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ホームお役立ちコラム相続登記のお金がない。費用の内訳と、登録免許税がかからない場合
相続・片づけ

相続登記のお金がない。
費用の内訳と、登録免許税がかからない場合

まず知っておきたいのは、土地の価額が100万円以下なら登録免許税がかからないという定めがあることです。租税特別措置法第84条の2の3第2項が、令和9年3月31日までの措置として定めています。それでも用意できないときは、不動産登記法第76条の3の申出で期限だけ受け止めるという手があります。費目ごとに何にいくら必要かは物件と地域で変わるため、この記事では条文で決まっている部分だけを示します。

何にお金がかかるのか

費目は3つに分かれる

相続登記の費用は、性質の違う3つに分かれます。減らせる余地があるのは、このうち一部だけです。

費目何に対して払うか自分で申請する場合
登録免許税登記を受けること自体に課される国税減らない(免税の定めに当たるかどうかで決まる)
書類の取得費用戸籍関係の証明書、住民票、登記事項証明書など減らない(通数によって変わる)
専門家への報酬司法書士に手続きを依頼した場合の報酬かからない

登録免許税の税率は登録免許税法の別表、証明書の手数料は政令や自治体の条例で定められています。金額はこの記事では扱っていません。物件ごとの概算は、法務局または司法書士にご確認ください。

自分で申請すれば専門家への報酬はかかりません。 一方で登録免許税と書類代は、誰が申請しても同じように必要です。 「お金がない」という状況で最初に確かめるべきなのは、 この税がかからない場合に当たっていないか、という点になります。

登録免許税を納めないと申請は却下される

納めないまま申請するという選択肢はありません。 不動産登記法第25条は登記官が申請を却下しなければならない場合を列挙しており、 その第12号に「登録免許税を納付しないとき。」が挙げられています。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第25条第12号

申請を出しても、税が納められていなければ登記は通りません。 払えないなら申請できないという構造になっているため、 次章の免税の定めと、その次の章の期限への対応が実務上の分かれ道になります。

土地の登録免許税がかからない場合

価額が100万円以下の土地

租税特別措置法第84条の2の3第2項は、次のとおり定めています。

租税特別措置法第84条の2の3第2項

個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和九年三月三十一日までの間に、 土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する 表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、 これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、 これらの登記については、登録免許税を課さない。

出典:租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第84条の2の3第2項

読むときの要点は3つです。

  1. 対象は土地です。建物はこの項の対象に入っていません
  2. 基準は売買価格ではなく、登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額です
  3. 期限は令和9年3月31日までと条文に書かれています

価額の判定は市区町村が定める固定資産課税台帳の登録価格を基礎に行われます。 自分の土地がこれに当たるかどうかは、概算であっても個別の判定です。 市区町村の資産税担当または法務局にご確認ください。

登記しないまま相続人が亡くなった場合

同条第1項には、もう1つの免税が置かれています。

租税特別措置法第84条の2の3第1項

個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、 当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、 平成三十年四月一日から令和九年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人と するために受ける登記については、登録免許税を課さない。

出典:租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第84条の2の3第1項

相続が二度続いている場合の定めです。 父から子へ、子から孫へと相続が起きたのに登記が止まっていた、という状況で、 途中の人を登記名義人にするための登記には登録免許税がかからないことになります。 こちらも対象は土地で、期限は令和9年3月31日までです。

それでも用意できないときに、期限だけ止める

相続人である旨の申出

免税に当たらず、費用も用意できないという場合でも、期限は進みます。 不動産登記法第76条の2第1項の申請義務は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内です。 これに間に合わないときの受け皿が、同法第76条の3第1項の申出です。

不動産登記法第76条の3第2項

前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得 (当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を 履行したものとみなす。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の3第2項

申出は登記の申請ではないため、所有権が移ったことを示すものではありません。 お金の問題が解決するわけではなく、期限への対応だけが済むという位置づけです。 申出の手続きや費用は法務省令で定める事項を含むため、法務局にご確認ください。

過料は「正当な理由がないのに」怠ったとき

不動産登記法第164条第1項は、申請をすべき義務がある者が 正当な理由がないのにその申請を怠ったときに10万円以下の過料に処すると定めています。 期限を過ぎたことだけで自動的に科される書き方にはなっていません。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第164条第1項

何が正当な理由にあたるかは条文に列挙されておらず、 費用が用意できないことがこれに当たるかどうかを、この記事で断定することはできません。 事情があるときは、その事情を持って法務局に相談することをおすすめします。

自分で申請すれば減らせる部分

相続による登記は単独で申請できる

不動産登記法第60条は、権利に関する登記を登記権利者と登記義務者が共同で申請するのを原則としています。 相続の場合はこの原則の例外です。同法第63条第2項は次のとおりです。

不動産登記法第63条第2項

相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第63条第2項

相手方の協力を得る必要がないため、取得した人が自分で申請できます。 司法書士に依頼するかどうかは、書類をそろえる手間と報酬を比べて決める話になります。

申請の方法は2つ

同法第18条は申請の方法を定めており、 電子情報処理組織を使用する方法と、 申請情報を記載した書面を提出する方法の2つが挙げられています。

出典:不動産登記法(平成16年法律第123号)第18条

窓口に出向く方法だけではありません。 遠方の実家の登記であっても、方法の面では対応できるようになっています。 どちらを選べるかは、用意できる書類と本人確認の手段によって変わります。

費用を理由に挙げている人はどれくらいか

費用の負担感が大きかったのは6.8%

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査は、登記も名義変更もしていない世帯にその理由を尋ねています。 「費用の負担感が大きかった」を挙げた割合は6.8%、「手続きがわずらわしかった」は10.5%でした。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-39。対象は登記または名義変更を行っていない170千世帯。この設問は令和6年4月1日より前の、令和5年10月1日時点の状況を尋ねたものです。

費用を理由に挙げた世帯は、多数派ではありませんでした。 お金が止めている件数は、思われているほど多くない可能性があります。 ただし調査は義務化の前の状況を尋ねたものであり、 期限と過料が加わったあとの姿を示すものではない点に注意が必要です。

いちばん多い理由は「困らなかった」

同じ設問で最も多かったのは「登記や名義変更しなくても困らなかった」で、56.8%でした。

出典:同調査 図表4-39

お金の問題として語られている状況の多くは、 実際には急いでいないという状態だった可能性があります。 費用が本当の壁になっているのであれば、免税の定めに当たるかどうかを先に確かめる価値があります。 壁が費用でないのであれば、確かめるべきは期限のほうです。

調査結果のまとめ

順番としては、免税に当たるかを確かめる、当たらなければ自分で申請できるかを確かめる、 それでも間に合わなければ申出で期限を受け止めるという3段になります。 税額と免税の可否は物件ごとの判定です。断定的な判断はしていません。 実際の適用は、物件のある市区町村の資産税担当、または法務局・司法書士・税理士にご確認ください。

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根拠にした資料
租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第84条の2の3第1項・第2項
不動産登記法(平成16年法律第123号)第18条・第25条・第60条・第63条・第76条の2・第76条の3・第164条
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-39
条文は2026年9月11日に e-Gov 法令検索で確認しました。登録免許税の税率と証明書の手数料は、登録免許税法の別表や政令・条例で定められており、この記事では金額を扱っていません。税額と免税の可否は物件ごとの判定です。断定的な判断はしていません。実際の適用は、物件のある市区町村の資産税担当、または法務局・司法書士・税理士にご確認ください。