空き家の湿気対策。
除湿剤で足りるのか
除湿剤で
置き型の除湿剤で足りるのは、押し入れや下駄箱のように閉じた狭い場所の湿気に限られると考えられます。家全体の湿気は、雨漏り・床下・配管・結露といった水の入口と、換気という湿気の出口で決まり、除湿剤はそのどちらも変えません。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、管理者がいる空き家のうち「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%でしたが、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」は48.3%にとどまります。所有世帯の心配事は「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多い回答です。湿気の入口、条文が前提にしている家の造り、除湿剤が効く場所と効かない場所、訪問のときの手順を整理しました。
空き家の湿気はどこから来るか
湿気の入口
人が住んでいる家でも、湿気は地面、雨、配管、外の空気から入ってきます。 住んでいるあいだは、窓の開け閉め、換気扇、暖房によって湿気が外へ出ていくため、たまりにくいと考えられます。 空き家では、入ってくる湿気の量は変わらないのに、出ていく量が減ります。 湿気の入口を分けると、次の表のようになります。
| 湿気の入口 | 入り方 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 床下の地面 | 土から上がる水分が、床下にこもる | 床下の換気口、1階の畳と床の湿り |
| 雨漏り | 屋根や外壁のすきまから水が入る | 天井のしみ、押し入れの天井、窓まわり |
| 配管の水漏れ | 給水管や排水管から少しずつ漏れる | 台所・洗面台の下、トイレの床 |
| 結露 | 冷えた壁や窓に、室内の水分がつく | 北側の壁、窓ガラス、押し入れの奥 |
| 外の湿った空気 | 雨の日や梅雨に、湿った空気が入る | 室内全体 |
湿気がたまる場所
入った湿気は、空気が動かない場所にたまると考えられます。 押し入れ、クローゼット、下駄箱、流し台の下、北側の部屋、床下が代表的な場所です。 これらの場所に共通するのは、戸や壁で閉じられていて、風が通らないことです。 湿った状態が続くと、カビとにおいにとどまらず、木部の腐朽につながると考えられます。 木材が腐朽する条件は空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかに、 締め切った家で起きることは空き家を換気しないとどうなるかにまとめています。
条文が前提にしている家の造り
建築基準法第28条第2項
居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
出典:建築基準法(昭和25年法律第201号)第28条第2項
建築基準法第28条第2項は、居室に換気のための窓などの開口部を設け、その有効な面積を床面積の20分の1以上とすることを求めています。 住宅の換気は、窓を開けること、または換気設備を動かすことで成り立つ造りになっています。 誰も住まず、窓も換気設備も動かない空き家では、この開口部が湿気の出口として働きません。
建築基準法第19条第1項
建築物の敷地は、これに接する道の境より高くなければならず、建築物の地盤面は、これに接する周囲の土地より高くなければならない。ただし、敷地内の排水に支障がない場合又は建築物の用途により防湿の必要がない場合においては、この限りでない。
出典:建築基準法(昭和25年法律第201号)第19条第1項
建築基準法第19条第1項は、建築物の地盤面を周囲の土地より高くすることを求め、ただし書きで「防湿の必要がない場合」を除いています。 条文が地面からの湿気を前提にしていることが読み取れます。 床下の湿気は、敷地の排水と地盤面の高さで決まる部分が大きく、室内に置いた除湿剤では変わらないと考えられます。
国土交通省住宅局の改正法の概要[2]は、国が告示する「空家の管理指針」の内容の例として、定期的な換気、通水、庭木伐採を挙げています。 湿気対策として国の資料が挙げているのは換気で、除湿剤を置くことではありません。
出典:国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2](令和5年6月14日公布・令和5年12月13日施行)
除湿剤が効く場所と効かない場所
除湿剤が効く場所
置き型の除湿剤は、容器の周りの空気から水分を取り、容器にためる仕組みのものが多く、取れる水の量は容器の大きさで決まります。 戸を閉めた押し入れや下駄箱のように、空気の量が少なく、外から湿気が入り続けない場所であれば、中の湿気を下げる働きが期待できると考えられます。 効くのは「閉じた狭い空間」であること、容器がいっぱいになれば働きが止まることの2点が、除湿剤の性質です。
除湿剤では足りない湿気
| 場所・原因 | 除湿剤の働き | 代わりに要る手当て |
|---|---|---|
| 押し入れ・下駄箱・流し台の下 | 閉じた狭い空間なので、湿気を下げる働きが期待できる | 訪問のたびに戸を開けて風を通す。容器の水を捨てて交換する |
| 部屋全体 | 空気の量に対して取れる水の量が少なく、足りないと考えられる | 向かい合う窓を開けた換気。晴れて乾いた日の訪問 |
| 床下 | 室内に置いても床下には届かない | 床下の換気口の周りの片付け。湿りが強ければ専門業者の点検 |
| 雨漏り・配管の水漏れ | 入り続ける水の量に追いつかない | 屋根・外壁・配管の修繕。水を止めることが先 |
| 結露 | 壁や窓の温度は変わらないため、つき続ける | 家具を壁から離す。押し入れの戸を開けておく |
除湿剤は湿気の出口を増やすものではなく、置いた場所の空気から水分を少し取り除くものです。 雨漏りや水漏れのように水が入り続ける家では、除湿剤を何個置いても水の入口は閉じません。 部屋全体に対しては、窓を開けた換気のほうが、動かせる空気の量がはるかに多いと考えられます。 訪問できない期間に押し入れや下駄箱に置く補助として使い、訪問の本体は換気と水の入口の確認に置く、という位置づけが妥当と考えられます。
調査に見る湿気対策の実態
管理の内容に占める換気と修繕
| 管理の内容 | 行っている世帯の割合 |
|---|---|
| 住宅の通風・換気 | 66.9% |
| 住宅内の清掃 | 55.4% |
| 傷み、雨漏りなどのチェック・修繕 | 48.3% |
| 水回りなどの点検・通水 | 43.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-65(管理者がいる空き家、複数回答)
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査です。 管理者がいる空き家のうち「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%でした(図表4-65)。 一方、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」は48.3%、「水回りなどの点検・通水」は43.3%で、半数に届きません。 窓を開ける訪問はしていても、水の入口の確認が抜けている家が一定数あると考えられます。 所有世帯の心配事では「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多い回答でした(図表4-61)。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61(複数回答)
腐朽・破損の状態と管理の頻度
| 管理の頻度 | 構造上の不具合が生じていた | 不具合や腐朽・破損なし |
|---|---|---|
| ほぼ毎日 | 15.3% | 40.5% |
| 週に1~数回 | 16.3% | 39.2% |
| 月に1~数回 | 17.5% | 35.2% |
| 年に1~数回 | 24.3% | 27.4% |
| 数年に1回 | 33.3% | 13.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-58
空き家全体では、「住宅の外観または室内に部分的に腐朽・破損があった」が43.2%で最も多く、「構造上の不具合が生じていた」が19.6%、「構造上の不具合や腐朽・破損はなかった」が34.1%でした(図表4-53)。 管理の頻度別に見ると、「構造上の不具合が生じていた」割合は、月に1~数回で17.5%、年に1~数回で24.3%、数年に1回で33.3%でした(図表4-58)。 ただし、この調査に湿気対策の有無と傷みを組み合わせた集計はなく、上の表は除湿剤や換気の効果を示すものではありません。 傷んだ家だから管理の足が遠のいた、という逆の向きも考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-53
訪問のときの湿気対策の手順
- 窓を開ける前に、においと湿りを確かめる。かび臭さ、畳や壁の湿り、天井のしみを先に見ます。換気をすると、においは分かりにくくなります。
- 向かい合う窓を開けて風を通す。離れた2か所の窓を開けて、空気の通り道をつくります。雨の日や湿った日は、外の空気も湿っているため、室内が乾きにくいと考えられます。
- 押し入れ・下駄箱・流し台の下の戸を開ける。除湿剤を置いている場合は、たまった水を捨てて交換します。容器がいっぱいのまま置いていても働きません。
- 水の入口を見る。天井のしみ、窓まわりの濡れ、台所・洗面台の下、トイレの床を確かめます。濡れていれば、除湿剤ではなく修繕の対象です。
- 床下の換気口を外から見る。草、落ち葉、置いた物でふさがれていないかを確かめます。
- 帰る前に、押し入れの戸を開けたままにする。窓は閉めて施錠し、閉じた収納の戸だけ開けておくと、次の訪問までに湿気がたまりにくいと考えられます。
同じ場所を同じ角度で撮っておくと、しみやカビが前からあったものか、今回ついたものかを見分ける材料になります。 1回の訪問全体の手順は空き家を自分で管理する。1回の訪問でやることの手順に、 通水の間隔は空き家の通水はどのくらいの間隔で行うかにまとめています。
調査結果のまとめ
- 空き家の湿気は、床下の地面、雨漏り、配管、結露、外の湿った空気から入り、空気が動かない場所にたまると考えられます
- 建築基準法第28条第2項は居室の換気のための開口部を求め、同法第19条第1項は地盤面の高さで防湿を図る定めです。住宅の湿気対策は、窓を開けることと敷地の造りが前提になっています
- 置き型の除湿剤が効くのは、押し入れや下駄箱のように閉じた狭い場所と考えられます。部屋全体、床下、雨漏り、水漏れには足りません
- 管理者がいる空き家で「住宅の通風・換気」をしている世帯は66.9%、「傷み、雨漏りなどのチェック・修繕」は48.3%でした(図表4-65)
- 「構造上の不具合が生じていた」割合は、月に1~数回の管理で17.5%、年に1~数回で24.3%でした(図表4-58)。この数字は除湿剤や換気の効果を示すものではありません
除湿剤は、訪問できない期間に閉じた収納の湿気を補助的に抑えるものです。 湿気対策の本体は、訪問のたびに風を通すことと、水の入口を確かめることにあると考えられます。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-53・4-58・4-61・4-65
建築基準法(昭和25年法律第201号)第19条第1項・第28条第2項
国土交通省住宅局「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」概要[2]
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、管理の内容と頻度は管理者がいる空き家について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。