転勤で空き家になる家。
留守中に必要な手当て
留守中に
戻る時期が読めるなら、留守中にやることは頻度を決めて続けることに絞れます。国土交通省の調査では、管理が月に1回以上の空き家で構造上の不具合が生じていた割合は15〜18%、年に1〜数回では24.3%、数年に1回では33.3%でした。留守にしても、空家等の適切な管理に努める責務は所有者に残ります(空家法第5条)。実際に行われている作業の中身と、1年あたりにかかる費用を、条文と統計にあたって整理しました。
転勤で空き家になる家の位置
調査に出ている数
国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査結果」によると、 人が住まなくなった理由のうち転勤など(一時的不在)は3.7%でした。 最も多いのは死亡で43.9%、次いで別の住宅に転居が39.0%です。
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-43
調査時点の利用状況では、転勤や入院などで一時的に不在中だったため物置として所有していた空き家が1.4%でした。 戻る前提の空き家は、統計の上では少数派です。
出典:同調査 図表4-91
一方、今後5年間程度のうちに所有者や親族が住む意向の世帯では、 住むきっかけとして転勤などから戻るが13.3%挙がっています。
出典:同調査 図表4-128
戻る時期が読めることの意味
転勤の場合、相続で受け取った空き家と違って出口が先に決まっています。 売るか貸すか持ち続けるかを決める作業がなく、残るのは留守中の手当てだけになります。
そのぶん、判断の材料は頻度と費用の2つに絞れます。 以下、何をするのか、どのくらいの頻度でするのか、1年でいくらかかるのかの順に見ます。
留守中に行われている手当ての中身
実際に行われている作業
調査は、管理者がいる空き家について管理の内容を尋ねています。
| 管理の内容 | 割合 |
|---|---|
| 外回りの清掃、草取り、剪定など | 79.5% |
| 戸締まりの確認 | 74.9% |
| 住宅の通風・換気 | 66.9% |
| 郵便物、チラシなどの整理・処分 | 57.0% |
| 住宅内の清掃 | 55.4% |
| 台風、地震などの後の見回り | 49.3% |
| 傷み、雨漏りなどのチェック・修繕 | 48.3% |
| 水回りなどの点検・通水 | 43.3% |
出典:同調査 図表4-65(複数回答)。除排雪が16.6%、その他が6.2%です。
上位3つは屋外の手入れと戸締まりと換気で、いずれも現地に行かなければできないものです。 水回りなどの点検・通水は43.3%で、8項目のうち最も低い位置にあります。 排水トラップの封水が蒸発すると下水の臭いと虫の通り道になる点は、 空き家を1年放置すると、家の中で何が起きるかで整理しています。
誰が手を入れているか
主な管理者は、所有者または所有者と同居している親族が76.8%、 所有者と同居していない親族が13.5%で、合わせると約8割です。 不動産業者、建築会社、管理専門業者などは3.8%、誰も管理していないが3.8%でした。
出典:同調査 図表4-63
空き家の種類別に見ると、貸家用の空き家では業者が管理している割合が13.9%、 売却用の空き家では7.5%です。 人に貸す前提の家ほど、外部に任せる割合が高くなっています。
出典:同調査 図表4-64
頻度の決め方
実際の頻度と、家の状態
管理者がいる空き家の管理の頻度は、月に1〜数回が34.0%で最も多く、 ほぼ毎日が17.7%、週に1〜数回が19.1%、年に1〜数回が27.6%、数年に1回が1.6%でした。 月に1回以上を合わせると約7割です。
出典:同調査 図表4-67
この頻度は、家の状態と対応しています。
| 管理の頻度 | 構造上の不具合が生じていた割合 |
|---|---|
| ほぼ毎日 | 15.3% |
| 週に1〜数回 | 16.3% |
| 月に1〜数回 | 17.5% |
| 年に1〜数回 | 24.3% |
| 数年に1回 | 33.3% |
出典:同調査 図表4-58
月に1回以上の3つの区分は15〜18%の範囲に収まっており、差は大きくありません。 差がつくのは年に1〜数回より下に落ちたときです。 これは相関であって因果ではありません。 頻度を上げれば同じ割合になる、という意味ではない点に注意が要ります。
距離が延びると、頻度が下がる
所有世帯の居住地からの所要時間は、車・電車などで1時間以内が40.8%、 徒歩圏内が35.8%で、合わせて1時間以内が8割弱でした。 1時間超〜3時間以内が13.0%、3時間超が10.4%です。
出典:同調査 図表4-142
所要時間別の管理の頻度は次のとおりです。
| 所要時間 | ほぼ毎日 | 年に1〜数回 |
|---|---|---|
| 徒歩圏内 | 31.6% | 17.4% |
| 車・電車などで1時間以内 | 12.7% | 25.1% |
| 車・電車などで1時間超〜3時間以内 | 3.8% | 44.7% |
| 車・電車などで3時間超 | 6.1% | 53.9% |
出典:同調査 図表4-73
転勤先が遠いほど、この表の下の行に近づきます。 管理をする上での課題でも、遠方に住んでいるので往訪が困難が21.6%、 管理の作業が大変が31.7%、管理費用の負担が大きいが22.5%でした。 頻度は、意志ではなく距離で決まる部分が大きいと考えられます。
出典:同調査 図表4-79(複数回答)
1年あたりにかかる費用
調査に出ている年間の維持管理費用
調査は、年間の維持管理に要する費用の分布を示しています。 この費用には、管理委託料のほか、電話・ガス・水道等を契約している場合の費用、 空き家までの交通費、税金などが含まれます。
| 年間の維持管理に要する費用 | 割合 |
|---|---|
| 費用はかかっていない | 12.1% |
| 1万円未満 | 10.6% |
| 1〜3万円未満 | 14.1% |
| 3〜5万円未満 | 11.0% |
| 5〜10万円未満 | 15.6% |
| 10〜20万円未満 | 16.7% |
| 20〜30万円未満 | 8.5% |
| 30万円以上 | 8.5% |
出典:同調査 図表4-74。不明が2.9%あります。
最も多い区分は10〜20万円未満で16.7%です。 5万円未満を合わせると約5割で、そのうち費用はかかっていないが12.1%です。 年間の費用は、家によって1桁ちがう幅に分かれています。
自分で通う場合と、頼む場合
1年あたりの負担を、項目ごとに並べると次のようになります。 金額は物件と契約によって変わるため、ここでは何がかかるかを示します。
| 項目 | 自分で通う場合 | 管理を頼む場合 |
|---|---|---|
| 交通費 | 往復の実費×年間の回数 | かからない |
| 移動の時間 | 所要時間×2×年間の回数 | かからない |
| 電気・水道の基本料金 | 契約を残せばかかる。止めると通水と換気ができなくなる | |
| 火災保険 | 契約内容による | |
| 固定資産税・都市計画税 | 物件による | |
| 管理の料金 | かからない | 当社は年33,000円(税込)から |
当社の料金は月2,750円(税込)からで、1年分に直すと33,000円(税込)からになります。2026年9月時点。
比べる軸は金額だけではありません。 自分で通う場合は交通費と移動の時間が回数に比例して増え、 頼む場合は回数を増やしても移動の時間は増えません。 赴任先が遠く、年に数回しか戻れない条件では、 調査が示す年に1〜数回の区分(構造上の不具合24.3%)に近づくことになります。
留守でも残る義務
空家法が定める所有者等の責務
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号。以下「空家法」といいます)は、 所有者等の責務を定めています。
空家法第5条
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第5条
同法第2条第1項は「空家等」を、建築物またはこれに附属する工作物であって 居住その他の使用がなされていないことが常態であるものおよびその敷地と定義しています。 転勤中の家がこれに当たるかどうかは、使用の状況によります。 判定は市町村が行うため、物件のある市区町村の空き家の担当窓口で確かめられます。
出典:同法第2条第1項
管理が行われず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められると、 市町村長は管理不全空家等の所有者等に対し、必要な措置をとるよう指導することができます(同法第13条第1項)。 指導をしてもなお状態が改善されないときは、勧告をすることができます(同条第2項)。
出典:同法第13条第1項・第2項
勧告を受けると税の扱いが変わる
勧告は税にもつながります。地方税法第349条の3の2第1項は、 住宅用地の課税標準を価格の3分の1とする一方で、 勧告がされた管理不全空家等および特定空家等の敷地の用に供されている土地を、住宅用地から除いています。 同条第2項は、200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)の課税標準を価格の6分の1としています。
出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項・第2項。税額は概算であり、実際の額は物件のある市区町村にご確認ください。
仕組みの詳細は 「管理不全空家等」に指定されると、固定資産税はいくら上がるのかにまとめています。
建物が壊れて人に損害を与えた場合の責任も残ります。 民法第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、 その工作物の占有者が損害を賠償する責任を負い、 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは所有者が賠償しなければならないと定めています。 留守にしていることが、この条文の適用を外す事情として書かれているわけではありません。
出典:民法(明治29年法律第89号)第717条第1項
期間が読める場合の選択肢
貸す場合に期間を区切る方法
赴任の期間がはっきりしている場合、期間を区切って貸す方法があります。 借地借家法第38条第1項は、期間の定めがある建物の賃貸借について、 公正証書による等書面によって契約をするときに限り、 契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。
さらに同条第3項は、あらかじめ賃借人に対し、 更新がなく期間の満了により終了することを記載した書面を交付して説明しなければならないとし、 同条第5項は説明をしなかったときは更新がないこととする旨の定めを無効とすると定めています。 期間が1年以上のときは、満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知が要ります(同条第6項)。
出典:借地借家法(平成3年法律第90号)第38条第1項・第3項・第5項・第6項
貸している間、賃貸人は使用および収益に必要な修繕をする義務を負います(民法第606条第1項)。 比較の詳細は 海外赴任のあいだ、家をどうするか。空き家管理と賃貸の比較で整理しています。
空けたまま管理する場合に決めること
貸さずに空けておく場合、決めるのは次の3つです。
- 頻度。調査の区分では、月に1回以上と年に1〜数回の間で家の状態に差が出ています
- 誰が行くか。所有者または同居の親族が76.8%、同居していない親族が13.5%、業者が3.8%です
- 電気・水道を止めるかどうか。止めると通水と換気ができなくなります。管理の内容のうち住宅の通風・換気は66.9%、水回りなどの点検・通水は43.3%の世帯が行っています
当社は、月1回の訪問と写真つき報告書で月2,750円(税込)から、 東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の空き家を承っています。
調査結果のまとめ
- 人が住まなくなった理由のうち、転勤など(一時的不在)は3.7%でした(図表4-43)。所有者や親族が住む意向の世帯では、きっかけとして転勤などから戻るが13.3%です(図表4-128)
- 管理の内容は外回りの清掃・草取り・剪定などが79.5%、戸締まりの確認が74.9%、住宅の通風・換気が66.9%でした。水回りなどの点検・通水は43.3%です(図表4-65・複数回答)
- 主な管理者は所有者または同居している親族が76.8%、同居していない親族が13.5%、業者が3.8%、誰も管理していないが3.8%でした(図表4-63)
- 構造上の不具合が生じていた割合は、月に1回以上で15〜18%、年に1〜数回で24.3%、数年に1回で33.3%でした(図表4-58)。相関であって因果ではありません
- 所要時間が車・電車などで3時間超の世帯では、管理の頻度が年に1〜数回が53.9%でした(図表4-73)
- 年間の維持管理費用は10〜20万円未満が16.7%で最多、5万円未満を合わせると約5割です(図表4-74)
- 空家等の所有者等には、適切な管理に努める責務があります(空家法第5条)。管理不全空家等には指導、続いて勧告ができます(同法第13条第1項・第2項)
- 勧告がされた管理不全空家等の敷地は、住宅用地から除かれます(地方税法第349条の3の2第1項)。小規模住宅用地の課税標準は価格の6分の1です(同条第2項)
- 工作物の設置または保存の瑕疵による損害は、占有者、次いで所有者が賠償の責任を負います(民法第717条第1項)
転勤の場合、決めるのは出口ではなく頻度と担い手です。 税額と勧告の判断は物件のある市区町村によるため、個別の扱いは市区町村の窓口にご確認ください。
誰も住まないご実家を、毎月みまもります
貸すか、売るか、持ち続けるか。決めるまでの間も空き家は傷みます。
担当が月1回訪問して状況を確認し、写真つきの報告書でお送りします。月2,750円(税込)から、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で承っています。
お申し込みはネットで完結します。所要3分ほどです。
根拠にした資料
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-43・図表4-58・図表4-63・図表4-64・図表4-65・図表4-67・図表4-73・図表4-74・図表4-79・図表4-91・図表4-128・図表4-142
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条・第5条・第13条
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2
借地借家法(平成3年法律第90号)第38条
民法(明治29年法律第89号)第606条・第717条
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条文は2026年9月20日に e-Gov 法令検索で確認しました。空家等に当たるかどうかの判定と勧告は市町村が行います。固定資産税の額は物件ごとに決まります。本記事は条文と統計の説明であり、個別の事案についての判断ではありません。実際の扱いは、物件のある市区町村の窓口または税理士にご確認ください。