空き家をなぜ解体しないのか。
解体しない側の4つの理由
解体しない
空き家を解体しないのは、放置しているからではなく、解体しない理由があるからです。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)によると、今後5年間程度のうち空き家として所有しておく意向の世帯が挙げた理由は、「物置として必要」が55.8%、「解体費用をかけたくない」が47.3%、「さら地にしても使い道がない」が34.8%、「取り壊すと固定資産税が高くなる」が28.2%でした。第1位の理由だけで見ても「物置として必要」が30.4%で最も多く、「解体費用をかけたくない」が14.2%、「将来自分や親族が使うかもしれない」が9.6%です。この記事では、理由を税・費用と使い道・物置と思い出・共有と意思決定の4つに分け、それぞれ何が決めているのかを条文と調査で整理しました。持ち続ける選択を否定する立場では書いていません。
調査が示す「所有しておく理由」
| 空き家として所有しておく理由(複数回答) | 理由の区分 | 割合 |
|---|---|---|
| 物置として必要 | 共通 | 55.8% |
| 解体費用をかけたくない | 取り壊さない理由 | 47.3% |
| 住宅の古さ | 賃貸・売却しない理由 | 37.0% |
| さら地にしても使い道がない | 取り壊さない理由 | 34.8% |
| 取り壊すと固定資産税が高くなる | 取り壊さない理由 | 28.2% |
| 好きなときに利用や処分ができなくなる | 賃貸・売却しない理由 | 27.6% |
| 特に困っていない | 共通 | 26.6% |
| 将来自分や親族が使うかもしれない | 共通 | 25.1% |
| 仏壇など他に保管場所がないものがある | 共通 | 21.6% |
| 家財などの処理が困難 | 共通 | 21.6% |
| 他人に貸すことに不安がある | 賃貸・売却しない理由 | 20.7% |
| リフォーム費用をかけたくない | 賃貸・売却しない理由 | 18.2% |
| 労力や手間をかけたくない | 共通 | 17.9% |
| 住宅の質の低さ | 賃貸・売却しない理由 | 17.6% |
| どうすればよいか分からない | 共通 | 13.8% |
| 借り手・買い手の少なさ | 賃貸・売却しない理由 | 11.3% |
| 資産として保有し続けたい | 共通 | 10.7% |
| 希望する価格で売れそうにない | 賃貸・売却しない理由 | 7.5% |
| 再建築不可(道路付けの悪さなど) | 共通 | 6.9% |
| 所有者が複数で合意が困難 | 共通 | 2.2% |
| 希望する家賃で貸せそうにない | 賃貸・売却しない理由 | 2.2% |
| 関係者が認知症などで意思決定できない | 共通 | 0.6% |
| その他 | 共通 | 10.3% |
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-130。今後5年間程度のうち空き家として所有しておく意向の世帯について集計。区分は調査の注記による
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」は、令和5年住宅・土地統計調査で現住居以外に空き家を所有していると回答した世帯から抽出した世帯を対象にした調査で、世帯が所有する空き家だけが対象です。 調査は理由を「共通の理由」「賃貸・売却しない理由」「取り壊さない理由」に区分しています。 取り壊さない理由として挙がっているのは、「解体費用をかけたくない」「さら地にしても使い道がない」「取り壊すと固定資産税が高くなる」の3つです。 主要な理由の第1位は「物置として必要」が30.4%、「解体費用をかけたくない」が14.2%、「将来自分や親族が使うかもしれない」が9.6%で、第2位は「解体費用をかけたくない」が13.7%、「取り壊すと固定資産税が高くなる」と「さら地にしても使い道がない」がともに10.4%でした(図表4-132)。 都市圏別では、「物置として必要」が大都市圏で約60%、大都市圏以外で約54%、「解体費用をかけたくない」がそれぞれ約39%と約51%で、大都市圏では「好きなときに利用や処分ができなくなる」が約33%、大都市圏以外では「住宅の古さ」が約41%と続いています(図表4-131)。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」第1章「調査の概要」、図表4-131・4-132
理由1:取り壊すと固定資産税の特例が外れる
「取り壊すと固定資産税が高くなる」を理由に挙げた世帯は28.2%で、第2位の理由としては10.4%です(図表4-130・4-132)。 根拠になっている条文は、地方税法第349条の3の2です。 専ら人の居住の用に供する家屋の敷地(住宅用地)に対する固定資産税の課税標準は、価格の3分の1の額とされ(同条第1項)、面積が200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)は6分の1の額とされています(同条第2項)。
地方税法第349条の3の2第2項
住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条、前条第十一項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項(第2項は冒頭部分)
家屋を取り壊すと、その土地は住宅用地に当たらなくなり、この特例の対象から外れます。 一方で、取り壊した家屋の分の固定資産税はかからなくなります。 土地の課税標準額は市区町村が算定するため、取り壊した後に増える額は条文の率だけでは決まりません。 家屋が残っていても、市町村長から勧告を受けた管理不全空家等と特定空家等の敷地は、地方税法第349条の3の2第1項により住宅用地から除かれます。 取り壊さなければ特例が続く、という関係は、適切に管理されている間に限られます。 特例が外れる2つの場合と、増える額の確かめ方は更地にすると固定資産税はいくら上がるのかと固定資産税が6倍になるのはいつからかにまとめています。
出典:地方税法第349条の3の2第1項・第2項
なお、勧告を受けた場合に固定資産税等の軽減対象から除外される措置を「知らない」世帯は、特定空家等について53.7%、管理不全空家等について55.1%でした(図表4-133)。 「取り壊すと固定資産税が高くなる」ことは知られていても、「取り壊さなくても外れる場合がある」ことは半数以上に知られていません。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-133
理由2:解体費用と、さら地の使い道
「解体費用をかけたくない」は47.3%で、取り壊さない理由の中では最も多く、第1位の理由としても14.2%、第2位としても13.7%です(図表4-130・4-132)。 取り壊さない理由の2つ目に当たる「さら地にしても使い道がない」は34.8%でした。 費用をかけて取り壊しても、その土地を使う予定がない、という2つが組になっています。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-130・4-132
実際に取り壊す意向の世帯は、除却費用を「貯蓄から」用意する世帯が56.0%、「未定」が38.3%、「補助金を利用して」が24.1%、「融資を受けて」が3.5%でした(図表4-126)。 除却後の土地は「売却する」と「そのままにしておく」がともに31.9%、「所有者が利用する(畑や菜園など)」が21.3%、「賃貸する」が2.1%です(図表4-127)。 取り壊す世帯の3分の1は土地をそのままにしておく意向で、「さら地にしても使い道がない」は、取り壊す側にも共通する状況だと読めます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-126・4-127
解体費用の額は、建物の構造と延べ床面積、重機が入れるかどうかの立地、残っている家財の量、アスベストなどの有無で決まります。 調査には金額の集計がないため、業者の見積もりで確かめます。 市区町村の補助制度は、対象の家の状態や所得の条件が制度ごとに違います。 探し方は空き家の解体に補助金は出るのか。制度の探し方に、1都3県の制度は1都3県の空き家の補助金にまとめています。
理由3:物置・仏壇・将来の利用
「物置として必要」は55.8%で、どの区分より多く、第1位の理由としても30.4%です(図表4-130・4-132)。 「仏壇など他に保管場所がないものがある」が21.6%、「家財などの処理が困難」が21.6%、「将来自分や親族が使うかもしれない」が25.1%で、家の中にある物と、家そのものを残しておきたい事情が、取り壊さない理由の大きな部分を占めています。 これらは費用や税ではなく、生活と家族の事情で決まる理由です。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-130・4-132
物置として使い続ける場合、家が傷むと中の物も傷みます。 管理面での心配事は「住宅の腐朽・破損の進行」が75.7%で最も多く、「樹木・雑草の繁茂」が58.0%、「地震、台風、豪雪などによる住宅の損壊・倒壊」が56.9%、「不審者の侵入や放火」が51.7%でした(図表4-61)。 残す物を決めてから家財を減らす順番は実家の片付けを、どの順番で進めるかにまとめています。 仏壇や思い出の品は、取り壊すかどうかを決める前に、家の外に移せるかどうかだけ先に考えておくと、残りの判断が軽くなると考えられます。
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-61
理由4:共有と意思決定
「所有者が複数で合意が困難」は2.2%、「関係者が認知症などで意思決定できない」は0.6%と、割合としては小さい理由です(図表4-130)。 一方で、空き家の所有者の数は「2人以上(共有)」が14.0%あります(図表4-31)。 共有の場合、取り壊すには他の共有者の同意が要ります。民法第251条第1項の定めです。
民法第251条第1項
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
出典:民法(明治29年法律第89号)第251条第1項/国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-31・4-130
取り壊すことは共有物の形状の著しい変更に当たると考えられるため、1人の共有者が決めて進めることはできません。 他の共有者を知ることができないとき、またはその所在を知ることができないときは、民法第251条第2項により、裁判所の裁判を経て他の共有者の同意を得て変更を加えることができます。 誰か1人が反対している、連絡が取れない、判断ができない状態にあるときは、理由の割合は小さくても、その家では解体が止まります。 共有で起きることは実家を兄弟の共有名義にすると、あとで何が起きるかに、処分が詰まる原因の外し方は実家が処分できない。詰まる原因と、順に外していく手順にまとめています。
出典:民法第251条第1項・第2項
解体しない場合に押さえること
解体しない選択をした場合に条文が求めているのは、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)第5条の、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努めることです。 管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態になると、市町村長は空家法第13条第1項により必要な措置をとるよう指導でき、改善されず、おそれが大きいと認めるときは、空家法第13条第2項により修繕や立木竹の伐採などの具体的な措置を勧告できます。 この勧告を受けると、理由1で見たとおり固定資産税の住宅用地の特例から外れます。 解体しない理由のうち「取り壊すと固定資産税が高くなる」は、管理を続けることで初めて成り立つ理由です。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条第1項・第2項
指導が来た場合の対応は管理不全空家の指導が来た。どう対応すればよいかに、売れない・貸せない家を持ち続ける場合に最小限やることは売れない・貸せない空き家をどうするか。持ち続ける場合の最小限にまとめています。
調査結果のまとめ
- 所有しておく理由は「物置として必要」55.8%、「解体費用をかけたくない」47.3%、「さら地にしても使い道がない」34.8%、「取り壊すと固定資産税が高くなる」28.2%が上位です(図表4-130)
- 第1位の理由は「物置として必要」30.4%、「解体費用をかけたくない」14.2%、「将来自分や親族が使うかもしれない」9.6%でした(図表4-132)
- 住宅用地の課税標準は価格の3分の1、200平方メートル以下の部分は6分の1で、取り壊すと外れます。勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地も除かれます(地方税法第349条の3の2第1項・第2項)
- 除外措置を「知らない」世帯は特定空家等で53.7%、管理不全空家等で55.1%でした(図表4-133)
- 取り壊す世帯の除却費用は「貯蓄から」56.0%、「補助金を利用して」24.1%で、除却後の土地は「売却する」「そのままにしておく」がともに31.9%です(図表4-126・4-127)
- 共有の空き家は14.0%で、取り壊すには他の共有者の同意が要ります(民法第251条第1項・図表4-31)
解体しない理由の多くは、物を置いている・費用をかけたくない・使い道がない・税の特例を残したいという、それぞれ筋の通った事情です。 持ち続けること自体は条文で否定されていません。 条文が求めているのは適切な管理に努めることで、特例が残るかどうかもそこで決まります。 解体しないと決めたなら、次に決めるのは管理の中身と頻度です。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)第1章、図表4-31・4-61・4-126・4-127・4-130・4-131・4-132・4-133
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項
民法(明治29年法律第89号)第251条第1項・第2項
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条・第13条第1項・第2項
調査の割合は不詳を除いて集計された値で、所有しておく理由は今後5年間程度のうち空き家として所有しておく意向の世帯について、除却費用と除却後の土地は取り壊す意向の世帯について集計されています。条文は e-Gov 法令検索で確認した現行法です。