空き家を換気しないとどうなるか。
湿気が木部の傷みにつながる仕組み
湿気が
空き家を締め切ったままにすると、湿気が逃げにくくなり、カビやにおいにとどまらず、木部が湿った状態が続くことで腐朽につながると考えられます。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、所有世帯の管理面での心配事は「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多い回答です。一方で、管理者がいる空き家のうち「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%で、貸家用の空き家では47.4%でした。ただし、換気だけで防げない傷みもあり、訪問のたびに風を通し、同時に湿りの原因を見ることが要点です。湿気が傷みにつながる仕組み、条文と国の資料の記載、調査の数字、換気の手順を整理しました。
締め切った家で起きること
湿気がこもる理由
人が住んでいる家では、窓や玄関の開け閉めと換気扇の使用によって、室内の空気が入れ替わります。 空き家ではこの入れ替わりが減るため、地面や壁から入る湿気、雨の日の湿気が室内にとどまりやすくなると考えられます。 空気が動きにくい押し入れ、北側の壁、床下は、とくに湿気がたまりやすい場所と考えられます。
カビの先にある木部の傷み
最初に現れやすいのは、壁紙や畳のカビと、室内のにおいと考えられます。 ここで止まらず、木部が湿った状態のまま長く続くと、木材を分解する菌が働きやすくなり、腐朽につながると考えられます。 木材は濡れてもすぐに腐るわけではなく、問題になるのは、乾かない状態が続くことと考えられます。 換気の役割は、室内にこもった湿気を外へ出すことにあると考えられます。床下や壁の中の木部が、訪問時の短い換気で乾くとは限りません。 木材が腐朽する条件と数値は空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかにまとめています。
換気に関する条文と国の資料
空家法第5条
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
空家法第5条は、所有者又は管理者に、空家等の適切な管理に努めることを求めています。 条文に、換気の回数や方法の定めはありません。
国土交通省住宅局の改正法の概要[2]は、国が告示する「空家の管理指針」の内容の例として、定期的な換気、通水、庭木伐採を挙げています。 この概要の記載は「定期的な」までで、回数は書かれていません。
出典:国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2](令和5年6月14日公布・令和5年12月13日施行)
換気と傷みの実態
通風・換気をしている世帯の割合
| 空き家の種類 | 住宅の通風・換気をしている割合 |
|---|---|
| 総数 | 66.9% |
| 使用目的のない空き家 | 64.4% |
| 貸家用の空き家 | 47.4% |
| 売却用の空き家 | 62.6% |
| 二次的住宅・別荘用の空き家 | 80.2% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65・図表4-66(管理者がいる空き家、複数回答)
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 管理者がいる空き家のうち「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%で、管理の内容の中で3番目に高い割合でした(図表4-65)。 種類別では、二次的住宅・別荘用の空き家が80.2%で高く、貸家用の空き家は47.4%でした(図表4-66)。 所有世帯の心配事では「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多い回答です(図表4-61)。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61(複数回答)
管理の頻度と傷みの関係
| 管理の頻度 | 構造上の不具合が生じていた | 不具合や腐朽・破損なし |
|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 15.3% | 40.5% |
| 週に1~数回 | 16.3% | 39.2% |
| 月に1~数回 | 17.5% | 35.2% |
| 年に1~数回 | 24.3% | 27.4% |
| 数年に1回 | 33.3% | 13.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-58
管理の頻度が低い空き家ほど「構造上の不具合が生じていた」割合は高く、年に1~数回で24.3%、数年に1回で33.3%でした(図表4-58)。数年に1回の区分は、管理者がいる世帯の1.6%にあたる小さな集団です(図表4-67)。 ただし、この調査に換気の有無と傷みを組み合わせた集計はなく、上の表は換気の効果を示すものではありません。 傷んだ家だから管理の足が遠のいた、という逆の向きも考えられます。 所要時間別では、構造上の不具合は徒歩圏内で24.2%、車・電車などで3時間超で8.6%と、近い家のほうが高い割合でした(図表4-59)。 居住世帯のない期間が20年以上の割合は「構造上の不具合が生じていた」空き家で約38%と、他の状態より高くなっています(図表4-51)。 傷みには、管理の頻度のほかに、空いている期間などの要因も関わっていると考えられます。 頻度と傷みの関係は空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係にまとめています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-51・図表4-59・図表4-67
換気の手順と限界
訪問のときの換気の手順
- 入る前と入った直後に記録する。窓を開ける前に、室内のにおいと、壁・畳の湿りを確かめます。換気をすると、においは分かりにくくなります。
- 風の入口と出口をつくる。向かい合う窓や、離れた2か所の窓を開けて、空気の通り道をつくります。
- 押し入れと収納の戸を開ける。閉じた場所に空気を通すため、押し入れ、クローゼット、洗面台の下の戸を開けます。
- 床下の換気口を外から見る。草や物でふさがれていないかを確かめます。
- 帰る前に閉め忘れを確かめる。窓を閉めて施錠し、押し入れの戸は開けたままにする方法があります。
雨の日や湿度が高い日は、外の空気も湿っているため、窓を開けても室内が乾きにくいと考えられます。訪問の日を選べる場合は、晴れて空気が乾いた日が向いています。 1回の訪問全体の手順は空き家を自分で管理する。1回の訪問でやることの手順にまとめています。
換気では防げない傷み
| 湿りの原因 | 見る場所 | 換気のほかに要る手当て |
|---|---|---|
| 雨漏り | 天井のしみ、押し入れの天井 | 屋根や外壁の修繕 |
| 配管の水漏れ | 台所・洗面の下、床の湿り | 配管の点検と修理 |
| 床下の湿気 | 床下の換気口、畳と床の湿り | 換気口の周りの片付け、専門業者の点検 |
雨漏りや水漏れが続く家では、窓を開けても水は入り続けます。 換気は湿気を抜く手段で、水の入口を止める手段ではありません。 調査でも「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」をしている世帯は48.3%で、通風・換気の66.9%を下回ります(図表4-65)。 窓を開ける訪問でも、傷みの確認が抜けている家があると考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65(管理者がいる空き家、複数回答)
調査結果のまとめ
- 締め切った空き家では湿気がとどまりやすく、木部が湿った状態が続くと腐朽につながると考えられます
- 空家法第5条は適切な管理に努めることを求めていますが、換気の回数や方法の定めはありません
- 国土交通省住宅局の概要[2]は、管理指針の内容の例として定期的な換気、通水、庭木伐採を挙げています
- 管理者がいる空き家で「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%で、貸家用の空き家では47.4%でした(図表4-65・4-66)
- 構造上の不具合が生じていた割合は、月に1~数回の管理で17.5%、年に1~数回で24.3%でした(図表4-58)。この数字は換気の効果を示すものではありません
換気をしない家で問題になるのは、カビだけでなく、湿った状態が続いて木部の傷みにつながると考えられることです。 訪問のたびに風を通すことに加えて、雨漏りや水漏れなどの湿りの原因を確かめることが、傷みを早く見つける手がかりになります。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-51・4-58・4-59・4-61・4-65・4-66・4-67
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2]
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。