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貸す・活用

空き家を貸したい。
個人が貸すときの手順と費用

空き家を貸すときに先に決めるのは、契約の型です。借地借家法には、期間が満了しても貸主の側から簡単には終わらせられない普通の建物賃貸借(第26条第1項・第28条)と、書面で契約し、あらかじめ書面で説明すれば更新のない定期建物賃貸借(第38条第1項・第3項)の2つの型があります。戻って住む予定があるかどうかで、選ぶ型が変わります。貸主には使用に必要な修繕をする義務があり(民法第606条第1項)、貸している間も固定資産税は所有者に課されます(地方税法第343条第1項)。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)では、賃貸または売却する意向の世帯が挙げた課題は「住宅の傷み」が43.3%で最も多く、空き家を解消した世帯の29.2%が不動産事業者に借り手や買い手を探してもらっていました。確かめること・契約の型・手順・費用の順に、条文と調査で整理しました。

貸す前に確かめる3つのこと

所有者の数と、必要な同意

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」では、空き家の所有者の数は「1人(単独所有)」が84.6%、「2人以上(共有)」が14.0%でした(図表4-31)。 共有の場合、民法第252条第4項は、持分の価格の過半数で設定できる賃借権の期間に上限を定めています。

民法第252条第4項

共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

出典:民法(明治29年法律第89号)第252条第4項(冒頭部分)

同項の第3号は、建物の賃借権等の期間を3年としています。 3年を超えない期間の契約はこの項の範囲ですが、それを超える契約や、更新によって長く続く契約はこの項の範囲に収まらないため、貸す前に他の共有者の同意を得ておく必要があると考えられます。 共有で起きることは実家を兄弟の共有名義にすると、あとで何が起きるかにまとめています。

出典:民法第252条第4項第3号/国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-31

家の状態と、残っている家財

今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯が挙げた課題は、「住宅の傷み」が43.3%で最も多く、次いで「借り手・買い手の少なさ」が40.3%、「家財などの処理」が37.4%、「設備や建具の古さ」が34.0%、「リフォーム費用」が21.4%でした(図表4-123)。 貸す前に片づけるものと、直すものを分けておく必要があります。 貸主は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います(民法第606条第1項)。 貸したあとに雨漏りや設備の故障が出れば直すのは貸主の側なので、貸す前の点検は費用の見積もりでもあります。 片づけの順番は実家の片付けを、どの順番で進めるかにまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-123/民法第606条第1項

自分で貸すか、不動産会社に頼むか

令和5年10月1日から令和6年12月1日までに空き家を解消した世帯が実施した内容は、「特に何もしていない」が38.7%、「不動産事業者に借り手や買い手を探してもらった」が29.2%、「リフォームした」が19.3%、「専門家に相談した」が4.7%、「空き家バンクに登録した」が3.3%でした(図表4-110)。 主な管理者が「不動産業者、建設会社、管理専門業者など」である空き家は全体で3.8%ですが、「貸家用の空き家」では13.9%と高くなっています(図表4-64)。 借り手を探すところから管理まで不動産会社に頼む道と、借り手探しだけを頼む道があり、頼む範囲で報酬の決まり方が変わります。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-110・4-64

契約の2つの型

普通の建物賃貸借

借地借家法第26条第1項は、期間の定めがある建物の賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。 貸主からの通知には、借地借家法第28条が正当の事由を求めています。 貸主と借主が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、建物の現況、立退料の申出を考慮して正当の事由があると認められる場合でなければ、貸主は更新を拒めません。 借地借家法第29条第1項は、期間を1年未満とする建物の賃貸借を期間の定めがない賃貸借とみなしています。 これらの規定より借主に不利な特約は無効です。

借地借家法第30条

この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

出典:借地借家法(平成3年法律第90号)第26条第1項・第28条・第29条第1項・第30条

定期建物賃貸借

借地借家法第38条第1項は、期間の定めがある建物の賃貸借で、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。 この場合には第29条第1項は適用されないため、1年未満の期間でも定められます。

借地借家法第38条第1項

期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。

出典:借地借家法第38条第1項

書面での契約に加えて、契約の前に貸主が行う説明が要件になっています。借地借家法第38条第3項の定めです。

借地借家法第38条第3項

第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

出典:借地借家法第38条第3項

この説明をしなかったときは、借地借家法第38条第5項により、契約の更新がないこととする旨の定めは無効になります。 契約書に書いてあるだけでは足りず、契約書とは別の書面を交付して説明することが求められています。 期間が1年以上の定期建物賃貸借では、借地借家法第38条第6項により、貸主は期間の満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了により終了する旨を借主に通知しなければ、その終了を借主に対抗できません。 通知期間を過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月を経過した後に終了を対抗できます。 一方で、床面積が200平方メートル未満の居住用の建物では、借地借家法第38条第7項により、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情で借主が生活の本拠として使えなくなったときは、借主から解約の申入れができ、申入れの日から1か月で終了します。

出典:借地借家法第38条第5項・第6項・第7項

2つの型の比較

項目普通の建物賃貸借定期建物賃貸借
契約の方法定めなし公正証書による等書面(借地借家法第38条第1項)
契約前の説明定めなし更新がなく期間の満了で終了する旨を記載した書面を交付して説明(借地借家法第38条第3項)。しなければ更新しない定めは無効(同条第5項)
期間の満了1年前から6か月前までに通知がなければ同一条件で更新(借地借家法第26条第1項)。貸主の通知には正当の事由が要る(同法第28条)更新なし。期間1年以上なら貸主は1年前から6か月前までに終了の通知(借地借家法第38条第6項)
1年未満の期間期間の定めがないものとみなす(借地借家法第29条第1項)定められる(借地借家法第38条第1項)
借主からの中途解約契約の定めによる200平方メートル未満の居住用で、やむを得ない事情があれば申入れから1か月で終了(借地借家法第38条第7項)

出典:借地借家法第26条第1項・第28条・第29条第1項・第38条第1項・第3項・第5項・第6項・第7項

戻って住む予定がある、または売る時期を決めている場合は、終わる日が決まっている定期建物賃貸借が向いています。 長く貸し続ける前提なら、普通の建物賃貸借でも差し支えないと考えられます。 海外赴任や転勤で貸す場合の比較は海外赴任のあいだ、家をどうするか。空き家管理と賃貸の比較にまとめています。

貸すまでの手順

  1. 所有者と同意の確認。登記の名義と所有者の数を確かめ、共有なら他の共有者の同意を文書で残します(民法第252条第4項)。相続した家で登記が済んでいない場合は、先に名義変更を進めます
  2. 家財の整理と現況の確認。残す物と処分する物を分け、雨漏り・水回り・設備の動作を確かめます。賃貸または売却の課題で「家財などの処理」は37.4%、「設備や建具の古さ」は34.0%でした(図表4-123)
  3. 修繕の範囲と費用の確定。使用に必要な修繕は貸主の義務です(民法第606条第1項)。貸す前に直す部分と、貸したあとに求められたら直す部分を分けて見積もります
  4. 貸し方と相手の決定。不動産会社に頼むか、自治体の空き家バンクに登録するか、知人に貸すかを決めます。頼む場合は、借り手探しだけか管理まで含むかで契約が変わります
  5. 契約の型の決定と書面の作成。定期建物賃貸借なら、書面での契約と、契約前の書面での説明が要件です(借地借家法第38条第1項・第3項)
  6. 敷金と引き渡し。敷金を受け取る場合、賃貸借が終了して建物の返還を受けたときは、借主の債務の額を控除した残額を返還します(民法第622条の2第1項)
  7. 終了時の原状回復。借主が負うのは、通常の使用による損耗と経年変化を除いた損傷の原状回復です(民法第621条)。通常の損耗の分は貸主の負担になります

出典:民法第252条第4項・第606条第1項・第621条・第622条の2第1項/借地借家法第38条第1項・第3項/国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-123

民法第621条

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

出典:民法第621条

かかる費用と、その決まり方

貸す前にかかるもの

最近5年間にリフォーム工事を行った空き家は21.5%で、「貸家用の空き家」では約35%と他の種類より高くなっています(図表4-83・4-84)。 工事の内容は「台所、トイレ、風呂、洗面所の改修工事」が43.6%、「天井・壁・床などの内装工事」が39.4%、「屋根の葺き替え工事、防水改修工事」が32.6%、「外壁改修工事」が31.1%でした(図表4-90)。 工事の費用は家の状態と範囲で決まるため、調査には金額の集計がありません。 業者の見積もりで確かめます。 家財の処分費用は、量と処分の方法で決まります。 料金の決まり方は実家の片付けを業者に頼むと、料金は何で決まるのかにまとめています。

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-83・4-84・4-90

貸している間に続くもの

固定資産税は固定資産の所有者に課されるため(地方税法第343条第1項)、貸している間も納めるのは所有者です。 使用に必要な修繕の費用も貸主の負担です(民法第606条第1項)。 借主が貸主の負担に属する必要費を支出したときは、貸主に対して直ちに償還を請求できます(民法第608条第1項)。 不動産会社に借り手探しや管理を頼む場合の報酬は、結ぶ契約の内容で決まります。 額と支払う時期を契約の前に確かめます。 家賃は収入として課税の対象になり、申告の要否と額は収入と経費で決まります。 年間の維持管理に要する費用は、「貸家用の空き家」では5万円未満が合わせて約6割でした(図表4-75)。 貸している間の管理の多くは借主が行うため、空けたまま持つ場合より所有者の作業は減ります。

出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第343条第1項/民法第606条第1項・第608条第1項/国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-75

終わるときにかかるもの

通常の使用による損耗と経年変化の分の修繕は、民法第621条により借主の原状回復の範囲に入らないため、次に貸すか住むかするための修繕は貸主の負担です。 敷金から差し引けるのは、賃貸借に基づいて生じた借主の債務の額です(民法第622条の2第1項)。 普通の建物賃貸借を貸主から終わらせる場合、借地借家法第28条は、明渡しの条件として財産上の給付をする旨の申出を正当の事由の考慮要素に挙げています。 いわゆる立退料で、額は定められていません。

出典:民法第621条・第622条の2第1項/借地借家法第28条

調査結果のまとめ

貸すかどうかを決める前に、戻る予定の有無で契約の型を決め、貸す前に直す範囲を見積もることが、条文と調査から導ける順番です。 貸さずに持ち続ける場合に最小限やることは売れない・貸せない空き家をどうするか。持ち続ける場合の最小限にまとめています。

誰も住まないご実家を、毎月みまもります

貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
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根拠にした資料
借地借家法(平成3年法律第90号)第26条第1項・第28条・第29条第1項・第30条・第38条第1項・第3項・第5項・第6項・第7項
民法(明治29年法律第89号)第252条第4項・第606条第1項・第608条第1項・第621条・第622条の2第1項
地方税法(昭和25年法律第226号)第343条第1項
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-31・4-64・4-75・4-83・4-84・4-90・4-110・4-123
条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。調査の割合は不詳を除いて集計された値で、賃貸・売却の課題は今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯について、解消のために実施した内容は令和5年10月1日から令和6年12月1日までに空き家でなくなった世帯について集計されています。