「管理不全空家等」に指定されると、
固定資産税はいくら上がるのか
固定資産税は
「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」と言われます。これは正確ではありません。正しくは、市町村から勧告を受けた場合に、住宅用地特例が外れて計算上およそ6倍になるという話です。指導の段階では税額は変わりません。条文にあたって、何が起きるとどうなるのかを整理しました。
「管理不全空家等」とは何か
法律上の定義
「管理不全空家等」は、2023年12月13日に施行された改正空家等対策の推進に関する特別措置法で新しく設けられた区分です。 同法第13条第1項は、「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態」にある空家等を管理不全空家等と定めています。
改正前は、すでに危険な状態にある「特定空家等」しか対象になりませんでした。改正によって、そこに至る手前の段階でも行政が関与できるようになりました。
特定空家等との違い
| 区分 | 状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| 管理不全空家等 | 放置すれば特定空家等になるおそれがある | 同法 第13条第1項 |
| 特定空家等 | 倒壊のおそれ、著しく衛生上有害、著しく景観を損なう など | 同法 第2条第2項 |
管理不全空家等は「まだ危険ではないが、このままだと危険になる」段階を指します。屋根や外壁の一部が傷んでいる、雑草や立木が伸びて隣地へはみ出している、といった状態が想定されています。
勧告を受けるまでの2段階
まず指導、改善されなければ勧告
市町村長は、いきなり税の特例を外すわけではありません。法律は2段階の手続きを定めています。
- 指導(同法 第13条第1項)……特定空家等に該当することを防ぐために必要な措置をとるよう指導する
- 勧告(同法 第13条第2項)……指導をしてもなお状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれが大きいと認めるときに、修繕や立木竹の伐採など具体的な措置を勧告する
税に影響するのは勧告から
固定資産税の特例が外れるのは、2段階目の「勧告」を受けた場合です。指導の段階では税額は変わりません。 指導を受けた時点で対応すれば、税の負担は増えないことになります。
指導・勧告は書面で届きます
いずれも所有者等に対して行われます。空き家が遠方にあり、登記上の住所と現住所が違う場合、通知が届かないまま手続きが進むことがあります。登記の住所変更をしていない方は、まず確認することをおすすめします。
住宅用地特例で税額はいくら下がっているか
話の前提として、住宅が建っている土地には課税標準を下げる特例があります。地方税法が定めている割合は次のとおりです。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 (住居1戸あたり200㎡以下の部分) |
価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地 (200㎡を超える部分) |
価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
根拠:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項、第702条の3第1項・第2項
多くの戸建ての敷地は200㎡以下に収まるため、固定資産税は本来の6分の1で計算されています。 空き家の税額が「思ったより安い」と感じるのは、この特例が効いているためです。
特例が外れると税額はどう変わるか
条文上の扱い
地方税法第349条の3の2第1項は、住宅用地の定義から「勧告がされた管理不全空家等」および「勧告がされた特定空家等」の敷地を除くと定めています。 つまり勧告を受けた土地は、そもそも住宅用地として扱われなくなり、特例の対象から外れます。
200㎡以下の土地なら、負担は約6倍になります
小規模住宅用地の特例は6分の1です。これが外れると課税標準は価格そのものに戻るため、土地部分の固定資産税は計算上およそ6倍になります。
| 土地の課税標準となるべき価格 | 特例あり(6分の1) | 特例なし | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 2.3万円 | 14.0万円 | +11.7万円 |
| 1,500万円 | 3.5万円 | 21.0万円 | +17.5万円 |
| 2,000万円 | 4.7万円 | 28.0万円 | +23.3万円 |
標準税率1.4%で計算した概算です。実際の税額は、負担調整措置、各自治体の税率、家屋部分の評価によって変わります。
この表は目安です
固定資産税には、税額の急な上昇をやわらげる負担調整措置があり、実際の増え方は上の表どおりにはなりません。正確な金額は、課税明細書を手元に、物件がある自治体の資産税担当課または税理士にご確認ください。
都市計画税も上がります
都市計画税の小規模住宅用地特例は3分の1です。これも同時に外れるため、都市計画税は計算上およそ3倍になります。市街化区域内の土地では、この分も加わります。
特例が外れる時点と、戻すための条件
1月1日時点の状態で決まります
固定資産税は、その年の1月1日(賦課期日)の状態で課税されます。勧告を受けたまま1月1日を迎えると、その年度分から特例が外れます。
逆に言えば、勧告を受けても、年内に状態を改善して勧告が撤回されれば、税額は変わりません。勧告から賦課期日までの間が、対応する時間になります。
戻すには状態の改善が必要です
勧告の原因になった状態(屋根や外壁の傷み、立木の越境など)を直し、市町村がそれを確認すれば、勧告は撤回されます。撤回されれば、次の賦課期日から特例が戻ります。 手続きと必要な確認の内容は自治体によって異なるため、勧告書に記載された担当課にお問い合わせください。
費用の比較
敷地の価格が1,500万円の物件で特例が外れた場合、増える負担は年17.5万円ほどという概算になります。月あたりでは約1.5万円です。草木の剪定や外壁の補修を早めに行うほうが、結果として安く済む場合があります。
まとめ
- 「管理不全空家等」は2023年12月13日施行の改正法で新設された区分で、放置すれば特定空家等になるおそれのある状態を指す。
- 手続きは指導 → 勧告の2段階。税に影響するのは勧告からで、指導の段階では税額は変わらない。
- 勧告を受けると住宅用地から除かれ、固定資産税の小規模住宅用地特例(6分の1)と都市計画税の特例(3分の1)が外れる。
- 200㎡以下の土地では、固定資産税は計算上およそ6倍、都市計画税はおよそ3倍になる。
- 判定は1月1日時点。年内に改善して勧告が撤回されれば、税額は変わらない。
指導の通知は、登記上の住所に届きます。遠方に住んでいて年に一度しか行けない空き家では、傷みが進んでいることにも、通知が届いていることにも気づけません。 定期的に状態を確認しておくことが、結果として税負担を抑えることにつながります。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした法令
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条第2項、第13条第1項・第2項
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項、第702条の3第1項・第2項
いずれも e-Gov 法令検索に掲載されている条文を2026年9月7日に確認しました。
本記事の税額はすべて標準税率1.4%で計算した概算であり、負担調整措置や自治体ごとの税率を反映していません。実際の税額は自治体の資産税担当課または税理士にご確認ください。