空き家の3000万円控除に必要な書類と、
取り寄せ先
取り寄せ先
相続した空き家を売ったときの3000万円の特別控除は、確定申告書に財務省令で定める書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法第35条第12項)。その書類を列挙しているのが租税特別措置法施行規則第18条の2第2項です。中でも取り寄せに時間がかかるのが、家屋の所在地の市区町村長が確認事項を記載した書類、いわゆる被相続人居住用家屋等確認書です。令和6年度の交付件数は16,755件でした。売り方の3つの型ごとに要る書類と、それぞれの取り寄せ先を条文で整理しました。
書類の根拠
確定申告書への添付が条件
相続した家を売ったときの3000万円の特別控除は、租税特別措置法第35条第3項が定めています。 控除を受けるための手続きは租税特別措置法第35条第12項にあります。
租税特別措置法第35条第12項
第一項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨その他の財務省令で定める事項の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
出典:租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第12項
条文は「財務省令で定める書類」としか書いていません。その中身を列挙しているのが、財務省令である租税特別措置法施行規則第18条の2第2項です。 書類の名前と内容は、この規則の側で決まります。 控除の要件そのものは空き家の3000万円特別控除。使える条件を1つずつ確認するに、 期限は空き家の3000万円控除はいつまで使えるか。期限と3年ルールにまとめています。
添付がなかった場合
租税特別措置法第35条第13項は、確定申告書の提出がなかった場合や、記載または添付がない申告書を提出した場合でも、 やむを得ない事情があると税務署長が認めるときは、記載をした書類と財務省令で定める書類の提出があった場合に限り適用できるとしています。 書類が間に合わなかったときの受け皿はありますが、「やむを得ない事情」の判定は条文に書かれていません。 申告の前に書類をそろえるのが前提です。
出典:租税特別措置法第35条第13項
売り方ごとの書類一覧
共通する書類
租税特別措置法第35条第3項は、対象になる譲渡を3つの型に分けています。 第1号は家屋を耐震基準に適合させて敷地とともに売る型、第2号は家屋を取り壊して敷地を売る型、 第3号は売ったあと翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しをする型です。 租税特別措置法施行規則第18条の2第2項は、この型ごとに書類を定めていますが、次の4つは3つの型に共通します。
- 譲渡所得の金額の計算に関する明細書
- 登記事項証明書その他の書類。相続または遺贈で取得したこと、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物でないことを明らかにするもの
- 家屋の所在地の市町村長または特別区の区長が確認事項を記載した書類(次の節で扱います)
- 売買契約書の写しその他の書類。譲渡の対価の額が1億円以下であることを明らかにするもの
出典:租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号)第18条の2第2項第2号イ(1)(2)(3)(5)、同号ロ(1)から(4)まで、同号ハ(1)から(5)まで
売り方で変わる書類
| 売り方の型 | 共通の4つに加えて要る書類 |
|---|---|
| 第1号:家屋を耐震基準に適合させて売る | 家屋が耐震基準に適合する旨を証する書類 |
| 第2号:家屋を取り壊して敷地を売る | 追加の書類なし。市区町村長の確認事項に、取壊しの時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないこと、取壊しから譲渡まで建物の敷地に供されていないことが加わる |
| 第3号:売ったあとに買主が耐震改修または取壊しをする | 耐震基準に適合する旨を証する書類、または登記事項証明書その他の書類で、譲渡の翌年2月15日までに家屋の全部が取り壊され、除却され、または滅失したことを証するもの |
出典:租税特別措置法施行規則第18条の2第2項第2号イ(4)、ロ(3)、ハ(3)(4)、租税特別措置法第35条第3項第1号から第3号まで
第1号と第3号で要る「耐震基準に適合する旨を証する書類」について、規則は「国土交通大臣が財務大臣と協議して定める耐震基準に適合する家屋である旨を証する書類」と書いています。 どの書類がこれに当たるかは、売買契約の前に税務署で確かめられます。 取り壊して売る第2号の型では、この書類は要りません。取り壊したあとの固定資産税は 更地にすると固定資産税はいくら上がるのか。取り壊す前に確かめる数字にまとめています。
市区町村長の確認書類
確認される事項
規則が「書類」の名前を定めているわけではありません。定めているのは、誰が、何を確認した旨を記載するかです。
租税特別措置法施行規則第18条の2第2項
(3)当該対象譲渡をした被相続人居住用家屋(法第三十五条第三項第一号に規定する被相続人居住用家屋をいう。(3)から(5)までにおいて同じ。)又は被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等(同号に規定する被相続人居住用家屋の敷地等をいう。(3)及び(5)において同じ。)の所在地の市町村長又は特別区の区長の次に掲げる事項(同条第五項に規定する居住の用が同項に規定する対象従前居住の用(以下この号において「対象従前居住の用」という。)以外の居住の用である場合には、(i)、(ii)及び(vii)に掲げる事項)を確認した旨を記載した書類
出典:租税特別措置法施行規則第18条の2第2項第2号イ(3)の冒頭部分
家屋を耐震基準に適合させて売る第1号の型で、市区町村長が確認する事項は次のとおりです。
- 相続の開始の直前において、被相続人がその家屋を居住の用に供しており、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと
- 家屋と敷地が、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと
- 相続または遺贈により家屋と敷地を取得した相続人の数
被相続人が老人ホームなどに入所していた場合(規則の語では「対象従前居住の用」)は、入所により居住の用に供されなくなった時から相続の開始の直前まで、 家屋が被相続人の物品の保管などに使われていたこと、事業・貸付け・他人の居住に使われていないこと、 被相続人が主として居住していた家屋であることの確認が加わります。
出典:租税特別措置法施行規則第18条の2第2項第2号イ(3)(i)から(vii)まで
3つ目の「相続人の数」は、控除額に関わります。租税特別措置法第35条第4項は、取得した相続人の数が3人以上であるときの控除額を2,000万円としています。 計算の全体は空き家を売ったときの税金。譲渡所得の計算と使える特例にまとめています。
出典:租税特別措置法第35条第4項
窓口の探し方
確認する主体は、規則の定めどおり家屋の所在地の市町村長または特別区の区長です。売主の住所地ではなく、家のある自治体に申請します。 どの課が担当するかは規則に書かれておらず、自治体ごとに決まっています。 東京都住宅政策本部の「区市町村による空き家に関する支援制度」(令和7年度版)を見ると、確認書の交付を取組として挙げている自治体の担当は、 環境課の空き家等対策係であったり、都市計画・住宅課の住宅係であったりと、自治体ごとに違います。 自治体のサイトで「被相続人居住用家屋等確認書」を検索するか、空き家対策の担当窓口に問い合わせると担当課が分かります。
出典:租税特別措置法施行規則第18条の2第2項第2号イ(3)、東京都住宅政策本部「区市町村による空き家に関する支援制度」(令和7年度版)
確認の申請に何を添えるかは、自治体が定める様式と案内で確かめられます。 確認事項の1つ目と2つ目は、相続の前後の居住と使用の実態に関するものです。 相続のあとに家を貸したり、片付けの間に誰かが住んだりすると、2つ目の事項が確認できなくなります。
交付の件数
国土交通省・総務省の調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)には、 この確認書の交付実績が年度ごとに載っています。
| 年度 | 交付件数 |
|---|---|
| 平成28年度 | 4,451件 |
| 令和2年度 | 9,758件 |
| 令和4年度 | 13,014件 |
| 令和6年度 | 16,755件 |
| 合計(平成28年度から令和6年度まで) | 93,897件 |
出典:国土交通省・総務省調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)「7.空き家等の譲渡所得3,000万円控除に係る確認書の交付実績」。平成29年度から令和元年度、令和3年度、令和5年度は省略
交付件数は年々増えています。制度の期限は令和9年12月31日までの譲渡です(租税特別措置法第35条第3項)。
書類ごとの取り寄せ先
入手先の一覧
| 書類 | 取り寄せ先 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 登記所(法務局)。手数料を納付して交付を請求する | 不動産登記法第119条第1項 |
| 市区町村長の確認書類 | 家屋の所在地の市区町村(特別区は区) | 租税特別措置法施行規則第18条の2第2項 |
| 売買契約書の写し | 売買のときに手元に残る契約書 | 同項第2号イ(5) |
| 耐震基準に適合する旨を証する書類 | 規則は書類の発行者を定めていない。どの書類が当たるかは税務署で確かめられる | 同項第2号イ(4) |
| 取壊し等を証する書類(第3号の型) | 登記事項証明書その他の書類。家屋の滅失の登記が済んでいれば登記所で取れる | 同項第2号ハ(4) |
| 譲渡所得の金額の計算に関する明細書 | 確定申告の際に作成する | 租税特別措置法第35条第12項 |
出典:租税特別措置法第35条第12項、租税特別措置法施行規則第18条の2第2項、不動産登記法(平成16年法律第123号)第119条第1項
登記事項証明書の請求
不動産登記法第119条第1項
何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
出典:不動産登記法第119条第1項
登記事項証明書は所有者でなくても請求できます。不動産登記法第119条第5項は、法務省令で定める場合を除き、 物件の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対しても請求できるとしています。 家が遠方にあっても、近くの登記所で取れます。 相続登記が済んでいないと、登記事項証明書には被相続人の名前が残ったままです。 登記事項証明書で「相続により取得したこと」を明らかにするなら、相続登記を済ませておく形になります。 規則は「登記事項証明書その他の書類」としているため、ほかの書類で明らかにできる場合があるかどうかは税務署で確かめられます。 相続登記の手順は実家の名義変更。必要な書類と、自分でやる場合の手順にまとめています。
出典:不動産登記法第119条第1項・第5項
順番としては、相続登記を済ませて登記事項証明書を取り、市区町村に確認書類を申請し、売買契約書の写しをそろえ、確定申告で計算明細書を作る流れになります。 市区町村の確認は相続の前後の使用実態を対象にするため、相続のあとに家をどう使ったかが書類の可否を左右します。 売るまでの間に家を貸さず、誰も住まない状態を保つことが、2つ目の確認事項を満たす前提です。
調査結果のまとめ
- 3000万円の特別控除は、確定申告書に財務省令で定める書類を添付した場合に限り適用されます(租税特別措置法第35条第12項)。書類の一覧は租税特別措置法施行規則第18条の2第2項にあります
- 3つの売り方に共通する書類は、譲渡所得の計算明細書、登記事項証明書等、市区町村長の確認書類、売買契約書の写し等の4つです
- 家屋を耐震基準に適合させて売る型では耐震基準に適合する旨を証する書類が加わります。取り壊して売る型にはこの書類は要りません
- 市区町村長が確認するのは、相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと、相続から譲渡まで事業・貸付け・居住に使われていないこと、相続人の数です。老人ホーム等に入所していた場合は確認事項が増えます
- 確認書類の申請先は家屋の所在地の市区町村です。担当課は自治体ごとに違います
- 登記事項証明書は登記所(法務局)で、所在地以外の登記所でも請求できます(不動産登記法第119条第1項・第5項)
- 確認書の交付件数は令和6年度に16,755件、平成28年度からの合計は93,897件でした(令和7年3月31日時点の国土交通省・総務省調査)
書類の中で、相続人の側で準備の順番を決められるのは登記事項証明書と確認書類です。 相続のあとに家を貸したり住んだりすると、確認事項が満たせなくなります。 売ると決めるまでの間も、誰も住まない状態を保ったまま管理を続けることが、書類の前提になります。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第3項・第4項・第12項・第13項
租税特別措置法施行規則(昭和32年大蔵省令第15号)第18条の2第2項
不動産登記法(平成16年法律第123号)第119条第1項・第5項
国土交通省・総務省調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)
東京都住宅政策本部「区市町村による空き家に関する支援制度」(令和7年度版)
条文は2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認しました。確認書類の申請に添える書類と担当課は、家屋の所在地の市区町村で確かめられます。耐震基準に適合する旨を証する書類に当たるものは、税務署で確かめられます。