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税金・制度

空家等対策特別措置法。
2023年の改正で何が変わったか

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)を改正する法律は、令和5年6月14日に公布され、令和5年12月13日に施行されました。所有者に直接関わる変更は2つです。特定空家等になる前の段階に「管理不全空家等」が新設され、指導と勧告の対象になったこと(空家法第13条)、そして勧告を受けると敷地の固定資産税の住宅用地の特例から外れること(地方税法第349条の3の2第1項)です。このほか、空家等活用促進区域、空家等管理活用支援法人、緊急代執行、財産管理人の選任請求が加わり、条番号も大きく動きました。改正前と改正後の条文を並べて整理しました。

改正の時期と全体像

公布と施行の日

改正法の正式名称は「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(令和5年法律第50号)です。 国土交通省住宅局の報道発表「「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」等を閣議決定」(令和5年11月17日)によると、 改正法は令和5年6月14日に公布され、施行期日を定める政令により令和5年12月13日に施行されました。

改正法の附則第1条は、施行日を「公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日」としており、政令で12月13日と定められた形です。

出典:国土交通省住宅局 報道発表(令和5年11月17日)、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)附則第1条

3本柱と所有者の責務

国土交通省の概要資料「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(概要[1]・概要[2])は、改正の内容を 「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除却等」の3本柱で整理しています。 背景として、使用目的のない空家が1998年の182万戸から2018年の349万戸へと約1.9倍に増え、2030年には470万戸と見込まれること、 改正前の法律が特定空家等への対応を中心にしていたため「特定空家になってからの対応は限界」であることが挙げられています。

出典:国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2](令和5年6月14日公布・令和5年12月13日施行と記載)。戸数は住宅・土地統計調査(総務省)による

所有者の責務も書き換えられました。改正前は「適切な管理に努める」だけでしたが、改正後は国や自治体の施策に協力する努力義務が加わっています。

改正前の空家法第3条

空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。

空家法第5条

空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。

出典:改正前の空家法第3条、空家法第5条。改正前の条文は令和5年法律第50号による改正前の版(平成27年5月26日施行)、改正後の条文は2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認した版

条番号の対照表

改正前と改正後の条番号

改正前の法律は第16条までで、改正後は第30条まであります。条が14本増えたため、特定空家等に対する措置は改正前の空家法第14条から空家法第22条へと番号が動きました。 国土交通省の「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十号)新旧対照条文」をもとに、主な条を並べました。

内容改正前改正後
空家等・特定空家等の定義改正前の空家法第2条空家法第2条
所有者等の責務改正前の空家法第3条空家法第5条(施策への協力を追加)
空家等対策計画改正前の空家法第6条空家法第7条(活用促進区域の定めを追加)
立入調査等改正前の空家法第9条空家法第9条(所有者等への報告徴収を追加)
管理不全空家等への指導・勧告(新設)空家法第13条
財産管理人の選任請求(新設)空家法第14条
活用の要請・建築基準法の特例(新設)空家法第16条・第17条
特定空家等に対する措置改正前の空家法第14条空家法第22条(緊急代執行を追加)
空家等管理活用支援法人(新設)空家法第23条から第28条まで
財政上・税制上の措置改正前の空家法第15条空家法第29条
過料改正前の空家法第16条空家法第30条(報告の拒否・虚偽を追加)

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十号)新旧対照条文」。改正後の条番号は2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認

古い資料の条番号の読み方

改正前の資料では、助言・指導、勧告、命令、代執行が「第14条」の各項として引かれています。 たとえば総務省行政評価局の代執行の事例集(平成27年度から29年度までの事例)には「空家法第14条第10項」の略式代執行という記述があり、これは改正後の空家法第22条第10項に当たります。 改正の前後で項の中身は変わっていないものが多いため、古い資料は条番号を読み替えれば使えます。

過料の定めも、改正前の空家法第16条から空家法第30条へ番号が変わりました。命令違反の過料は50万円以下のままで、 改正後は立入調査の拒否に加えて報告をしない、または虚偽の報告をした場合も20万円以下の過料の対象になりました。 過料の中身は空き家を放置すると罰則はあるのか。過料と行政代執行にまとめています。

出典:改正前の空家法第16条、空家法第30条

管理不全空家等の新設

指導と勧告の条件

改正前の法律が措置の対象にしていたのは、倒壊のおそれなどがある「特定空家等」だけでした。 改正後は、その手前の段階として、放置すれば特定空家等になるおそれのある空家等を「管理不全空家等」と定め、指導と勧告ができるようになりました。

空家法第13条第1項

市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。

空家法第13条第2項

市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。

出典:空家法第13条第1項・第2項

指導の基準になる「基本指針」にも変更があります。改正前の空家法第5条第2項が基本指針に定める事項は3つでしたが、 空家法第6条第2項には「所有者等による空家等の適切な管理について指針となるべき事項」が加わり、4つになりました。 国土交通省の概要[2]は、この管理指針の例として定期的な換気、通水、庭木の伐採を挙げています。

出典:改正前の空家法第5条第2項、空家法第6条第2項、国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2]

管理不全空家等には、特定空家等と違って命令と代執行の定めがありません。指導を受けたときの対応は 管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかに、 特定空家等との違いは「特定空家等」とは何か。当たる4つの状態と、そのあとに起きることにまとめています。

勧告が固定資産税に及ぶ仕組み

改正前は、勧告を受けた特定空家等の敷地だけが固定資産税の住宅用地の特例から外れていました。 改正後の地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地から除く土地として、特定空家等に加えて 空家法第13条第2項の規定により勧告がされた管理不全空家等の敷地を挙げています。 国土交通省の概要[1]はこれを「勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を解除」と説明しています。

住宅用地の特例は、200平方メートル以下の部分で価格の6分の1、それを超える部分で3分の1です。 外れたあとに払う額が何倍になるかは、条文の率だけでは決まりません。 税額の変わり方は「管理不全空家等」に指定されると、固定資産税はいくら上がるのかに、 どの年度から変わるかは固定資産税が6倍になるのはいつからか。賦課期日の考え方にまとめています。

出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[1]

活用の拡大と支援法人

空家等活用促進区域

空家法第7条第3項は、市町村が空家等対策計画の中に「空家等活用促進区域」と「空家等活用促進指針」を定めることができるとしています。 区域に定められるのは、中心市街地、地域再生拠点、地域住宅団地再生区域、歴史的風致の重点区域などです。 区域内では、計画作成市町村の長が所有者等に対して指針に定めた誘導用途に供するための措置を要請することができます(空家法第16条第1項)。

あわせて建築基準法の特例が置かれました。空家法第7条第6項は、敷地が幅員1.8メートル以上4メートル未満の道に2メートル以上接する建築物について、 接道の要件を緩める「敷地特例適用要件」を指針に定めることができるとしています。 国土交通省の概要[2]は、このほか用途規制の合理化と、市街化調整区域内の空家の用途変更許可における知事の配慮(空家法第18条第1項)を挙げています。

出典:空家法第7条第3項・第6項、第16条第1項、第17条、第18条第1項、国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2]

空家等管理活用支援法人

空家法第23条第1項は、市町村長がNPO法人、一般社団法人、一般財団法人、空家等の管理や活用を目的とする会社などを「空家等管理活用支援法人」に指定できるとしています。 支援法人の業務は空家法第24条に列挙されています。

空家法第24条

支援法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 空家等の所有者等その他空家等の管理又は活用を行おうとする者に対し、当該空家等の管理又は活用の方法に関する情報の提供又は相談その他の当該空家等の適切な管理又はその活用を図るために必要な援助を行うこと。
二 委託に基づき、定期的な空家等の状態の確認、空家等の活用のために行う改修その他の空家等の管理又は活用のため必要な事業又は事務を行うこと。
三 委託に基づき、空家等の所有者等の探索を行うこと。

出典:空家法第24条(第4号以下は省略)

支援法人は、所有者等の探索のために市町村長に所有者情報の提供を求めることができ、提供には本人の同意が要ります(空家法第26条第2項・第3項)。 また、空家等対策計画の作成や変更を市町村に提案すること(空家法第27条第1項)、財産管理人の選任請求を市町村長に要請すること(空家法第28条第1項)もできます。

出典:空家法第23条第1項、第26条第2項・第3項、第27条第1項、第28条第1項

財産管理人の選任請求

所有者が死亡して相続人が放棄した家や、所有者が分からない家について、市町村長が裁判所に財産管理人の選任を求められるようになりました。

空家法第14条第1項

市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第二十五条第一項の規定による命令又は同法第九百五十二条第一項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。

出典:空家法第14条第1項。同条第2項・第3項は、所有者不明建物管理命令、管理不全建物管理命令などの請求を定めています

国土交通省の概要[1]は、民法上は利害関係人だけが請求できるところを市町村長にも認めたものと説明しています。 相続放棄したあとに残る管理の義務は相続放棄しても、空き家の管理義務は残るのかにまとめています。

特定空家等の除却に関する変更

報告徴収と緊急代執行

改正前の空家法第9条第2項が認めていたのは立入調査だけでしたが、空家法第9条第2項は、所有者等に対して空家等に関する事項を報告させることを加えました。 報告をしない場合と虚偽の報告をした場合は、空家法第30条第2項の過料の対象です。

代執行には、命令の手続きを経るいとまがない場合の定めが新設されました。

空家法第22条第11項

市町村長は、災害その他非常の場合において、特定空家等が保安上著しく危険な状態にある等当該特定空家等に関し緊急に除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとる必要があると認めるときで、第三項から第八項までの規定により当該措置をとることを命ずるいとまがないときは、これらの規定にかかわらず、当該特定空家等に係る命令対象者の負担において、その措置を自ら行い、又は措置実施者に行わせることができる。

出典:空家法第9条第2項、第22条第11項、第30条第2項、改正前の空家法第9条第2項

費用の徴収も変わりました。所有者を確知できない場合の略式代執行について、改正前の空家法第14条第10項は「その者の負担において」とだけ書いていましたが、 空家法第22条第10項は、公告の内容として「当該措置に要した費用を徴収する旨」を加え、 空家法第22条第12項は、略式代執行と緊急代執行の費用の徴収に行政代執行法第5条・第6条を準用すると定めています。 国土交通省の概要[1]はこれを「確定判決なしで徴収」と説明しています。 誰がいくら払うかは行政代執行になると、費用は誰がいくら払うのかにまとめています。

出典:改正前の空家法第14条第10項、空家法第22条第10項・第12項、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[1]

施行日前の手続きの扱い

改正法の附則第2条は経過措置を定めています。略式代執行の費用徴収の定め(空家法第22条第10項・第12項)は施行日以後に公告を行う場合に適用され、 施行日前に改正前の空家法第14条第10項の公告を行った場合は従前の例によります。 緊急代執行の定め(空家法第22条第11項)も、施行日以後に勧告を行う場合に適用されます。 令和5年12月13日より前に始まっていた手続きは、改正前の条文で進みます。

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)附則第2条第2項・第3項

措置の件数

国土交通省と総務省の調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点、調査対象1,741市区町村)によると、 改正で新設された措置の実施状況は次のとおりです。

新設された措置令和5年度令和6年度
管理不全空家等への指導666件2,545件
管理不全空家等への勧告0件378件
特定空家等への緊急代執行3件9件

出典:国土交通省・総務省調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)「5.管理不全空家等及び特定空家等に対する措置状況」。改正法の施行は令和5年12月13日のため、令和5年度の件数は施行後の分と考えられます

同じ資料では、空家等管理活用支援法人の指定済みが95法人(64市区町村)、空家等活用促進区域の指定済みが4区域(4市区町村)です。 国土交通省の概要[1]が掲げた目標は、施行後5年間で活用促進区域100区域、支援法人120法人でした。 特定空家等への助言・指導は令和6年度に4,026件、勧告は600件、命令は101件、行政代執行は71件、略式代執行は81件で、 管理不全空家等への指導2,545件は、特定空家等への助言・指導の件数に近づいています。

出典:同調査「3.空家等管理活用支援法人の指定状況」「4.空家等活用促進区域の指定状況」「5.管理不全空家等及び特定空家等に対する措置状況」

調査結果のまとめ

改正の中心は、特定空家等になる前に手を打つ仕組みです。 指導を受ける前に管理を続けていれば、勧告にも特例の解除にも進みません。 自分の家がどの段階にあるかは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。

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根拠にした資料
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条・第5条・第6条・第7条・第9条・第13条・第14条・第16条・第17条・第18条・第22条・第23条・第24条・第26条・第27条・第28条・第29条・第30条
空家等対策の推進に関する特別措置法(令和5年法律第50号による改正前の版・平成27年5月26日施行)第2条・第3条・第5条・第6条・第9条・第14条・第15条・第16条
空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)附則第1条・第2条
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和五年法律第五十号)新旧対照条文」
国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[1]・概要[2](令和5年6月14日公布・令和5年12月13日施行と記載)
国土交通省住宅局 報道発表「「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」等を閣議決定」(令和5年11月17日)
国土交通省・総務省調査「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」(令和7年3月31日時点)
改正後の条文は2026年10月17日に e-Gov 法令検索で確認しました。改正前の条文は、令和5年法律第50号による改正前の版(平成27年5月26日施行)です。個別の家がどの措置の対象になるかは、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。