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管理・傷み

空き家のことで近所から苦情が来た。
まず何をするか

最初にするのは、苦情の中身を「枝・根」「壊れて落ちそうなもの」「家全体の状態」のどれかに分けることです。分け方によって、関わる条文が変わります。境界線を越えた枝は、催告しても相当の期間内に切除されないときなどに、隣の土地の所有者が自分で切り取ることができます(民法第233条第3項)。塀や瓦が落ちて人にけがをさせた場合は、占有者が必要な注意をしていれば所有者が損害を賠償すると定められています(民法第717条第1項)。苦情が市町村に届いた場合は、空家法第9条の調査や第13条の指導につながることがあります。条文の順に、苦情を受けたあとの対応を整理しました。

苦情の中身の分け方

所有者自身が心配していること

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)は、空き家の所有世帯に管理面での心配事を尋ねています(複数回答)。 近所の人が困る事柄の多くは、所有者自身も心配している事柄と重なります。

管理面での心配事割合
住宅の腐朽・破損の進行75.7%
樹木・雑草の繁茂58.0%
地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊56.9%
不審者の侵入や放火51.7%
動物の棲みつき26.2%
門・塀・擁壁などの腐朽・破損の進行20.2%
地域の景観への悪影響9.9%
害虫の発生等による周辺住民への健康被害9.2%
ゴミの放置等による悪臭の発生2.4%
落雪による通行障害など2.2%
心配事はない37.0%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-61(複数回答。「その他」を除く)。所有世帯への質問で、近所からの苦情の件数ではない

中身ごとに関わる条文

どの場合も、空家法第5条が所有者等に求める「周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める」責務が前提にあります。

出典:民法(明治29年法律第89号)第233条・第717条、空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条・第22条

枝・根が越境している場合

隣の人に認められていること

民法第233条第1項

土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

民法第233条第3項

第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三急迫の事情があるとき。

出典:民法第233条第1項・第3項

枝についての苦情は、民法第233条第1項の「切除させる」求めにあたることがあります。 求めを受けたのに相当の期間内に切らないと、隣の土地の所有者は自分で切り取ることができます(第3項第1号)。 空き家で所有者の連絡先が分からない場合は第2号に、台風の前で枝が折れそうな場合などは第3号にあたりうると考えられます。 根は、民法第233条第4項により、境界線を越えた隣の土地の側で切り取ることができます。

所有者がすること

苦情が枝のことであれば、自分で切るか、切る日を相手に伝えることが、第3項第1号の「相当の期間内に切除しない」状態にしないための対応になります。 条文に「相当の期間」の日数は書かれていません。 空き家の所有者が枝を伸ばす側にも、伸びてくる側にもなる場合の整理は隣の家から伸びてきた枝は切ってよいのか。民法第233条の定めにまとめています。

壊れて落ちそうなものがある場合

民法第717条第1項

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

民法第717条第2項

前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

出典:民法第717条第1項・第2項

塀や瓦などの「土地の工作物」に瑕疵があって他人に損害が生じたとき、最初に責任を負うのは占有者です。 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていた場合は、所有者が損害を賠償しなければならないと書かれています。所有者については、占有者のように注意をしたことで責任を免れる定めは、この条文には置かれていません。 第2項により、木の植え方や支え方に瑕疵がある場合も同じ扱いになります。

「塀が傾いている」「瓦がずれている」という苦情は、まだ損害が生じていない段階の知らせです。 誰が占有者にあたるか、瑕疵にあたるかは個別の事情で判断されますが、知らせを受けたあとに放置すると、損害の発生を防止する注意をしたとは言いにくくなると考えられます。

市町村に連絡が届いた場合

近所の人が市町村の窓口に相談した場合、市町村長は空家法第9条第1項により、空家等の所在や所有者等を把握するための調査を行うことができます。 状態によっては、次の措置に進みます。

空家法第13条第1項

市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。

出典:空家法第9条第1項・第13条第1項

指導のあとも状態が改善されず、特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認められると、空家法第13条第2項の勧告に進みます。 特定空家等に当たる場合は、空家法第22条第1項の助言・指導から、勧告・命令へと段階が続きます。 指導の段階で状態を改善すれば、勧告には進みません。 通知が届いたときの対応は管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかに、 特定空家等の4つの状態は「特定空家等」とは何か。当たる4つの状態と、そのあとに起きることにまとめています。

出典:空家法第13条第2項・第22条第1項

苦情を受けたあとの手順

  1. 中身を聞き取る。何が、どこで、いつから起きているかを、連絡をくれた人に確かめます。枝・工作物・家全体のどれにあたるかで、上の条文のどれが関わるかが決まります
  2. 現地を確かめる。自分で行けない場合は、親族や管理を頼んでいる人に、写真で状態を送ってもらいます
  3. 落ちそうなもの・越境している枝から手を打つ。民法第717条と第233条第3項が関わる部分は、時間がたつほど相手の側でできることが増え、所有者の側の説明が難しくなります
  4. いつ何をするかを相手に伝える。枝については、切る日を伝えることが「相当の期間内」の対応を示すことになります
  5. 連絡先を残す。所有者の連絡先が分からないことは、民法第233条第3項第2号の場面にもつながります。近所の人に連絡先を伝えておくと、次の知らせが早く届きます

遠方で現地に通えない場合の手段は遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。

調査結果のまとめ

苦情は、空き家の状態を外から見ている人からの知らせです。 連絡をくれた人に、いつ何をするかを返すことが、条文のうえでも近所との関係のうえでも、次の段階に進ませない対応になります。

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根拠にした資料
民法(明治29年法律第89号)第233条・第717条
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第9条・第13条・第22条
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-61
条文は e-Gov 法令検索の民法と空家等対策の推進に関する特別措置法で確認しました。占有者・瑕疵にあたるかどうかは個別の事情で判断されます。指導や勧告の運用は、物件のある市区町村の空き家対策の担当窓口で確かめられます。