空き家管理サービスの選び方。
見るべき5つの条件
見るべき
空き家管理サービスを選ぶときに見る条件は、訪問の頻度、作業の内容、報告の形、臨時の対応、費用と契約の条件の5つです。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、管理者がいる空き家のうち月に1回以上管理している世帯は約7割で、月に1回以上の世帯では構造上の不具合が生じていた空き家の割合が約15〜18%、年に1〜数回の世帯では約24%でした。管理者がいる空き家でも「水回りなどの点検・通水」をしている世帯は43.3%にとどまります。業者に管理を頼む契約は準委任にあたりうると考えられ、引き受けた側には報告の義務があります(民法第645条)。5つの条件を、調査の数字と条文で整理しました。
業者に頼んでいる空き家の割合と、頼む側の課題
| 主な管理者 | 割合 |
|---|---|
| 所有者または所有者と同居している親族 | 76.8% |
| 所有者と同居していない親族 | 13.5% |
| 不動産業者、建設会社、管理専門業者など | 3.8% |
| 自治会・近所の人 | 0.9% |
| その他の人 | 1.3% |
| 誰も管理していない | 3.8% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-63
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 空き家を主に管理しているのは「所有者または所有者と同居している親族」が76.8%、「所有者と同居していない親族」が13.5%で、「不動産業者、建設会社、管理専門業者など」が管理している空き家は3.8%でした(図表4-63)。 管理をする上での課題は「管理の作業が大変」が31.7%で最も多く、「管理費用の負担が大きい」が22.5%、「遠方に住んでいるので往訪が困難」が21.6%、「管理を頼める人や業者がいない」が5.9%です(図表4-79)。 作業の負担と距離の課題を抱えたまま、所有者と親族が自分で管理している空き家が大半と考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-63・4-79
空家法第5条
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
空家等対策の推進に関する特別措置法第5条は、空き家の所有者又は管理者に、適切な管理に努めることを求めています。 業者に管理を頼むことは、この責務を果たす手段の1つです。 業者に見回りや換気を頼む契約は、法律行為でない事務の委託として民法上の準委任にあたりうると考えられ(民法第656条)、その場合は委任の定めが準用されます。 引き受けた側は善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(民法第644条)、頼んだ側の請求があればいつでも処理の状況を報告する義務があります(民法第645条)。 報酬は特約がなければ請求できず(民法第648条第1項)、委任は各当事者がいつでも解除できます(民法第651条第1項)。 本記事の5つの条件は、この条文の構造と、調査に出ている管理の実態を手がかりに組み立てました。
出典:民法(明治29年法律第89号)第644条・第645条・第648条第1項・第651条第1項・第656条
条件1。訪問の頻度
月に1回以上という目安
| 管理の頻度 | 割合 |
|---|---|
| ほぼ毎日 | 17.7% |
| 週に1〜数回 | 19.1% |
| 月に1〜数回 | 34.0% |
| 年に1〜数回 | 27.6% |
| 数年に1回 | 1.6% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-67。管理者がいる空き家について集計
管理者がいる空き家の管理の頻度は「月に1〜数回」が34.0%で最も多く、月に1回以上を合わせると約7割です(図表4-67)。 所有世帯の居住地からの所要時間別では、徒歩圏内の空き家で月に1回以上管理している世帯が約8割、車・電車などで3時間超の空き家では約4割で、遠いほど頻度が下がる傾向でした(図表4-73)。 サービスを選ぶときは、訪問が月に1回以上の案を基本に置き、年に数回の案は自分で通える回数と合わせて考えます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-67・4-73
頻度と傷みの関係
調査では、「構造上の不具合が生じていた」空き家の割合は、月に1回以上管理している世帯で約15〜18%、「年に1〜数回」で約24%、「数年に1回」で約33%でした(図表4-58)。 頻度が高いから傷まないのか、傷んでいない家ほど通いやすいのかは、この調査では区別できません。 それでも、年に数回しか人が入らない空き家ほど不具合の割合が高いという並びは、訪問の間隔を決めるときの目安になります。 頻度の考え方は空き家の管理は月に何回必要か。国の調査でわかる頻度と傷みの関係に、年に数回だけ頼む組み方は年に数回だけ空き家を見てもらう方法にまとめています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-58
条件2。作業の内容
上位3項目
| 管理の内容(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 外回りの清掃、草取り、剪定など | 79.5% |
| 戸締まりの確認 | 74.9% |
| 住宅の通風・換気 | 66.9% |
| 郵便物、チラシなどの整理・処分 | 57.0% |
| 住宅内の清掃 | 55.4% |
| 台風、地震などの後の見回り | 49.3% |
| 傷み、雨漏りなどのチェック・修繕 | 48.3% |
| 水回りなどの点検・通水 | 43.3% |
| 除排雪 | 16.6% |
| その他 | 6.2% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65。管理者がいる空き家について集計
管理者がいる空き家で行われている作業は、「外回りの清掃、草取り、剪定など」が79.5%、「戸締まりの確認」が74.9%、「住宅の通風・換気」が66.9%の順です(図表4-65)。 サービスの作業内容を見るときは、まずこの3つが基本の作業に入っているかを確かめます。 外回りの作業は、外観の確認と草取り・剪定とで料金の区分が分かれていることがあるため、どこまでが基本料金に含まれるかを文書で確かめます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65
半数に届かない項目
一方で、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」は48.3%、「水回りなどの点検・通水」は43.3%で、管理者がいる空き家でも半数に届いていません(図表4-65)。 自分で管理している世帯でも手が回りにくい作業がこの2つで、業者に頼む意味が出やすい部分と考えられます。 作業内容を確かめるときは、通風・換気と通水が毎回の作業に入っているか、雨漏りや外壁の傷みを見る項目が決まっているか、郵便物の整理と処分の扱いが決まっているかを見ます。 いま自分で何をどの頻度でしているかの整理は空き家の管理は実際どのくらいされているのか。国の調査でわかる管理者・作業・頻度・費用に、頼む先ごとの比較は遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65
条件3。報告の形
民法第645条
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
民法第644条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
出典:民法第644条・第645条
民法第645条により、受任者は委任者の請求があるときはいつでも事務の処理の状況を報告する義務を負います。 条文が定めているのは請求があったときの報告で、毎回の訪問のたびに報告が届くかどうかは、契約の内容で決まります。 遠方の所有者にとって、報告は現地の状態を知る手段そのものです。 確かめるのは、訪問のたびに報告が届くか、報告に写真が付くか、見る項目があらかじめ決まっていて毎回同じ形で記録されるか、報告が保存されて後から見返せるかの4点です。 写真と項目が毎回そろっていると、傷みの進み方を前回と比べられ、修繕の時期の判断に使えます。 民法第644条の善良な管理者の注意は、作業の質の基準になりますが、何を見るかが決まっていなければ、注意が尽くされたかを後から確かめる手がかりがありません。 報告の項目は、作業の内容を文書で決めることと表裏の関係にあります。
出典:民法第644条・第645条
条件4。臨時の対応
| 管理面での心配事(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 住宅の腐朽・破損の進行 | 75.7% |
| 樹木・雑草の繁茂 | 58.0% |
| 地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊 | 56.9% |
| 不審者の侵入や放火 | 51.7% |
| 心配事はない | 37.0% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61(上位5項目)
管理面での心配事は「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多く、「樹木・雑草の繁茂」が58.0%、「地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊」が56.9%、「不審者の侵入や放火」が51.7%でした(図表4-61)。 これに対し、「台風、地震などの後の見回り」を行っている世帯は49.3%です(図表4-65)。 心配の上位にある災害後の確認が、作業としては半数に届いていません。 定期の訪問とは別に、台風や地震のあとに臨時の訪問を頼めるか、その費用がいくらか、連絡から訪問までにどのくらいかかるかを確かめます。 台風の前にやることは台風の前に、空き家でやっておくことにまとめています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61・4-65
空家法第13条第1項
市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第1項
空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第1項は、適切な管理が行われていないことにより放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家を「管理不全空家等」とし、市町村長が所有者等に指導できる定めです。 指導をしてもなお改善されないときは、修繕、立木竹の伐採その他の必要な具体的な措置について勧告することができます(空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項)。 近隣からの苦情や市町村からの連絡は、所有者のもとに届きます。 そのとき、所有者に代わって現地を確かめ、草木の繁茂や外回りの不具合を写真で報告できる相手がいるかどうかで、対応の速さが変わります。 臨時の対応で確かめるのは、災害後の臨時訪問、近隣や市町村からの連絡を受けたときの現地確認、鍵の預かりと立ち会いの3つです。 苦情が来たときの手順は空き家のことで近所から苦情が来た。まず何をするかに、管理不全空家等に指定されたときの流れは管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかにまとめています。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第1項・第2項
条件5。費用と契約の条件
費用の見方
| 年間の維持管理に要する費用 | 割合 |
|---|---|
| 費用はかかっていない | 12.1% |
| 1万円未満 | 10.6% |
| 1〜3万円未満 | 14.1% |
| 3〜5万円未満 | 11.0% |
| 5〜10万円未満 | 15.6% |
| 10〜20万円未満 | 16.7% |
| 20〜30万円未満 | 8.5% |
| 30万円以上 | 8.5% |
| 不明 | 2.9% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-74。調査の基準日は令和5年10月1日
年間の維持管理に要する費用は「10〜20万円未満」が16.7%で最も多く、5万円未満を合わせると約5割で、「費用はかかっていない」は12.1%でした(図表4-74)。 この調査の「維持管理に要する費用」は、管理を委託している場合の管理委託料のほか、電話・ガス・水道等の費用、空き家までの交通費、税金を含む定義です。 サービスの料金を見るときは、いま自分で通っている交通費と時間の代わりになる部分と、業者に頼んで初めて加わる部分とを分けて考えます。 確かめるのは、基本料金に含まれる作業と別料金になる作業の区分、交通費や鍵の預かりの扱い、臨時の訪問や草取りなどの追加料金の単価です。 料金表は会社ごとに項目の切り方が違うため、同じ作業の組み合わせにそろえてから月額を比べると、差がどこから出ているかが分かります。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」第1章「調査の概要」、図表4-74
契約の条件
民法第648条第1項
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
民法第651条第1項
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
出典:民法第648条第1項・第651条第1項
民法第648条第1項により、報酬は特約で定めます。業者との契約では料金表と契約書がこの特約にあたると考えられ、何に対していくら払うかは文書で確かめます。 民法第651条第1項は、委任を各当事者がいつでも解除できる定めです。ただし、相手方に不利な時期に解除したときは損害を賠償する定めがあり(民法第651条第2項)、契約書に最低利用期間や解約の予告期間が書かれていれば、その内容を先に確かめます。 受任者が事務の処理に必要と認められる費用を支出したときは、委任者にその償還を請求できます(民法第650条第1項)。 業者が現地で立て替えた費用がどこまで請求されるかは、立て替えの範囲と上限を契約で決めておくことで予測できます。 契約の条件で確かめるのは、解約の方法と予告期間、最低利用期間の有無、立て替え費用の範囲、鍵の返却と引き継ぎの手順です。
出典:民法第648条第1項・第650条第1項・第651条第1項・第2項
5つの条件の確認表
| 条件 | 確かめること | 根拠 |
|---|---|---|
| 訪問の頻度 | 月に1回以上の訪問が基本の案にあるか。年に数回の案は自分で通える回数と合わせる | 図表4-58・4-67・4-73 |
| 作業の内容 | 外回り・戸締まり・通風換気の3つに加え、通水と傷みの確認、郵便物の整理が毎回の作業に入っているか | 図表4-65 |
| 報告の形 | 訪問のたびに写真つきの報告が届くか。見る項目が決まっていて、報告が保存されるか | 民法第644条・第645条 |
| 臨時の対応 | 災害後の臨時訪問、近隣や市町村からの連絡を受けたときの現地確認、鍵の預かりと立ち会い | 図表4-61・4-65、空家法第13条 |
| 費用と契約の条件 | 基本料金の範囲と追加料金、解約の方法と予告期間、最低利用期間、立て替え費用の範囲 | 図表4-74、民法第648条第1項・第650条第1項・第651条 |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-58・4-61・4-65・4-67・4-73・4-74、民法第644条・第645条・第648条第1項・第650条第1項・第651条、空家等対策の推進に関する特別措置法第13条
5つの条件は、どれか1つが欠けていれば選べないという性質のものではありません。 自分で通える回数と距離、心配している項目、かけられる費用に合わせて、どの条件を優先するかを決めます。 遠方に住んでいて往訪が困難な場合は頻度と報告の形を、近隣との関係が気になる場合は臨時の対応を、費用を抑えたい場合は基本料金の範囲を先に見る順番が、調査に出ている課題の並びに沿った見方と考えられます。
調査結果のまとめ
- 空き家を主に管理しているのは所有者または同居親族が76.8%で、業者が管理している空き家は3.8%です。課題は「管理の作業が大変」31.7%、「管理費用の負担が大きい」22.5%、「遠方に住んでいるので往訪が困難」21.6%でした(図表4-63・4-79)
- 管理者がいる空き家の管理の頻度は「月に1〜数回」34.0%が最も多く、月に1回以上が約7割です。構造上の不具合が生じていた空き家は月に1回以上で約15〜18%、年に1〜数回で約24%でした(図表4-58・4-67)
- 作業は外回りの清掃79.5%、戸締まりの確認74.9%、通風・換気66.9%が上位で、「水回りなどの点検・通水」43.3%、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」48.3%は半数に届きません(図表4-65)
- 心配事は腐朽・破損の進行75.7%、樹木・雑草の繁茂58.0%、災害による損壊・倒壊56.9%、不審者の侵入や放火51.7%の順で、災害後の見回りをしている世帯は49.3%でした(図表4-61・4-65)
- 年間の維持管理費用は「10〜20万円未満」16.7%が最も多く、5万円未満が約5割です(図表4-74)
- 業者に頼む契約は準委任にあたりうると考えられ(民法第656条)、受任者には報告の義務があり(民法第645条)、報酬は特約で定め(民法第648条第1項)、委任は各当事者がいつでも解除できます(民法第651条第1項)
空き家管理サービスを選ぶときは、訪問の頻度、作業の内容、報告の形、臨時の対応、費用と契約の条件の5つを、料金表と契約書の文言で確かめるのが要点です。 調査では、自分で管理している世帯でも通水と傷みの確認が半数に届かず、災害後の見回りも半数に届いていません。 この2つが毎回の作業と臨時の対応に入っているかが、サービスを比べるときの分かれ目になると考えられます。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
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根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表4-58・4-61・4-63・4-65・4-67・4-73・4-74・4-79
民法(明治29年法律第89号)第644条・第645条・第648条第1項・第650条第1項・第651条第1項・第2項・第656条
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条第1項・第2項
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家、主な管理者・心配事・課題・維持管理費用は空き家を所有する世帯について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。