空き家の管理は月に何回必要か。
国の調査でわかる頻度と傷みの関係
国の
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、所有者等に空き家の適切な管理に努めることを求めていますが(第5条)、管理の回数は書かれていません。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」では、管理者がいる空き家の約7割が月に1回以上管理されていました。「構造上の不具合が生じていた」空き家の割合は、管理が月に1回以上の世帯で約15〜18%、年に1〜数回で約24%、数年に1回で約33%です。ただし、これは同じ時点の集計を比べた相関で、回数を増やせば傷みが減ることまでは示していません。所有者の住まいからの距離で分けると、管理の回数が少ない遠方の空き家のほうが、構造上の不具合の割合は低くなっていました。条文と調査の図表で、回数と傷みの関係を整理しました。
条文が求めていること
空き家の所有者の責務は、空家法第5条に書かれています。
空家法第5条
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
条文が定めているのは「適切な管理に努める」ことで、月に何回という回数ではありません。 市町村長が指導や勧告をするかどうかも、回数ではなく空き家の状態で決まります。 空家法第13条第1項は、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空家等を「管理不全空家等」とし、所有者等に指導をすることができると定めています。 指導を受けたあとの流れは管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかにまとめています。
出典:空家法第13条第1項
管理の頻度の実態
全体の分布
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)は、令和5年住宅・土地統計調査で空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 管理の頻度は、主な管理者がいる世帯(1,225千世帯)について集計されています。
| 管理の頻度 | 割合 |
|---|---|
| ほぼ毎日 | 17.7% |
| 週に1〜数回 | 19.1% |
| 月に1〜数回 | 34.0% |
| 年に1〜数回 | 27.6% |
| 数年に1回 | 1.6% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-67。主な管理者がいる世帯のみの集計
調査報告は「月に1〜数回」が約34%で最も多く、月に1回以上を合わせると約7割になるとしています。 残りの約3割は、年に数回以下の管理です。
空き家の種類と距離による違い
頻度は空き家の置かれた条件で変わります。 「貸家用の空き家」と「売却用の空き家」は、月に1回以上管理している世帯が合わせて約6割で、他の種類より低くなっています(図表4-68)。 所有世帯の居住地からの所要時間で分けると、「徒歩圏内」では月に1回以上が約8割、「車・電車などで3時間超」では約4割です(図表4-73)。 遠方の空き家では、年に1〜数回の管理が53.9%を占めます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-68・4-73
頻度別の傷みの状態
構造上の不具合の割合
調査は、空き家の腐朽・破損の状態を管理の頻度別に集計しています。
| 管理の頻度 | 構造上の不具合が生じていた | 全体的に腐朽・破損 | 部分的に腐朽・破損 | 不具合や腐朽・破損なし |
|---|---|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 15.3% | 2.1% | 42.1% | 40.5% |
| 週に1〜数回 | 16.3% | 2.4% | 42.1% | 39.2% |
| 月に1〜数回 | 17.5% | 3.0% | 44.4% | 35.2% |
| 年に1〜数回 | 24.3% | 4.5% | 43.8% | 27.4% |
| 数年に1回 | 33.3% | 6.7% | 46.7% | 13.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-25(図表4-58も同じ値)。「全体的」「部分的」は住宅の外観または室内の腐朽・破損
調査報告は、月に1回以上の世帯では「構造上の不具合が生じていた」空き家の割合が約15〜18%だが、「年に1〜数回」では約24%、「数年に1回」では約33%と大きく増加するとしています。 「不具合や腐朽・破損なし」は、ほぼ毎日の40.5%から数年に1回の13.3%まで下がります。 数年に1回の区分は、管理者がいる世帯の1.6%にあたる小さな集団です。
空き家でなくなった割合
調査は、令和5年10月1日から令和6年12月1日までの間に空き家でなくなったかどうかも集計しています。 「現在空き家ではない」と回答した割合は、管理が「ほぼ毎日」の世帯で26.1%、「数年に1回」で10.5%でした(図表3-37)。 調査報告は、管理の頻度が高くなるほど「現在空き家ではない」が増加する傾向としています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-37
相関と因果の区別
距離で分けると向きが逆になる
管理の回数が少ないほど傷みが多い、という関係は、別の分け方では成り立ちません。 所有世帯の居住地からの所要時間別に見ると、管理の回数は遠いほど少ないのに、構造上の不具合の割合は遠いほど低くなっています。
| 所有世帯の居住地からの所要時間 | 月に1回以上の管理 | 構造上の不具合が生じていた |
|---|---|---|
| 徒歩圏内 | 約8割 | 24.2% |
| 車・電車などで1時間以内 | ― | 20.3% |
| 車・電車などで1時間超〜3時間以内 | ― | 13.5% |
| 車・電車などで3時間超 | 約4割 | 8.6% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-59・4-73。月に1回以上の割合は調査報告の本文の記載で、1時間以内と1時間超〜3時間以内は本文に記載が無いため「―」とした
調査報告も、所要時間が長くなるほど「構造上の不具合が生じていた」が減少する傾向としています。 回数だけで傷みが決まるのであれば、遠方の空き家ほど傷んでいるはずですが、集計はそうなっていません。
ほかに関わる条件
傷みの程度には、管理の回数のほかに次の条件が関わっていることが、同じ調査から読み取れます。
- 建築時期。「構造上の不具合が生じていた」空き家は、1980年以前の建築を合わせると約8割で、「構造上の不具合や腐朽・破損はなかった」は約4割です(図表3-12)
- 取得方法。「構造上の不具合が生じていた」空き家は「相続」で取得した割合が約65%で、「構造上の不具合や腐朽・破損はなかった」の約49%より高くなっています(図表3-14)
- 所有者の意向。「構造上の不具合が生じていた」空き家の所有世帯は、管理の課題に「住宅を利用する予定がないので管理しても無駄になる」を47.9%が挙げています(図表4-82)
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表3-12・3-14・4-82
古い家や、使う予定の無い家ほど管理の回数が減り、同時に傷みも進んでいる、という重なりがあると考えられます。 傷んだ家だから通わなくなった、という逆向きの関係も、この集計からは区別できません。 調査報告自身も、腐朽・破損の程度が大きくなるほど管理の頻度が低くなる「傾向」と書いています(図表3-28)。 頻度別の数字は、回数を増やしたときの効果ではなく、今の管理の回数で、どのような状態の空き家が多いかを示すものとして読むのが適切です。
管理の中身
管理者がしている作業
回数を考えるときは、1回に何をするかと合わせて考えることになります。 主な管理者がいる世帯の管理の内容(複数回答)は次のとおりです。
| 管理の内容 | 割合 |
|---|---|
| 外回りの清掃、草取り、剪定など | 79.5% |
| 戸締まりの確認 | 74.9% |
| 住宅の通風・換気 | 66.9% |
| 郵便物、チラシなどの整理・処分 | 57.0% |
| 住宅内の清掃 | 55.4% |
| 台風、地震などの後の見回り | 49.3% |
| 傷み、雨漏りなどのチェック・修繕 | 48.3% |
| 水回りなどの点検・通水 | 43.3% |
| 除排雪 | 16.6% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65(複数回答。「その他」を除く)
回数を決める手がかり
上の作業には、郵便物の整理のように溜まる速さで間隔が決まるものと、台風や地震のあとの見回りのように出来事の後に行うものがあります。 草木の伸び方や郵便物の量は家ごとに違うため、回数は家の条件で決まると考えられます。 人が住まなくなった家に何が起きるかは空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかに、 遠方から通えない場合の手段は遠方で空き家の管理ができない。選べる手段の一覧にまとめています。
調査結果のまとめ
- 空家法第5条は所有者等に適切な管理に努めることを求めていますが、管理の回数は条文に書かれていません。指導の対象になるかどうかは空き家の状態で決まります(第13条第1項)
- 管理者がいる空き家では「月に1〜数回」が34.0%で最も多く、月に1回以上を合わせると約7割です(図表4-67)
- 「構造上の不具合が生じていた」割合は、月に1回以上で約15〜18%、年に1〜数回で約24%、数年に1回で約33%でした(図表3-25)
- 所要時間別では、遠方ほど管理の回数は少ないのに、構造上の不具合の割合は徒歩圏内24.2%、3時間超8.6%と低くなっています(図表4-59・4-73)
- 頻度と傷みの関係は相関で、建築時期・取得方法・所有者の意向と重なっています。回数を増やしたときの効果は、この調査からは分かりません
管理の回数を決めるときは、月に何回という数字から入るより、草木・郵便物・換気・災害のあとの見回りなど、その家で必要な作業から間隔を決めるほうが、調査の結果に沿った考え方になります。
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根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表3-12・3-14・3-25・3-28・3-37・4-58・4-59・4-65・4-67・4-68・4-73・4-82
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条
条文は e-Gov 法令検索の空家等対策の推進に関する特別措置法で確認しました。調査の基準日は令和5年10月1日(一部の調査事項は令和6年12月1日)で、割合は不詳を除いて集計された値です。