更地にすると固定資産税はいくら上がるのか。
取り壊す前に確かめる数字
取り壊す前に
家屋を取り壊すと、動くものは2つです。土地は住宅用地に当たらなくなり、地方税法第349条の3の2が定める課税標準の特例(200平方メートル以下の部分は価格の6分の1、それを超える部分は3分の1)が外れます。一方で、家屋の分の固定資産税はかからなくなります。よく言われる「6倍」は、6分の1の特例が外れることを倍率で言い表したもので、実際に払う額が6倍になるとは限りません。取り壊した後の土地の課税標準額は市区町村が算定するため、増える額は条文の率だけでは決まりません。条文で決まっていることと、取り壊す前に確かめる数字を整理しました。
取り壊すと動く2つのもの
土地は住宅用地でなくなる
住宅用地の特例は、家屋の敷地であることが前提です。
地方税法第349条の3の2第1項
専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの
出典:地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2第1項(冒頭部分)
この土地を「住宅用地」といい、課税標準は価格の3分の1です。 同条第2項は、住宅用地のうち200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)を価格の6分の1としています。 家屋を取り壊すと、土地は家屋の敷地でなくなり、この2つの特例から外れます。
出典:地方税法第349条の3の2第1項・第2項
家屋の分はかからなくなる
固定資産税は、土地と家屋のそれぞれにかかります。 課税標準は、土地課税台帳等または家屋課税台帳等に登録された価格を基礎にしています(地方税法第349条)。 家屋が無くなれば、家屋の分の固定資産税は課されなくなります。 取り壊しで動くのは、土地が上がる方向と、家屋が消える方向の2つです。
出典:地方税法第349条
土地の特例の率
200平方メートルで率が変わる
外れる特例の率は、土地の広さによって変わります。 地方税法第349条の3の2第2項第1号は、面積が200平方メートル以下の住宅用地をその全部について小規模住宅用地とし、 第2号は、200平方メートルを超える住宅用地について、200平方メートルに住居の数を乗じて得た面積に相当する部分を小規模住宅用地としています。
| 土地の部分 | 家屋が建っているときの特例 | 取り壊した後 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地の部分 | 価格の6分の1 | 特例なし |
| それを超える部分 | 価格の3分の1 | 特例なし |
出典:地方税法第349条の3の2第1項・第2項第1号・第2号
「6倍」という言い方
6分の1の特例が外れることを倍率で言い表すと6倍、3分の1なら3倍です。 「更地にすると6倍」と言われるのは、この率の比のことです。 ただし、特例が外れたあとの土地の課税標準額は、市区町村が算定して課税明細書に記載するもので、 条文の率を単純に当てはめた額どおりにならないことがあります。 200平方メートルを超える土地では、超える部分がもともと3分の1の特例だったため、土地全体の率の比はさらに小さくなります。
取り壊した後の土地の課税標準額の見込みは、物件のある市区町村の資産税の担当窓口で確かめられます。 増える額を出すには、この見込みの数字が欠かせません。
家屋の分と差し引き
差し引きの考え方
取り壊したときに増える額は、次の差し引きで決まります。
- 土地の分の増加。取り壊した後の土地の課税標準額と、いまの土地の課税標準額との差に、税率を乗じた額
- 家屋の分の減少。いま家屋にかかっている固定資産税の額
- 差し引き。1から2を差し引いた額が、年あたりの増分です
標準税率は100分の1.4で、市町村の条例で異なる税率が定められることがあります(地方税法第350条第1項)。 家屋の分が大きい家ほど、取り壊したときの差し引きは小さくなります。 土地の率だけを見て判断すると、家屋の分が消えることを見落とします。
出典:地方税法第350条第1項
家屋の分がもともと小さい場合
古い家屋では、家屋の分の税額がもともと小さいことがあります。
地方税法第351条
市町村は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が土地にあつては三十万円、家屋にあつては二十万円、償却資産にあつては百五十万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない。
出典:地方税法第351条。ただし書は省略しています。財政上その他特別の必要がある場合は、条例の定めにより課することができるとされています。
同一の市町村内で同じ人が持つ家屋の課税標準となるべき額の合計が20万円に満たない場合、家屋の分は課されません。 この場合、取り壊しても家屋の減少は無く、土地の分の増加がそのまま増える額になります。
都市計画税
住宅用地の特例の率
都市計画税は、都市計画区域のうち市街化区域内に所在する土地および家屋に対し、市町村が課することができる税です(地方税法第702条第1項)。 都市計画税にも住宅用地の特例があり、率は固定資産税と異なります。
地方税法第702条の3第2項
第三百四十九条の三の二第二項の規定又は第三百四十九条の三の三第一項の規定により読み替えて適用される第三百四十九条の三の二第二項の規定の適用を受ける土地に対して課する都市計画税の課税標準は、第七百二条第一項及び前項の規定にかかわらず、当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
出典:地方税法第702条第1項、第702条の3第1項・第2項
住宅用地は価格の3分の2(同条第1項)、小規模住宅用地は価格の3分の1です。 取り壊すと、この特例も外れます。
税率の上限
都市計画税の税率は、地方税法第702条の4が100分の0.3を超えることができないと定めています。 実際の税率は市町村の条例で定められます。 市街化区域の外にある土地では、都市計画税が課されていないことがあり、その場合は固定資産税の分だけを見ることになります。
出典:地方税法第702条第1項・第702条の4
取り壊す前に確かめること
1月1日との前後
固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日です(地方税法第359条)。 都市計画税も同じです(同法第702条の6)。
- 12月31日までに取り壊した場合。翌年1月1日には家屋が無いため、その1月1日を賦課期日とする年度から、土地は住宅用地に当たらず、家屋の分もかかりません
- 1月2日以降に取り壊した場合。その年の1月1日には家屋があるため、その年度は住宅用地の特例と家屋の分がそのまま続き、変わるのは翌年の1月1日を賦課期日とする年度からです
出典:地方税法第359条・第702条の6
建て替えのために取り壊す場合の扱いは、物件のある市区町村の資産税の担当窓口で確かめられます。 年度との関係は固定資産税が6倍になるのはいつからか。賦課期日の考え方にまとめています。
課税明細書と窓口で拾う数字
いまの数字は、毎年届く納税通知書と課税明細書で確かめられます。 地方税法第364条第2項は、納税通知書に記載すべき課税標準額を土地・家屋などの価額とその合計額としています。 地方税法第364条第3項は、市町村が土地と家屋の当該年度の価格などを記載した課税明細書を納税者に交付しなければならないとし、 同条第4項は、第349条の3の2の適用を受ける土地について、価格にその率を乗じて得た金額を記載しなければならないとしています。
出典:地方税法第364条第2項から第4項まで
取り壊す前に拾う数字は次の3つです。
- いまの土地の課税標準額と税額(課税明細書・納税通知書)
- いまの家屋の税額(課税明細書・納税通知書)
- 取り壊した後の土地の課税標準額の見込み(物件のある市区町村の資産税の担当窓口)
3つがそろえば、前の節の差し引きで年あたりの増分が出ます。 解体の見積もりと並べて比べるのは、この数字です。
すでに勧告を受けている土地
すでに勧告を受けている管理不全空家等または特定空家等の敷地は、住宅用地から除かれています(地方税法第349条の3の2第1項の括弧書き)。 この場合、取り壊しても土地の特例が外れるという変化は起きず、家屋の分が減る側だけが動くことになります。 また、住宅用地に当たるのは「専ら人の居住の用に供する家屋」などの敷地であり、傷みが進んだ家屋がこれに当たるかどうかの扱いも、資産税の担当窓口で確かめられます。 勧告の仕組みは「特定空家等」とは何か。当たる4つの状態と、そのあとに起きることにまとめています。
国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査結果」では、 空き家として所有しておく意向の世帯が挙げた理由として、 解体費用をかけたくないが47.3%、取り壊すと固定資産税が高くなるが28.2%でした。
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-130(複数回答)
税の増分も解体費用も、取り壊す前に数字で確かめられます。 相続した家を売る場合は、取り壊してから土地を売る形でも使える譲渡所得の特例があり、 空き家の3000万円特別控除。使える条件を1つずつ確認するで要件を整理しています。
調査結果のまとめ
- 家屋を取り壊すと、土地は住宅用地に当たらなくなり、小規模住宅用地の6分の1、それを超える部分の3分の1の特例が外れます(地方税法第349条の3の2第1項・第2項)
- 「6倍」は6分の1の特例が外れることを率の比で言ったもので、取り壊した後の土地の課税標準額は条文の率を単純に当てはめた額どおりにならないことがあります。見込みは資産税の担当窓口で確かめられます
- 家屋の分の固定資産税はかからなくなります。増える額は、土地の分の増加から家屋の分の減少を差し引いた額です
- 家屋の課税標準となるべき額が20万円に満たない場合、家屋の分はもともと課されません(地方税法第351条)。この場合は土地の分の増加がそのまま増える額になります
- 都市計画税の住宅用地の特例(価格の3分の2、小規模住宅用地は3分の1)も外れます(地方税法第702条の3)。税率は100分の0.3が上限です(同法第702条の4)
- 賦課期日は1月1日です(地方税法第359条)。12月31日までに取り壊すか、1月2日以降に取り壊すかで、変わる年度が1年ずれます
- いまの価格と特例適用後の額は、課税明細書に記載されています(地方税法第364条第3項・第4項)
- 調査では、空き家として所有しておく理由として、取り壊すと固定資産税が高くなるが28.2%でした(図表4-130)
「更地にすると6倍」は、土地の特例の率についての話です。 払う額の増分は、取り壊した後の土地の課税標準額と、いまの家屋の税額で決まります。 どちらも取り壊す前に確かめられる数字です。
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根拠にした資料
地方税法(昭和25年法律第226号)第349条・第349条の3の2・第350条・第351条・第359条・第364条・第702条・第702条の3・第702条の4・第702条の6
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)図表4-130
条文は2026年9月25日に e-Gov 法令検索で確認しました。取り壊した後の土地の課税標準額は市区町村が算定します。見込みは物件のある市区町村の資産税の担当窓口で確かめられます。