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税金・制度

空き家の3000万円控除はいつまで使えるか。
期限と3年ルール

相続した家を売ったときに譲渡所得から3,000万円を控除する定めには、期限が2つあります。制度そのものは令和9年12月31日まで、相続ごとの期限は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。売る日は先に来るほうで締まります。2025年以降に始まった相続では、先に来るのは制度の期限のほうです。さらに売ったあとも3年のあいだ1億円の判定が続き、超えたときは4月を経過する日までに修正申告が要ります。租税特別措置法第35条の条文にあたって、日付だけを取り出して並べました。

2つの期限

制度そのものの期限

相続した空き家を売ったときの3,000万円の控除は、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条第3項に置かれています。 この項は、対象になる譲渡を平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間にしたものと定めています。 令和9年12月31日は2027年12月31日です。

相続ごとの期限

同じ第3項の括弧書きが、もう1つの期限を定めています。 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにした譲渡に限る、という条件です。 対価の額が1億円を超えるものも、ここで除かれています。

租税特別措置法第35条第3項

平成二十八年四月一日から令和九年十二月三十一日までの間に、次に掲げる譲渡(当該相続の開始があつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にしたものに限るものとし、第三十九条の規定の適用を受けるもの及びその譲渡の対価の額が一億円を超えるものを除く。以下この条において「対象譲渡」という。)をした場合

出典:租税特別措置法第35条第3項(期限に関する部分)

2つの期限は別々に働きます。どちらか一方でも過ぎていれば、第3項は使えません。

相続ごとの期限の数え方

起点と数え方

起点は相続の開始があった日です。遺産分割がまとまった日でも、相続登記をした日でも、家が空き家になった日でもありません。 そこから3年を経過した日を出し、その日が属する年の12月31日が期限になります。

3年を経過する日は相続の開始から3年後の同じころに来るため、期限は多くの場合、相続の開始があった年の3年後の12月31日です。 年の変わり目にあたる相続では、3年を経過する日がどちらの年に属するかで期限が1年動きます。 その場合の日付は、売る前に税務署で確かめられます。

先に来るほうが締切になる

制度の期限と相続ごとの期限のうち、先に来るほうが実際の締切です。 相続の開始があった日ごとに並べると次のようになります。

相続の開始があった日相続ごとの期限制度の期限実際の締切
2023年6月1日2026年12月31日2027年12月31日2026年12月31日
2024年6月1日2027年12月31日2027年12月31日2027年12月31日
2025年6月1日2028年12月31日2027年12月31日2027年12月31日
2026年6月1日2029年12月31日2027年12月31日2027年12月31日

出典:租税特別措置法第35条第3項。令和9年は2027年。

2025年以降に始まった相続では、先に来るのは制度の期限のほうです。 「相続から3年ある」と数えると、実際より長く見積もることになります。 令和9年12月31日より後に制度が続くかどうかは、その時点の租税特別措置法の条文で決まります。

期限までに終える対象

3つの売り方

租税特別措置法第35条第3項は、対象になる譲渡を第1号から第3号までの3つに分けています。

号売り方期限までに済ませる対象
第1号家屋と敷地等をあわせて売る譲渡の時に耐震基準に適合していること
第2号家屋を取り壊してから敷地等を売る取壊し・除却または滅失と、敷地等の譲渡
第3号そのまま売る敷地等または家屋の譲渡

出典:租税特別措置法第35条第3項第1号から第3号まで

第2号を選ぶ場合、取壊しそのものを期限の内側に入れることになります。 解体の見積りと工事の日程を、売買の日程より前に置く必要があります。

翌年2月15日という2つ目の日付

第3号は、耐震基準に適合しないまま、また取り壊さないまま売る形です。 この場合は期限がもう1つ加わります。

租税特別措置法第35条第3項

第三号に掲げる譲渡をした場合にあつては、当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年二月十五日までの間に、当該被相続人居住用家屋が耐震基準(地震に対する安全性に係る規定又は基準として政令で定めるものをいう。第一号ロにおいて同じ。)に適合することとなつた場合又は当該被相続人居住用家屋の全部の取壊し若しくは除却がされ、若しくはその全部が滅失をした場合に限る。)

出典:租税特別措置法第35条第3項(第3号に係る括弧書き)

売った年の翌年2月15日までに、耐震基準に適合するか、家屋が取り壊されるか除却されるか滅失していることが条件です。 買い手が工事を行う前提になるため、売買契約の中で誰がいつまでに何をするかを決めておくことになります。 耐震基準の中身は政令で定められています。

売ったあとに続く3年

対象譲渡の前の譲渡

1億円の判定は、自分が売った分だけでは終わりません。 租税特別措置法第35条第6項は、家屋または敷地等を相続で取得した相続人が、相続の時から対象譲渡をした日の属する年の12月31日までに、 同じ家屋や敷地と一体だった資産を売っていた場合、その対価を合算すると定めています。 合計が1億円を超えれば第3項は適用されません。この譲渡を適用前譲渡といいます。

出典:租税特別措置法第35条第6項

対象譲渡の後の譲渡

租税特別措置法第35条第7項は、その逆側を定めています。対象譲渡をした年の翌年1月1日から、 対象譲渡をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡が対象です。

租税特別措置法第35条第7項

第三項の規定は、居住用家屋取得相続人が、同項の規定の適用を受ける者の対象譲渡をした日の属する年の翌年一月一日から当該対象譲渡をした日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間に、対象譲渡資産一体家屋等の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含み、収用交換等による譲渡を除く。以下この条において「適用後譲渡」という。)をした場合において、当該適用後譲渡に係る対価の額と当該対象譲渡に係る対価の額(適用前譲渡がある場合には、前項の合計額)との合計額が一億円を超えることとなつたときは、適用しない。

出典:租税特別措置法第35条第7項

控除を受けた側が何もしなくても、ほかの相続人が売れば判定が動きます。 租税特別措置法第35条第8項は、第3項の適用を受けようとする者が、ほかの相続人に対象譲渡をした旨と日などを通知し、 通知を受けた側も自分の譲渡を通知するという手順を定めています。

1億円を超えたときの修正申告

合計が1億円を超えたときにすることは、租税特別措置法第35条第9項に書かれています。

租税特別措置法第35条第9項

対象譲渡につき第三項の規定の適用を受けている者は、第七項の規定に該当することとなつた場合には、居住用家屋取得相続人がその該当することとなつた適用後譲渡をした日から四月を経過する日までに当該対象譲渡をした日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し、かつ、当該期限内に当該申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない。

出典:租税特別措置法第35条第9項

期限は適用後譲渡をした日から4月を経過する日までで、同じ期限内に税額の納付も求められています。 第10項は、修正申告書の提出がないときに税務署長が更正を行うと定めています。 売って申告を終えた年から、3年あとまでは数字が動きうるという構造です。

起点の違う3年

住まなくなった日から3年

「3年」という言葉は、同じ第35条の中で別の起点にも使われています。 租税特別措置法第35条第2項第2号は、自分が住んでいた家を売る場合の期限を定めた規定です。

租税特別措置法第35条第2項

災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡又は居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡若しくは居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものとともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合

出典:租税特別措置法第35条第2項第2号

起点は居住の用に供されなくなった日で、相続の開始があった日ではありません。 相続した空き家に使うのは第3項のほうです。検索で出てくる「3年ルール」には、この第2項第2号の説明が混ざっていることがあります。

相続税の申告期限の翌日以後3年

もう1つ、租税特別措置法第39条第1項の3年があります。 相続税額がある人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに相続財産を売った場合に、 取得費に相続税額のうち一定の金額を加算する定めです。起点も終点も第35条第3項とは別に置かれています。

出典:租税特別措置法第39条第1項

租税特別措置法第35条第3項は、この第39条の適用を受けるものを対象譲渡から除いています。 2つを重ねて使うことはできません。どちらが有利かは、譲渡所得の金額と相続税額で変わります。

定め起点終点
第35条第3項相続の開始があった日3年を経過する日の属する年の12月31日
第35条第2項第2号居住の用に供されなくなった日3年を経過する日の属する年の12月31日
第35条第7項対象譲渡をした年の翌年1月1日対象譲渡の日以後3年を経過する日の属する年の12月31日
第39条第1項相続の開始があった日の翌日相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日

出典:租税特別措置法第35条第2項第2号・第3項・第7項、同法第39条第1項

期限より先に詰まるところ

売却の意向と募集状況

国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)は、 今後5年間程度のうちに賃貸または売却する意向の世帯に、買い手・借り手の募集状況を聞いています。 「まだ何もしていない」が48.4%で最も多く、「募集中」が32.4%、「募集の準備中」が15.2%でした。

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-122

売る意向があっても、半数近くはまだ動き出していない状態です。期限のほうは意向とは無関係に進みます。

賃貸・売却の課題

同じ調査で、賃貸・売却する上での課題を聞いた結果は、「住宅の傷み」が43.3%、「借り手・買い手の少なさ」が40.3%、 「家財などの処理」が37.4%の順でした。

出典:同調査 図表4-123

上位の3つは、いずれも日数のかかる作業です。家財の搬出、耐震の工事、取壊しは、買い手が決まってから始めても間に合わないことがあります。 期限から逆算すると、着手の時期は締切の年よりも前に置くことになります。 取り壊してから売る場合の土地の税の変化は、 更地にすると固定資産税はいくら上がるのかで確かめられます。

調査結果のまとめ

本記事は租税特別措置法第35条と第39条が定める期限を整理したもので、個別の判定ではありません。 条文が定めているのは日付の数え方であり、当てはまるかどうかは家と相続の中身で決まります。

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根拠にした資料
租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条・第39条
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-122・図表4-123
条文は2026年9月29日に e-Gov 法令検索で確認しました。政令に委ねられている耐震基準の中身と、年の変わり目にあたる相続の期限は、税務署で確かめられます。