| 窓と雨戸を閉め、鍵を見る | 戸締まりの確認 | 74.9% |
| 先に窓を開け、最後に閉める | 住宅の通風・換気 | 66.9% |
| 郵便受けを空にする | 郵便物、チラシなどの整理・処分 | 57.0% |
| 簡単な清掃をする | 住宅内の清掃 | 55.4% |
| 台風・大雪のあとの臨時の訪問 | 台風、地震などの後の見回り | 49.3% |
| 天井・壁・床を順に見る | 傷み、雨漏りなどのチェック・修繕 | 48.3% |
| 各蛇口で水を流す | 水回りなどの点検・通水 | 43.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65(管理者がいる空き家、複数回答)
管理者が行っている作業は、外回りの清掃・草取り・剪定が79.5%、戸締まりの確認が74.9%、住宅の通風・換気が66.9%で上位でした(図表4-65、複数回答)。 一方で、傷み・雨漏りなどのチェック・修繕は48.3%、水回りなどの点検・通水は43.3%と、半数に届きません。 外回りと戸締まりは多くの管理者が行っていますが、家の中の傷みと水回りは手が回っていない作業です。 自分で管理する場合は、この2つを手順に入れておくことが、業者の管理との差を小さくする要点になると考えられます。
所要時間は、家の大きさ、庭の広さ、草の伸び方で変わります。 はじめの訪問で、手順ごとにかかった時間を点検表に書き留めておくと、次回から訪問の計画が立てられます。 草取りと剪定は季節で時間が大きく変わるため、夏の訪問は外回りに時間を多く見ておきます。
訪問の時期と回数の決め方
| 管理の頻度 | 割合 | 構造上の不具合が生じていた空き家 |
|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 17.7% | 15.3% |
| 週に1~数回 | 19.1% | 16.3% |
| 月に1~数回 | 34.0% | 17.5% |
| 年に1~数回 | 27.6% | 24.3% |
| 数年に1回 | 1.6% | 33.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-67(管理者がいる空き家)・図表4-58
管理の頻度は、月に1~数回が34.0%で最も多く、月に1回以上を合わせると約7割でした(図表4-67)。 構造上の不具合が生じていた空き家の割合は、月に1回以上の世帯で15.3~17.5%、年に1~数回で24.3%、数年に1回で33.3%です(図表4-58)。 この表は頻度が低いから傷んだという因果を示すものではありませんが、回数を減らすほど、1回の訪問で見る項目を落とせなくなります。 頻度と傷みの関係は空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係にまとめています。
定期の訪問とは別に、台風・大雨・大雪のあとに臨時の1回を入れます。 台風、地震などの後の見回りをしている世帯は49.3%でした(図表4-65)。 雨の翌日に行くと、雨漏りのしみと雨樋の詰まりを見つけやすくなります。 台風の前にしておくことは台風の前に、空き家でやっておくことにまとめています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65
調査結果のまとめ
- 空き家の主な管理者は、所有者または所有者と同居している親族が76.8%、同居していない親族が13.5%で、業者は3.8%でした(図表4-63)
- 所有世帯の居住地から空き家までの所要時間は、徒歩圏内が35.8%、車・電車などで1時間以内が40.8%で、合わせて1時間以内が8割弱です(図表4-142)
- 管理をする上での課題は「管理の作業が大変」が31.7%で最も多く、「遠方に住んでいるので往訪が困難」は21.6%でした(図表4-79)
- 空家法第5条は空家等の適切な管理に努めることを求めていますが、回数や作業の内容の定めはありません
- 管理者が行っている作業は外回りの清掃79.5%、戸締まりの確認74.9%、通風・換気66.9%が上位で、傷み・雨漏りのチェックは48.3%、水回りの点検・通水は43.3%と半数に届きません(図表4-65)
- 管理の頻度は月に1~数回が34.0%で、構造上の不具合が生じていた空き家は月に1回以上で15.3~17.5%、年に1~数回で24.3%でした(図表4-67・4-58)
自分で空き家を管理する場合は、持ち物と手順を先に決め、外回り・家の中・帰る前の順で、毎回同じ点検表に記入するのが要点です。 多くの管理者が行っている外回りと戸締まりに、手が回りにくい家の中の傷みの確認と通水を加え、台風・大雨のあとに臨時の1回を入れると、1回の訪問で傷みの兆しを拾える組み方になります。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表4-58・4-63・4-65・4-67・4-79・4-142
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、主な管理者・所要時間・腐朽・破損の状態は空き家の戸数、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家、課題は空き家を所有する世帯について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。