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ホームお役立ちコラム実家を兄弟の共有名義にすると、あとで何が起きるか
相続・片づけ

実家を兄弟の共有名義にすると、
あとで何が起きるか

家にできることが「変更」「管理」「保存」の3つに分かれます。民法第251条第1項は、変更には他の共有者の同意が要ると定めています。売ることと取り壊すことはここに入ると考えられます。一方で見回りや雨漏りの応急処置は、第252条第5項により1人でできます。国土交通省の調査では、共有の空き家は登記も名義変更もしていない割合が23.8%で、単独所有の12.5%より高くなっていました。条文と調査結果にあたって整理しました。

相続で共有になる仕組みと、その割合

相続人が数人いれば、まず共有になる

共有名義は、選んでそうなるとはかぎりません。 民法第898条第1項は、相続人が数人いる場合の相続財産の扱いを次のように定めています。

民法第898条第1項

相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

出典:民法(明治29年法律第89号)第898条第1項

遺産分割の協議がまとまるまでの間、実家は相続人全員の共有という状態に置かれます。 「兄弟の共有名義にする」という判断をしなくても、話し合いが済んでいなければ共有です。 分けると決めるまでは共有が続く、という順序になっています。

空き家の14.0%が2人以上の共有

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査によると、空き家の所有者の数は 1人(単独所有)が84.6%、2人以上(共有)が14.0%でした。 売却用の空き家に限ると、2人以上(共有)の割合は21.7%です。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-31・図表4-32

共有は多数派ではありません。ただし売りに出している空き家では割合が上がります。 売る段になって共有の扱いが表に出てくる、という順序になっていると考えられます。

共有物にできることは3つに分かれる

変更には他の共有者の同意が要る

民法第251条第1項は、変更について次のように定めています。

民法第251条第1項

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更 (その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。) を加えることができない。

出典:民法(明治29年法律第89号)第251条第1項

売ること、取り壊すこと、間取りを変える工事をすることは、 形状または効用の著しい変更にあたると考えられます。 1人が反対すれば止まります。持分の大小は問われません。 同条第2項は、他の共有者を知ることができないときや所在が分からないときに、 裁判所の裁判によって残りの共有者の同意で変更できる道を用意しています。 裁判所の手続きが要る、という点は変わりません。

管理は持分の価格の過半数で決まる

民法第252条第1項は、管理に関する事項の決め方を定めています。

民法第252条第1項

共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、 共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、 各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。

出典:民法(明治29年法律第89号)第252条第1項

基準は人数の過半数ではなく、持分の価格の過半数です。 兄弟3人が3分の1ずつであれば2人分、 1人が2分の1を持っていれば、その人ともう1人の合意が必要になります。

貸すことは、期間によって扱いが変わります。同条第4項は、管理として設定できる 賃借権等の期間の上限を定めており、建物の賃借権等は3年、 建物以外の土地の賃借権等は5年とされています。 これを超える契約は管理の枠に収まらないことになります。

保存は各共有者が単独でできる

民法第252条第5項は、保存行為を別に扱っています。

民法第252条第5項

各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

出典:民法(明治29年法律第89号)第252条第5項

見回り、通風、草刈り、雨漏りの応急処置は保存にあたると考えられます。 兄弟の同意を待たずに、1人で手を打てる部分です。 家が傷むのを止める作業は、共有であることを理由に止まりません。

区分条文が定める要件実家での例
変更他の共有者の同意(第251条第1項)売却、取り壊し、間取りを変える工事
管理持分の価格の過半数(第252条第1項)賃貸(建物は3年以内)、管理者の選任
保存各共有者が単独でできる(第252条第5項)見回り、通風、草刈り、雨漏りの応急処置

出典:民法(明治29年法律第89号)第251条・第252条。どの行為がどの区分にあたるかは事案ごとに判断が分かれることがあります。実際の当てはめは司法書士・弁護士にご確認ください。

費用の負担と、共有をやめる方法

費用は持分に応じて負担する

民法第253条は、共有物に関する負担の分け方を定めています。

民法第253条第1項

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

出典:民法(明治29年法律第89号)第253条第1項

固定資産税、火災保険料、管理を頼む費用は、持分に応じた負担になります。 同条第2項は、共有者が1年以内にこの義務を果たさないとき、 他の共有者が相当の償金を支払ってその者の持分を取得できると定めています。 払わない人がいる状態を、条文は放置していません。

分割はいつでも請求できる

共有をやめる方法も条文にあります。民法第256条第1項は 「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」と定めています。 ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約を結ぶことも認められています。

出典:民法(明治29年法律第89号)第256条第1項

協議がまとまらないときは、民法第258条第1項により裁判所に分割を請求できます。 同条第2項は分割の方法として現物を分ける方法と、 共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法を挙げ、 同条第3項は、これらの方法で分割できないときや価格を著しく減少させるおそれがあるときに、 裁判所が競売を命じることができると定めています。

出典:民法(明治29年法律第89号)第258条

実家は物理的に切り分けにくいため、現物分割になじまない場面が多いと考えられます。 話がまとまらないまま裁判所に進んだ場合、競売という出口が条文に用意されている点は、 共有にする前に知っておく価値があります。

共有のまま登記が止まる割合

共有の空き家は登記も名義変更もしていない割合が高い

同じ調査は、所有者の数別に登記または名義変更の状況を集計しています。 所有者の数が2人以上(共有)の空き家では、登記と名義変更の「いずれも行っていない」 世帯の割合が23.8%で、1人(単独所有)の12.5%より高くなっていました。総数は14.1%です。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-38。この設問は相続登記が義務化された令和6年4月1日より前の、令和5年10月1日時点の状況を尋ねたものです。

共有だと決め手を欠き、手続きが後回しになりやすい傾向がうかがえます。 ただしこれは相関であって、因果ではありません。 分割の話がつかない家がそのまま共有として残っている、という説明も同じ数字でできます。

相続登記は3年以内の申請義務

後回しにできる期間には上限があります。不動産登記法第76条の2第1項は次のとおりです。

不動産登記法第76条の2第1項

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から 三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項

同法第164条第1項は、この申請をすべき義務がある者が 正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処すると定めています。 共有かどうかにかかわらず、期限は動きません。

共有を理由に挙げた世帯は2.2%

一方で、当事者の受け止め方は別です。同じ調査で、今後5年程度のうち空き家として所有しておく意向の 世帯にその理由を尋ねたところ、「所有者が複数で合意が困難」を挙げた割合は2.2%にとどまりました。 最も多いのは「物置として必要」の55.8%です。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表3-45(複数回答)

共有そのものは、いま困っていることとして意識されにくいと考えられます。 困るのは売る・貸す・壊すと決めたときで、そのときには民法第251条第1項の同意が必要になります。 問題が表に出る時点と、共有を選ぶ時点がずれている点が、この論点の扱いにくさだと考えられます。

調査結果のまとめ

共有を避けるかどうかは、家族の事情で決まる話です。 ただし決め方の枠組みは条文で決まっており、話し合いでは動かせません。 共有にすると決める前に、売るときと壊すときに誰の同意が要るのかを確かめておくことをおすすめします。

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根拠にした資料
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表3-45・図表4-31・図表4-32・図表4-38
民法(明治29年法律第89号)第251条・第252条・第253条・第256条・第258条・第898条
不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2・第164条
条文は2026年9月11日に e-Gov 法令検索で確認しました。どの行為が変更・管理・保存のどれにあたるかは事案ごとに判断が分かれることがあり、この記事では条文の定めを示すにとどめています。個別の判断は司法書士・弁護士にご確認ください。